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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
拾われたネコ
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7 さぶろうもおめかしする

「そのまま出掛けたら職質受けたかもね…」

「エッ」

 思いもよらない管理人の言葉に傷つく…。

「こないだ会ったときもちょっと思ったんだよね。どっかで可愛い子どもをかどわかしてきたみたいだなーって。その割には大山田おおやまださんの顔が小綺麗になってたからさ」

 じゃあ、あのファーストフード店で女性に話しかけられたときも、実は疑われてたってことなのかと思うと、今頃になって心臓が煽る。ショックで青褪める俺を放置して、管理人は奥さんを呼んで来た。2人でジロジロと値踏みされた後、奥から、家を出ている息子のだというジャケットとズボンをいくつか持ってきてくれた。

 ニコニコと猫を見つめて来る奥さんに人見知りをしているのか、猫は俺の膝裏に隠れている。奥さんは目線を合わせるためにしゃがみ込んで、優しい声で猫に尋ねた。

「ぼく、おなまえなんていうの?」  

 俺のズボンにしがみつきながら猫は小さく「ねこ」と答える。そりゃそうだが、猫なんて名前、世間体的にどうなのか。ちゃんとした名前を付けなかった俺を叱咤しても遅すぎる。

「ん??もっかい聞いても良いかな?」

 聞き間違えたとしか思わない奥さんはもう一度聞いたが、猫は俺の膝に顔をぐいぐい押し付けてもう話そうとはしなかった。

「あらあら」

 奥さんはそんな猫を微笑ましく見て、俺を見た。あっ名前を聞いてるんだなと思い、渋々言う。

「ねこって、名前なんですよ」

「あら、聞き間違えじゃなかったのね、ごめんなさい、聞き直して拗ねちゃったのかな?外国の名前は難しいわね」

 猫の風貌から勝手に解釈してくれたようで有難い。

「すいません、こんなに人見知りするなんて…」

 今や猫はすっかりしゃがみこんで俺の足にしがみついていた。

「こんなんでお出掛けなんか行けるのか?もっとたくさん人がいるところに行くんだぞ?」

 と覗き込んで言うと

「だいじおぶ」

 と返してくる。

「本当に可愛いわねぇ、おやつ食べにいつでもいらっしゃいね」

 奥さんはそう言って予め用意してくれていたのか、飴やらクッキーやらを詰め合わせた包みをくれた。

「本当にありがとうございます。洋服も、ちゃんと洗って返しますね」

「良いのよ、もう余所に家庭を持ってる息子のだもの。着てみてサイズが違うのは捨てちゃっても構わないからね」

「こんなことで役に立てるならいつでも来いよ。約束の時間、あるんだろう?また何かあったら頼っておいで」

「ええ、じゃあまた。お前も挨拶しろよ」

 猫をきちんと立たせて俺がもう一度夫妻にお礼をいうと、猫も神妙に「ありあとうごあいまいた」とお辞儀をした。大人3人ニヤニヤしてしまう。


 息子のだという黒のジャケットとパンツを身につけると、多少キツめではあるがパリッとして、子どもを誘拐して来たようには見えなかった。これで一安心だ。

 今日は電車にも乗る。猫がどんな反応をするのか楽しみだ。

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