三話
俺が馬車に戻るとあの戦闘狂が鬼化オーガと馬車を守るようにして戦っていた。
鬼化オーガは四メートル以上あり、人ほどではないが一定の知能ある魔物だ。
戦況は一方的なのだが。
あの戦闘狂の服は一部破けていてそして肌からも血がかすかに出ている。
運がよいのか鬼化オーガは一人なのだ。
普段ならありえないことなのだがな。ハブられたのか?
そんなことよりも戦闘狂は男子であったことから気にもなず観察ができる。
さてどうしたものか。
戦闘狂が守っている馬車の中には確実に鬼化オーガを倒せる人がいることは事前に知っている。しかし動きそうにない。
仕方ないちょっかいはしますか。
「初級魔法ウインド」
鬼化オーガにあたると俺の方へと向いてくる。ヘイトはこっちに向いたか。
なら次は読んでいる。
「中級魔法サーブシールド」
俺が魔法を発動すると同時に鬼化オーガは俺を棍棒を振って攻撃してくる。まるで刃物のように風を切り裂いてくる。
間に合ったか。
この隙にならあの戦闘狂は鬼化オーガの背後を取ってくれるはず。
「ナイスだぁ、おらぁぁあ!」
戦闘狂は大剣を力いっぱい鬼化オーガにめがけて振る。
しかし鬼化オーガは勘が良いことに戦闘狂のことに一瞬のうちにして俺の方へその巨体を動かす。
俺はさらに後ろに回避する。
そうすると戦闘狂の渾身の一撃は相手の棍棒を地面に落としただけになってしまった。
これでは戦闘狂に隙ができて攻撃されてしまう、しかたないな。
「高級魔法アイスフリーズ」
『魔術氷薔薇』
言っていることと違う攻撃をする。
鬼化オーガの全身は薔薇の形をした氷の中に埋まる。
それから鬼化オーガは動くことはなかった。
魔術を思っていることをバレてはいけない。だから俺は口では魔法を言い、無詠唱で魔術を発動させるようにした。
魔術は別にとても貴重なものではないけれども魔術が使えることがバレたら、ロワール伯爵に迷惑がかかってしまう。魔術は使える人が限られている。まだ条件がわかっていないという謎が多くあるものなのだが使える人はよく重宝されるのが法律で定められており、もし俺がバレてしまったらロワール伯爵が処されてしまうから。
戦闘狂は腰が抜けたのか地べたに座りこんだ。
俺は馬車の方へと向かうことにした。
今回は俺が助けたがもし俺が助けなかったら命が一つなくなることになった。
そしたらあいつが倒してくれるだろうか?
まぁ、もう過ぎたことだ。