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第四一話 シャルロッタ・インテリペリ 一五歳 一一

「……本当に草食系の魔獣しかいないのですね……何だか可哀想で狩るのは少し気が引けますわ……」


「キイイッ!」

 目の前で尻尾を振りながら、巨大な鳥型の魔獣であるジャイアントビークを押さえつけているユルをみてため息をつく……このジャイアントビークは体高三メートル近くまで成長する巨大な飛べない鳥型の魔獣で、巨大な嘴と個体ごとに違う色合いの羽毛が特徴になっている。

 普段は木の芽や昆虫などを食しており基本的に人間を見るとさっさと逃げ出すくらい臆病な魔獣の一種のため、低級冒険者の狩猟訓練の練習台に使われる……人間よりも速度が速いので一旦逃げ出すともうどうしようもないらしいが。

 割と大人しい性質を活かして繁殖を試みている牧場もあるくらいで、肉は白身で柔らかく揚げたり焼いたりして食べると鶏のような味がしてなかなかに美味だったりもして、領内ではとてもメジャーな食肉として扱われている。

 わたくしもこの魔獣の肉美味しいから好きで……揚げた肉を串に刺してそのまま頬張るのは、はした無いってお父様に言われちゃうかもだけど結構楽しいのよね。

「それ……解体しないといけないので、変な噛み傷つけないでくださいましね?」


「ああ、そうでしたか……では」

 グイッとユルがジャイアントビークの首元を捻ると、その一撃で簡単に魔獣は絶命するが、ユルは軽く口元を拭うような仕草をした後わたくしに向かって尻尾をブンブンと振っている。

 ああ、偉い偉い……こういうのだけ見てると本当に犬なんだよなあ、わたくしが軽くユルの頭を撫で回すと嬉しそうに目を細めるユル……まあ可愛いんだけどねえ……視線を動かして、軽く痙攣しているジャイアントビークを見る。

 ここまでは想定通りなんだけど、解体がなあ……荷物の中から解体用のナイフを取り出そうとするが、ふと足音を殺してこちらに接近してくる気配を探知してわたくしは森の奥へと目を凝らす。

 複数の人間か? それにしては随分……ふとわたくしの鼻にふわりと甘ったるいような不快な匂いが漂ってくるのを感じて、腰に下げている長剣(ロングソード)に手をかける。

 こいつは……わたくしが黙っていると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる六人の男たちが茂みの中からゆっくりと現れる。

「う、へへへ……本当に一人でいやがる。辺境の翡翠姫(アルキオネ)っていやあ絶世の美女って話だろ? 本当じゃねえか……たまらねえぜ」


「お、おいお前俺たちと遊ぼうぜ……もちろん俺たちが楽しむ方だけどな」

 欲望のままに叩きつけられる邪な視線がわたくしの体のラインをじっと追っていることに不快感を覚える。

 が、わたくしの意識はそちらではなく、辺りに振りまかれている甘ったるく安い香水のような匂いに割かれている。

 なんだこいつら……何でこんなに変な匂いをさせているんだ? これじゃあまるで悪魔(デーモン)か何かみたいじゃ……そこまで考えてわたくしはハッとする。

肉欲の悪魔(ラストデーモン)……? なんでわたくしを狙って……」


「あの女は言ったぜ! お前を俺たちの※※※(パォーン)で犯してぐちゃぐちゃにしてやれ、それから連れて帰ってこいってなあ!」


「そそる身体してんじゃねえか、俺たちに恵みを与えてくださいよ、貴族様ぁ」

 笑みを浮かべながら手にはあまり手入れのされていない斧や剣を構えて男たちは、わたくしに向かってジリジリと向かってくる……いやいやマジないわー、何が無いってこんなチンピラ崩れの連中でわたくしを抑えられるって思っている時点で本気でないわー、さらに言えば幻獣ガルムを舐めすぎているし、本当ないわー。

 ユルがどうしましょう? みたいなちょっと可愛い顔をしているのを見て、わたくしは手で彼を制すると男たちにニッコリ笑って微笑んであげることにする。

「……お馬鹿さん達……そこらへんのご令嬢襲うならまだしも、わたくしがその手入れの悪い武器でどうにかなるとお思いの時点で本当に理解できませんわ」


「ああ? なんだテメエ頭おかしいのか?!」

 こいつらは素手で十分……剣を抜く必要すらないわ。

 軽く身を落とすと、わたくしは一瞬で手斧(ハチェット)を持った男との間合いを詰めると全く反応できずに笑みを浮かべたまま突っ立っている男の顔を文字通り()()()()()()

 ドゴン! という音を立てて男の体は背後にあった大きめの木にそのままの勢いで叩きつけられる……まあ、本当に本気で撃ち抜いたら首から上が消滅しちゃうのでそれなりに手加減はしている。

「……辺境の翡翠姫(アルキオネ)を舐めんじゃねえよ」


「え?」

 そのまま横にいた小剣(ショートソード)を持った男に向かって反応すら許さないスピードで回し蹴りを放つ……そしてそのまま別の男に左手の正拳突きを叩き込む……これで二人。

 呆然として味方が吹き飛んでいくのを見て、身構えようとした男二人を左右の拳で吹き飛ばすと、最後に残ったわたくしを※※※(ピー)で犯してやると言った男の前に笑顔のまま立ちはだかる。

 一瞬で無力化されていく仲間を見てから、わたくしを再び見て恐怖よりも意味がわからないという表情で震えながらも武器を構えている。

「さあ、制裁の時間ですわよ? どういたしますか?」


「あ……あ……お前……なんなんだよ……聞いてねえぞ?!」


「お雑魚もお雑魚ですわね……だから簡単に精神支配を受けてしまう。鉄砲玉というやつですわね」

 軽く制服のスカートの裾を持ち上げてからふわりと足を大きく振り上げる……こいつは一番匂いがキツい、おそらくは……だがその前蹴りのように見えるそれを咄嗟の判断でかわした男は、表情を軽く強張らせながらも、一瞬勝ち誇ったように口の端を歪ませる。

 いやいや、これ前蹴りじゃ無いんだよね……わたくしはその高く振り上げた足を思い切り、振り下ろし男の脳天に踵を叩きつけた。

 ズドン! という鈍い音と共に男は顔面から地面に叩きつけられ、悲鳴を上げる間もなく昏倒してしまう……これも手加減しないと地面ごと頭がひしゃげるから相当に気を遣っている方なのだが。

「……無力化完了ですわ」


「え、えげつない……」

 ユルが唖然とした顔でわたくしを見ているが、まあ少しだけ運動できたことでわたくしは満足して機嫌よく鼻歌を歌いながら、気絶した男たちの得物を回収していく。

 作りは悪く無いのに手入れが杜撰なんだな……錆も出ているし、刃こぼれもしている、こんなので傷をつけられたら別の病気になってしまいそうで面倒だ。

 リーダー格っぽかった男の持ち物を確認していくが、特に何か手掛かりになるようなものは持っていないな。

「匂いも消えました……倒されたと分かった段階で魔法による支配を切ったのでしょう、割と手練れですね」


「ノルザルツの眷属に肉欲の悪魔(ラストデーモン)がいたと思いましたが、そいつが絡んでいそうですわね。匂いに覚えがございますわ」

 前世の世界レーヴェンティオラにある小さな王国を統べる国王に、旅の踊り子として近づいた悪魔(デーモン)がいた。

 それは肉欲の悪魔(ラストデーモン)と呼ばれる混沌神ノルザルツの眷属が化けた姿で、不思議な魅了の力によって国王を籠絡し、貴族たちを言葉の力で支配し混乱を巻き起こした。

 わたくしは勇者としてその国の将来を憂う王子に招かれ、踊り子の正体を暴き国王を正気に戻した上で肉欲の悪魔(ラストデーモン)を打ち滅ぼすことになった。

肉欲の悪魔(ラストデーモン)単体がこのような動きをすることはありますでしょうか? 確かに悪魔(デーモン)は悪意を持って行動しますが……」


「契約者を得たのではないかしら……その契約者の意向に沿って動いているとか」

 彼ら……いやあいつらは両性具有者(アンドロギュノス)であるため性別がない存在だし、むしろノルザルツの眷属はかなり倒錯した意識の持ち主が多く、男女お構いなしっていうのが普通だしな。

 ともかくわたくしに悪意を持っている第三者が肉欲の悪魔(ラストデーモン)と契約もしくは支配されていて、その意向に沿ってこういう小細工を弄した、と。

 雑魚をぶつけてわたくしの実力を確認するため……? しまった、ユルにやらせておけばよかったな。

「……我も今その考えに至りました、我が何も言わずに護衛すればよかったですね」




「……強いわねえ……単純な戦闘能力だけなら英雄クラス、さすが幻獣ガルムの契約者だけあるわ」

 オルインピアーダは手に持った水晶を眺めながら内心感心する……彼女が腰掛けるベッドには半裸でシーツだけを被ったままのプリムローズが寝息を立てており、その白い素肌には薄く汗が滲んでいるのが見える。

 この貴族令嬢は非常に上質な魔力を秘めている……媒介として扱っているが、自らの権能(オーソリティ)が底上げされているのを感じて口元が歪む。

 これほどの魔力は簡単には手放せない……彼女との契約により、オルインピアーダは中級眷属に匹敵するほど膨大な魔力を得ており、本来の肉体能力もより強化されているのがわかる。

 この娘の全てを奪い取れれば……ミシミシと肉欲の悪魔(ラストデーモン)の肉体が軋む……今すぐこの美しい令嬢を貫き、泣き叫ぶ彼女を徹底的に犯してしまいたい衝動に駆られ象徴たる部分が膨張する。

 だがすぐに冷静さを取り戻すと、深く息を吐き出し周囲に甘い匂いを撒き散らす……大丈夫、美味しいものはちゃんと最後まで取っておく。


「……ウフフ……次はどんな悪戯で遊びましょうかねえ……ついでだから辺境の翡翠姫(アルキオネ)も白目を剥くくらい私の※※※(バキュン)で犯してしまいたいわ♪」

_(:3 」∠)_ かなり手加減しないと普通の人の頭は汚ねえ花火になるのと、蹴りで肉体を真っ二つくらいにできます(勇者的に


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