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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
拾われたネコ

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8 ネコ、地下鉄に乗る

 歩いて5分、地下鉄の入り口に到着する。地下に向かう階段に一瞬ビクッとしたのが分かったので、抱っこしてやろうかというと複雑な顔をしながら両手をにゅと伸ばした。本当は手なんか借りたくないが、未知への恐怖に負けたという感じなのかなと思い、笑えてきた。可愛いなあ、気づかれないようにフフと笑う。改札口に切符を入れるのも、やらせてみたら面白がったので、猫も子どもも一緒だなぁと思う。ただ、ホームでは抱っこを続けた。案の定、ホーム端の暗闇から電車のコォーッという音が段々に響いて、風圧とともに光の塊が通り過ぎる様はよほど怖かったようで俺の胸に顔を埋めて固まっていた。顔を見ると少し目が潤んでいる。頑張って我慢したように食いしばった口元にまた笑えてきた。

 電車内では、予想外に大人しく座り、行き先の変わる電光掲示板や、降りたり乗ったりする乗客を口をポカンと開けて見入っていた。目的地まで20分、地下鉄内の乗換もあって、人の間を縫って歩くのは気が張ったのだろう。俺も幾分緊張していたが猫に弱気なところを見せてはいけないと必要以上に慣れたフリをした。


「つかえた」

 待ち合わせ場所に着く頃には猫は少しぐったりしていた。握っている手に元気がない。俺は思いついて猫を抱き上げ、肩車して壁際に立つ。

「どうだ?ラクだし、よく見えるだろ」

「すごーい…いっぱいひといる」

  なんだか目線を感じる、通り過ぎる人が皆俺を、というか猫を見上げている。今気づいたが、猫は黒のパーカーに黒のズボンを履いていて、俺の黒メインの服装と被っている。コンビの芸人みたいにみえるのかもしれない。しかも色白で翠色の目をしている猫は、外見だけはすっかり外国の子どもだ。しまったと思ったが、逆に犬神からはよく分かるだろう。

 ひとしきり目前の光景に驚いた後、猫は俺で遊び始めた。目を隠してみたり首をくすぐってみたり、耳を引っ張ったりしてウフフ、アハハとやっていたので、声を掛けられてびくりとした。


「お久しぶりです…!!なんか、すごく注目されながらイチャイチャしてたんで、めちゃ声掛けづらかったですよ」

「犬神さん!こちらこそお久しぶりです。あ、すいません、コイツが例の…。今日どうしてもついて来たいって言って。家に一人で置いとくのも心配だったんで連れて来ちゃいました」

 犬神は大学時代のサークルの後輩で、仕事柄偶然再会したのだが、いかんせん俺が不甲斐ないため数えるほどしか接触がなかった。

 仕事終わりなのか、スーツをまとい、髪をまとめて眼鏡を掛けているので絵に描いたようなオーエル姿が新鮮である。

「ぼく、こんばんは!!私、犬神あいりといいます。よろしくね」

 犬神は大学時代から皆に美人と言われていた。そんな彼女の愛想のいい挨拶に、猫がなんだか不機嫌そうにみえるのは俺の気のせいなんだろうか…?

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