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太ももに暗器巻き付ける話

 



 魔族。

 それは人のような見た目をもつが、身体を変化させることで魔物のように姿を変える能力を持つ存在だ。

 遥かいにしえの時代に邪神に生み出され、地上を支配せんと人類を脅かした張本人でもある。

 そして王都での連続誘拐事件を引き起こしたのもまた、魔族であった。

 そんな魔族の男の取り調べが、アークライト王国地下にて行われていた。


「さあ、目的を話すの」


 尋問を行なっているのはヒナだ。

 冷たい表情で、闇魔法の一つ。洗脳魔法を唱えながら、支配下に置いた男に尋ねる。


「は、い……ヒナ様。私の目的は、我が主を復活させること。すなわち暗黒龍ヴァルハルクの復活。王都で蘇らせ、アークライト王国を壊滅させるのが、狙い」


 暗黒龍ヴァルハルク。

 その名は文献で読んだことがあった。過去に魔王と共に暴れた龍の王だ。

 魔王に匹敵する力を持ち、いくつもの都市を破壊したと書かれていたことをヒナは思い出す。

 もしそれが王都に蘇っていたとすれば、今頃王都は火の海だろう。

 やべー状況だったの……と内心冷や汗をかきつつ、ヒナは引き続き男に発言させる。


「復活の儀式のために、七人の女を捕らえ、六度儀式に挑んだが、全て失敗した。素材が持つ、魔力量が、足りなかった」

「……その女の子たちはどうしたの?」

「魔力が、枯れたことで、死んだ。邪魔なので、消し炭に」


 洗脳魔法はちゃんと効いているらしい。男の言葉は途切れ途切れだが、確かに情報を吐いていた。

 男の供述によると、誘拐された修道女達は儀式による魔力枯渇で殺されている。つまり生存者は黒髪の少女とユクモだけだ。

 そして蘇らせようとしていた対象も分かった。気分が悪くなる話だったが、ヒナは引き続き尋問を続ける。

 

「暗黒龍が主とはどういうことなの?」

「人間は、魔族と一括りに呼ぶが、魔族にも種類がある。我らは竜の血を引く、竜の民。その主こそ、竜王たるヴァルハルク様だ」

「……何故今まで復活させていなかったのに、最近になって蘇らせようとしたの?」

「……それ、は。復活方法を、知ったのが、最近だから。人間が、我らに方法をーーーー」


 そこまで言った瞬間、男の口が止まった。

 男の口から飛び出した信じがたい言葉に流石のヒナも固まる。

 人間が魔族に復活方法を教えた? 仮にそれが事実だとすればとんでもないことだ。


「おい、続きを話すの!」


 上半身だけの男を揺さぶって声を掛けるが男は反応しない。

 直後、男の身体から急に魔力が膨らむのをヒナは感じた。


「!」


 咄嗟に土魔法で壁を作る。その一秒後のことだった。

 唐突に、男の身体が膨張し、爆発したのだ!

 閃光のような光と、狭い室内で爆音が反射し、思わず耳を押さえてヒナは壁の裏でへたり込む。

 範囲の大きな爆発ではなかったが、それでも土の壁が無ければ死んでいたかもしれない。

 爆風が消え、完全にぐちゃぐちゃになって事切れた男の死体を見てヒナは舌打ちする。


「チッ、やられたの……!」

 

 今回の尋問に当たって、魔力は使えないようにしたはずだった。

 洗脳魔法も掛けたし、トーヤのパラライズ。痺れ魔法の効果は未だに効いている。魔力殺しも嵌めていた。

 思いつく可能性は、一つ。


「元々、体内に爆破術式を組んでいたというの? そして特定キーワードで反応するように設定していた……?」


 いわゆる余計な事を話す前に自害させるための術式だろう。

 イカれているとヒナは思った。体内に術式を仕込むにはそれこそ、一度体内に穴を開けるなりして術式を描いた石とかを体内に埋め込む必要がある。あるいは臓器そのものに描くとか。

 そんな事をするよりも口内にカプセル型の毒でも仕込んどいて、噛み切れば死ねるとかの方がよっぽど楽なはずなのに、それ以上に確実性を取っていたということか。

 どちらにしてもやられた。ヒナは歯噛みする。


「……人間が魔族に情報を伝えたとするなら、国の中枢に裏切り者がいるの。私の知るかぎり、ヴァルハルクの情報は禁書庫の中にしかない。むやみに情報は広げずに王に伝えた方がいい案件か。もしかしたら他国が関わっている可能性もあるし……はー、面倒ごとなの」


 呟いてヒナは尋問を切り上げる。

 尋問対象が死んでしまった以上仕方がなかった。

 まずは王様に、次にトーヤに伝えて動き方を考えなくてはならない。

 どちらにせよ、何かが起こることは確定だ。 

 溜息を吐いてヒナは死体を片付け、まるで何もなかったかのように元通りにすると地下室を後にする。








 異世界に来てから十五日目。

 歴史、魔法、淑女教育など色々な講義が展開されているが、筋トレなどは継続して行なっている。

 内容は主に城の小さな訓練場でトーヤ達と共に汗を流し、ランニングや腹筋、スクワットとトレーニングだ。


「ふぎぎ、ぎ……ぐふっ」


 相変わらず貧弱な体である。

 腹筋十五回で力尽きた。お腹痛い。腹筋がやばい。

 とはいえ前回の誘拐の際も元はといえば背後からの一撃に気付かなかったのが原因である。

 鍛えていれば一撃くらいは耐えられたかもしれないし、気配に気付いていればあんなにあっさり無力化されることは無かったはずだ。

 それに今の俺は、聖女となってしまったことで、もしかしたら魔物に襲われたりとか、あるいは聖女を確保するために誘拐するだとか、この前みたいに強大な魔力を持つ人間を攫う奴だとかに狙われる可能性もある。

 話を聞くかぎり聖女の利用価値は高そうだったし。

 王様は公表しないと言っていたが、淑女教育内容には人との付き合い方や所作なども盛り込まれていることも見るに、いずれは世の中に発表されるかもしれない。

 人の口には門を立てられないとの言葉もある。

 つまるところちゃんと鍛えて、いざという時に自分の身を守れるようにしたいのだ。

 そんなわけでトーヤにお願いし、時間を作ってもらった。

 今日が自分の身を守るための訓練初日である。

 基礎トレーニング終了後にまず初めに、とトーヤが尋ねてきた。


「……そもそも、襲われた時に一番大事なことは何だと思う?」

「えっと、戦う……?」

「違う。むしろ戦うのは一番やってはならないことだ。襲われた時に一番大事なことは逃げること。戦うのは護衛とか騎士とか冒険者の役割であって、お前は守られる側だ。間違っても立ち向かうという選択肢は取ってはならない。今回俺が教えるのは、そうなった時に最低限身を守るための、いわば逃げるための戦闘術だ」


 なるほど。

 そもそも襲われた時は戦う選択肢を取ること自体が間違いなのか。

 逃げることを一番に考える……守られる側だから。

 俺としてはトーヤ達と肩を並べて戦えるようになりたいんだけど、国から求められている役割が違うのかもしれない。

 

「それを前提に考えてくれ。これはあくまで最終手段。お前が結界魔法を覚えればそれで身を守ることも出来るからな。そもそもお前が戦うことになる自体が護衛側からしたら負けみたいなもんだ」


 そう呟いてトーヤは俺に短剣を渡してくる。

 刃渡り十センチほどのミニサイズだ。この世界に来てから刃物を初めて持つので、ちょっと緊張する。

 

「その短剣は常に携帯するようにしろ。もちろん人から見えないようにな。腰に付けるなり、太ももに装着するなり、背中に付けるなり。いざという時に使いやすい場所が良いだろう」

「思ったより小さいけど、これって相手には刺しても効果あるの? 急所じゃない限り、戦闘が続きそうだけど」

「刺すだけなら大したダメージにはならないだろうな。だから猛毒を塗っておけ。そうすれば掠っただけで逃げるだけの時間を稼げる」


 ふんふむ。

 確かに俺なら解毒が使えるから、仮にミスって指先切ったりしても治せば良いので毒を使うリスクは他の人間よりは低そうだ。

 それはそうと修道服着た女の子が太ももに暗器付けてたりするのって良いよね。その女の子が自分なのが憂鬱だけど。

 少し迷ったが、抜きやすさと隠しやすさから考えて左の太ももに短剣を括り付ける。

 

「今回は奇襲の仕方を教える。いわゆる抜刀術だな。敵を引き付けて、間合いに入った瞬間に一撃。いかに殺気を消し、怯えているだけの御令嬢と見せかけるか。それと抜刀動作を素早くするかで命運が変わる。この一撃で入らなければ終わりだと思え。暗殺者は基本的に練度が高い。それも護衛を抜けてお前を直接襲えるのは相当な手練れだ。正面から戦えば絶対に勝てん」

「……この女の子は反撃なんて出来そうにないと思わせて、素早く一撃ってわけだな。殺気を消す……難しそう」


 むむむと悩む。

 攻撃しようと考えてたら、目付きとかでバレそうなものだが。

 そう言うとトーヤは意外そうな顔をした。


「そうでもないだろう。あの誘拐事件の時にお前は一度それをやっている。あの犯人は魔力量の多い人間をお前含めて八人も誘拐した手練れだったが、儀式が始まった時に転がって逃げることで儀式を一度中断させることが出来たんだろう?」

「……そうだけど、それがどうしたの?」

「それと同じことだ。魔法陣の上に対象が居なきゃ発動しない儀式を行うのに、犯人がお前を身動きできないようにしなかったのは、お前の様子が明らかにもう反撃も何もしない怯えた女の子に見えたからだろう」


 ……なるほど。

 確かにあの誘拐事件の時は、本当に心が折れていたし、儀式が始まる時点では反撃する気も起きなかったからなぁ。

 本当に心が折れていたから犯人は俺を完全に拘束しなかったのだろう。

 あれを演技で出せれば、騙せるわけだ。

 早速、あの時のことを思い出してみる。縛られていて、お腹を貫かれて、焼かれて、何もできずに、殺されかけて。

 すると効果はてきめんだった。

 

「あ、れ……?」


 身体が震え出す。息が荒くなり、恐怖が蘇った。

 トラウマが治っていないのだから当たり前の話だが、表情がこわばって、急に心細くなる。

 その様子を見たトーヤが呟いた。


「ユクモ、それは演技か?」

「……いや、そのつもり……なんだ、けど。トラウマ、治ってなくて」

「本当に恐怖しているのか。一応伝えておくが、その怯えた表情なら、どう見ても反撃するようには見えん。その、大丈夫か?」

「……ちょっと待ってね、こころ、おちつける」


 呟いてすーはーと息を吸って吐く。

 落ち着け、ただ思い出しただけじゃないか。むしろこのトラウマはいざという時に役立つかもしれない。

 どう見ても怯えてなにも出来ない女の子にしか見えないと、この国最強らしいトーヤにすら言わしめるってことは、相手だって騙せる可能性が高い。

 だから、落ち着こう。なんで涙がじんわり出てくるんだ。

 くそっ、思い出しただけでこれか。自分が情けない。これじゃあ本当に恐怖しているだけだ。

 演技は完璧なんだから、あとは反撃さえ出来れば良い。

 心を落ち着かせるんだ。大丈夫、怖くない。ここは安全なんだから。

 今はとにかく反撃、反撃だけを考えるんだ。

 そう思って、俺は短剣を抜くためにスカートを捲る。

 スカートが持ち上がったことで、チラリと覗く太もも。

 その太ももに付けた短剣を抜き、突き出す。

 

「どう、かな?」

「……演技は百点だが、反撃は七点」


 思った以上に辛辣だった。

 トーヤが講評を始める。


「シンプルに抜刀速度が遅すぎる。太ももに付けているとスカートを捲る必要があるから挙動が目立つ分、やはり攻撃速度が求められるな。服にスリットを入れて取り出しやすくするのも手だが、修道服着た女の子が露出度を上げるのも変な話だ。そもそも俺が暗殺者ならスリットのある服を着ている時点で暗器を疑うから、普通の服の方が騙しやすかろう」

「……なるほどなあ」


 講評を聞いている間に、心も落ち着いてきた。

 トーヤの話の内容は自分の中で咀嚼する。

 純粋にもっと攻撃に慣れろということだろう。取り出して、貫くまでの速度がやはりモノを言うのだ。

 ……ところで今思ったけど、スカートを捲り上げるって俺、すごいことやってない?

 今更ながらちょっと恥ずかしくなってきた。だって、スカートをめくるって自分からパンツ見せつけてるみたいじゃん。

 そもそも太ももに短剣付けてる女の子ってめっちゃエロくね?

 何となく気になってトーヤに尋ねる。


「……ちなみに見た目はどーだった? 自分の姿だから分かりづらいけど、太ももに短剣ってやっぱエロい?」

「……訓練中に何を考えてるんだお前は」


 トーヤは呆れた顔をした。

 なにおう、結構重要なんだぞ。そもそもトーヤは一年間も三人娘と暮らしてたわけで、それであんまり進展が見られない以上、ホモ説すら俺の中で浮かびつつある。

 こいつそもそも女の子に興味あるのか? そう思っての質問だが、トーヤは阿呆を見るような目で見てくる。


「綺麗だとは思うが、戦闘中にそんなことは考えないな。一瞬が命取りな世界だ。女の暗殺者ではそれを武器にしている者も居るし、罠にかかってやる必要もあるまい」

「ちなみにさっきの……俺のパンツ、見えた?」

「白、リボンが付いているやつ」


 トーヤの即答に羞恥で顔が赤くなる。

 見てんじゃねえか! 何が戦闘中にそんなことは考えないな、だよ! 思いっきり罠にかかってるよ! 色だけならともかくパンツのデザインまで言及してる時点で語るに落ちてるわっ!

 というか流石のトーヤさんも女の子には興味があるんだな。

 ジトーっとした目で見つめる。

 

「……むっつり」

「阿呆。お前、俺の記憶力を忘れてるだろう。忘れたくても一度見たものは忘れんさ」

「知ってるけど、そのセリフはパンツ見た時に使って欲しくなかったな! ……あの、こういう時ってふつー見てないって言うもんじゃない? あと何でパンツのデザインまで言及したの? むっつりなの?」

「……お前から聞いてきたから正直に答えただけだろうに。デザインまで正確に伝えたのは、その方が見えたことの信憑性が高いからだ」

「お前、頭おかしいよ……!」


 どうなってるんだよ。

 表面上の言葉を読み取る国語力しかないのかよ。絶対分かってて言ってるだろこいつ。思春期かよ。

 あと何でそんなに当たり前の顔してるんだ? 人の心分からんのか?

 結局、こいつは女の子に興味あるのか無いのか分からなくなってきた。

 いや、これは難攻不落だわ。三人娘に同情する。

 いそいそと短剣をスカートの中に戻しつつ俺は向き直る。


「……さっきの件は置いといて。抜刀動作を速くするにはどうすれば良いの?」

「そうだな……俺が以前戦った戦闘メイドが居るんだが、そいつは片手でスカートを捲って、もう片方の手で投げナイフを引き抜くと同時に投げつけてきたな。俺がそれを防いでいる間に、短剣を装備していた」


 これを短剣に置き換えるなら、引き抜くと同時に貫く、か。

 ミスったら手を切りそうだ。

 練習あるのみという事なのだろう。

 そういうわけで抜刀訓練を行い、一日が終わった。







 異世界に来てから十六日目。

 今日は孤児院に行くことになった。

 本当ならトーヤと二人で向かう予定だったが、急遽ルカも参加してくれるらしい。


「ほら、ユクモ。手を繋ぐわよ」

「はーい」


 今度は迷子にならないよう、ルカと手を繋ぐ。

 女の子とまともに手を握るとか初めてかもしれない。ちょっとドキドキしながら手を握る。

 その間、トーヤは何やら周囲を見回していたが、何をやっていたのだろう?

 まぁ分からないので置いておこう。

 外に出るということで、前回が前回だっただけにやや緊張があったが、今回は何事もなく街を歩いた。

 そして孤児院に到着したのだが……。


「これは、教会?」

「あぁ、孤児院は基本的にアーク教が運営しているからな。税金や寄付で運営されているんだ」

 

 なるほど、だから建物が教会なのか。

 納得した。そのまま三人で建物の中に入っていくとシスターさんがいる。


「あら、勇者様、ルカ様。お待ちしておりました。本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ急な申し出を受けていただき感謝する。ユクモ、彼女はこの孤児院をまとめているマリアさんだ」


 彼女と視線が示す先に立っていたのは茶色い髪のシスターさんだ。

 柔和な笑みを浮かべていて、美人な人だった。

 やや歳上といった印象で、二十代後半くらい。大人しそうな、人の良さそうな顔で、目元に小さなほくろがある。彼女を見ていると何故だか未亡人というワードが思い浮かんだ。

 俺は習った通りの所作で頭を下げる。


「私はユクモです。今日はよろしくお願いします、マリアさん」

「ご丁寧にありがとうございます。私はマリアです。ユクモさん、今日は子供達をよろしくお願いしますね」


 そう言ってマリアさんはニコニコと笑顔を向けてくる。

 大人なオーラだ。だが、それ以上に俺は気になることがあった。

 マリアさんは美人である。

 もしや? いや、流石に王様に加えて追加人員は無いだろう。歳上だし。

 そう思っているとマリアはトーヤの方を向く。


「ところで勇者様。以前のお話を考えて頂けましたか?」

「……魔王を倒したら孤児院を一緒に運営しようって件か。すまないが何度も言うように俺にその気はない」

「そんな、もう一度考え直してはいただけませんか? 子供達も懐いているし、貴方が居てくれたら、私も……」


 そう言って僅かに頬を赤らめる姿を見て俺は確信する。

 うわー! 追加人員だ! また増えたぞ!

 トーヤさんがまたやりやがった! そもそもあいつは何やったんだ? 王様もそうだけど何やってこんなにベタ惚れされてるんだ!?

 やはり近いうちにトーヤの過去編を知らなくてはならない。どっかのタイミングで突っ込まなくては。

 くそう、なんだってこいつばっかモテるんだ。俺も一人で良いからモテたかった!

 思わず歯噛みするとルカがつかつかと前に出る。


「マリアさん。何度も食い下がるのはやめてくれない? トーヤはその気がないって言ってるじゃない。それに子供をダシにするのは反則よ」

「……ルカさん。貴女はーーーー」

「アンタの気持ちも分かるけど、本音で勝負しなさい。ヒナですらそうしてるのよ。まぁ、私も譲ってやる気はないけどね」


 うわー! 女同士のバチバチだ!

 多分、内容的に過去に知り合ってるとみたけど、仲はそこまで悪くはないみたいだ。

 絶対に巻き込まれたくない。

 とりあえず空気に徹しようと静かにしていると唐突に背後から声が聞こえた。


「あっ、貴女! 生きてたのね……良かった」

「?」


 誰だろう? 振り返ると修道服を着た黒髪の女の子が立っている。

 彼女には見覚えがあった。

 あの事件の日に、地下室で出会った少女だ。

 彼女は俺に微笑むと、こう言った。


「今日来るって聞いていた子って貴女の事だったのね。良かったら私がここを案内してあげるけど、どう?」

「……えっと」

「お前の好きにしていいぞ」


 丁度この場を離れたいと思っていたところだ。

 彼女と共に行って良いか、と意味を込めてトーヤに目配せすると、彼は頷く。

 問題無いらしい。俺は彼女に向き直る。


「じゃあ、お願いします」

「決まりねっ。じゃあ行きましょう」


 手を掴まれて、俺は少女と共に施設内を歩き出した。





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