投資2枚目 紆余曲折
「メニューオープン」
すると様々な画面が表示される。その中から俺はスキルの欄を選択し表示させる。
スキル ①神の加護(恒常・発動スキル) ②新台入れ替え(オートマチックテラー)
スキルを確認しメニューを閉じ
「あのクソ神…」
転移する際に交渉の結果、神の加護として多くのスキルを得られるようにしたのに「神の加護」として一つにまとめられているからなんの加護があるかの確認ができない。
今更文句をいってもしょうがないのでとりあえずスキルの確認から行う。
「発動スキル! 新台入れ替え」
簡易詠唱を終えると俺の目の前にパチスロ台が現れる。
地面からは少し離れて生成されるようでそのままドスンと音を立てて落ちていく。
生成されたパチスロ台の状態を確認する。大きさは平均的な大きさで重さも約30kgぐらいだと触って感じる。今の状態だと電気につながってないため、もちろん起動していない。
倒れているパチスロを起こしてみる。
…やはりそうだった。あのクソみたいな神は腹いせのつもりか生成される台をよりにもよって俺が死んだときに打っていた台にしていやがった。
つくづく神様というものは人に嫌がらせをするのが好きなようだ。
そんなことを考えながらスキルの確認の実験を続ける。
時間は正確には分からないが一時間ほどたっただろうか。自分のスキルについてはあるていど理解することができた。生成する際には右手のある場所に台が中央に来るように生成される。なお、左手では生成することはできなかった。次に生成できる数だが詠唱するごとに一台ずつしか生成されず同時に3台までしか生成できない。そして生成した台は同じく詠唱によって消すことができる。
スキルの確認ができたところで俺は人がいる場所を目指す。どちらにむかえばいいかわかっていないが。
近くにあった川に沿って移動を続ける。周りには見たこともない植物が生い茂っており、いまさらになって一抹の不安が襲ってくる。もしこのまま魔物に襲われればひとたまりもない。なんせ今の俺はレベルが1なのに加えてスキルも現状使えないものしかない。そうして思考を重ねていると近くの茂みからヒソヒソと会話をする声が聞こえてくる。
俺は即座に身構える。いざとなったら川に飛び込んでながされていくのも…
すると茂みから2匹の緑色の魔物と思わしきものが出てくる。
あれはおそらく転生者のすすめにでてきていたゴブリンだ。
身構える俺に対してゴブリン側は話しかけてくる。
「おいおい、そんなに身構えるなよ」
気さくにゴブリンたちは話しかけてくる。しかし腰には短刀を添えてあり油断はできないと気を引き締める。
「それ以上近づくな 何の用だ」
「そんなに身構えられたら話も出来ねえよ。ほらよ」
2匹のゴブリンは腰に添えていた短刀を外しこちらに投げ渡してくる。
視線を外さないようにして俺は短刀を拾う。
「話を聞こう」
俺は拾った短刀を腰に差す。
「俺たち迷っちまってよ、兄ちゃん道知らねえか?」
「すまないが俺もわからない、というよりも俺も迷っていてこちらも知りたいところだ」
「そうか困ったな…」
ゴブリンたちは2匹でまた会話を始める。どうやら襲ってくる様子はなさそうだ。
ぐうぅ~~と俺の腹がなる。
そういえば俺はこっちに来てから何も食べていない。どころか転生の間にいたころから数えると3か月近く何も食べていない。まああの空間にいたころは腹は減らなかったが。
「なんだ兄ちゃん腹減ってんのか?」
「少し腹がなっただけだ」
「隠す必要なんかねえよ、これやるよ」
そういってゴブリンは腰にある袋から何か果実を投げ渡してくる。
俺はそれを手に取る。これは確かナシガラの実という果実だったはずだ。
俺はゴブリンたちに聞こえないように
「発動スキル 神の加護」
転移する前に交渉して得た能力「神の加護」、あのアホ神が入れ忘れてなければ鑑定のスキルが付随して入っているはずだ。
(鑑定結果 ナシガラの実 毒は検出されませんでした。)
「すまない いただくよ」
「おう」
遠慮なくいただくことにする。食感はモシャっという感じであまりよくはない。味もあまりよくはない。はっきりいうとまずい。
「まずいよなそれ」
果実を渡してくれたゴブリンが話しかけてくる。なるべく顔に出さないようにしていたのだがばれたようだ。
「いや、今は食べられるだけありがたい。」
「そりゃよかった。ところで兄ちゃん名前は?俺はザース、こっちの不細工な方はジョスだ」
俺の目にはどちらも変わらないように感じるがあえては言うまい。
「俺の名前は高崎だ 高崎海」
「海 お前さえよければ一緒に行動しないか?ここら辺は少し物騒なんだ」
確かに一人で行動するより複数人で行動した方が安全だが…問題はこいつらを本当に信用できるかだ。しかし今のところは助けてもらってばかりだ
「すまないが、ここら辺の地理には疎いんだ物騒っていうのは何か出るのか」
「疎い?ここに何しに来たんだ?まぁ詮索しないのが流儀だが」
「すまない理由は言えないんだ」
ジョスは鋭いようだ。これからは少し言葉を選んだ方がよさそうだ。
「物騒っていうのはここら辺はまだ魔物が出るんだ。それにそれを狩りに来た狩人もな」
魔物というなら目の前にいる二人も魔物に見えるのだが…やはり本だけで得られる知識には限界がある。しかし戦闘がほとんど出来ない俺にとっては断るべきではなさそうではあるが…
「わかった。乗ろう」
こちらとしてもメリットはある。ここは乗っておくべきだろう。
しかし万が一には備えておくべきだ。
「話には乗るが念のためこの短刀は預かっておいてもいいか」
「おいおいそんなに警戒すんなよ悲しくなっちゃうぜ。まあ いいがよ」
あまり喋らないジョスに対しザースはノリが軽い。
俺たちは一定の距離を保って川沿いに進んでいく。ゴブリンですら迷う森にいきなり転移させるあの神にはほとほとあきれ果てる。しかし、そのおかげで俺はスキルの確認ができたのだが
俺は歩いているこの間に人魔協定について考え始める。1年まえに人間側の代表と魔族側の王が協議の末制定した協定だ。主な内容としては人間と魔族間での戦闘の禁止。そして2種族間での差別の禁止だ。人魔協定が制定されるまで30年間も争いを続けていた。
互いにこれ以上の資源の浪費は避けたいという背景もあった。など様々な理由から制定されたこの協定だが、やはり30年も続いたのだ2種族間での遺恨はとても深いと思っていたのだがザースはとても親切に俺に接してくれてくれる。
「二人はどうしてこの森にはいったんだ?」
2人の話からこの森が危険な場所だということがわかる。それでもなお立ち入ってくるということはそれなりのうま味があるということだろう。
「俺たちは月花草の採取クエストで来てたんだが少しな…」
「結局月花草も見つけられないし今回は大損だぜ」
クエスト…つまり誰かからの依頼ということだな、もしかしたらギルドの依頼ということもありえるが、しかしギルドは人間種専用のはずなのだが
「クエストっていうことはギルドか何かに所属しているのか?」
転生の間で得た情報とは全然違う現実にまたあの女神に対し怒りが湧いてくる。
「俺たちはレオズルーツっていうギルドに所属してんだ。その界隈じゃちょっとした有名ギルドなんだぜ」
ザースはなんでも答えてくれる。しかしザースが喋るにつれてジョスの眉間に皺がよっていく。
やはりジョスからはいい印象をもたれてはいないようだ。ここは奥の手を使うしかない
「2人には助けてられてばかりだな これはお礼の品だ受け取ってくれ」
そういってジョスに月花草を手渡す。
ジョスは月花草を手に持ったまま固まっている。
「どこで見つけたんだ?というよりも本当にもらってもいいのか?」
「迷っているときにたまたま見つけたんだ ぜひ受け取ってくれ」
「すまない ありがたく受け取るよ」
心なしかジョスの表情が軽くなった気がする。すこしでも懸念事項は減らしておかなければならないからな。
「でも本当にいいのか俺たちもパーティー組めたおかげで助かったんだしお互い様だと思うんだけどな」
「いや本当にいいんだこっちも一人ではどうしようもなかったところだったからな」
「海は太っ腹だな」
そうこうしていると森の出口が見えてきた。
およそ1時間くらいは歩いただろうか
「やっと出られたぜ」
2人のおかげで森を出ることができた。しかしまだやることは山積みだ。
「俺たちはまだ寄る場所があるからここでお別れだな」
「そうだな」
そうして2人は遠くに見える山のほうへと向かっていく。
俺は近くに見える町のほうへと歩を進めた。