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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
幸せをもたらしたネコ

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7 さぶろうの新しい家

 そんなわけで、俺とネコは新居に引っ越した。元々ネコが初めて子どもの姿になった時にいろいろ処分したので、荷物なぞ、たかが知れている。家の内覧にはネコももちろん連れて行き、お互いの満場一致で一軒家に住むことにした。小さいながらも庭があり、車もあるので、駅近ではないがそこまで問題ではなかった。といっても、駅までも、ものすごく遠いわけじゃない。閑静な住宅街の一画で、1人と1匹で住むには小さ過ぎず大き過ぎない、なかなかの物件だった。

 兄が寄越よこした税理士は最初に見た家が大き過ぎて戸惑っていた俺の様子を見て、希望に沿うような物件に変えてくれたのだった。マンションの方も4LDKという広さで、そちらはそのまま人に貸して家賃収入が入るように、きめ細かく取り計らってくれていた。兄達が専任で雇用している彼はとにかく優秀で、そういうことにうとい俺が気づいたときには全て終わっていたのだった。まるで初めて受けた雑誌のインタビューの時のように。



 縁側サイズのサンルームで、液体のように伸びて寝返りをうつネコを、俺はコーヒーを淹れながら見ていた。幸せそうなネコを見ていると俺も心が暖かくなる。ネコが居なくなってどうしようかと思ったときもあったが、こんな風な日常が手に入るための試練だったのかもしれない。


 キッチンからリビング中に漂う淹れたてのコーヒーの匂いにえつに入っていると、ネコの耳がピクリと動きサンルームから出ていった。オヤと思うそのタイミングで玄関からピンポンと聞こえる。

 レオ君だった。


「やぁ、いらっしゃい」

「お邪魔します!!」

 満面の笑みを讃えたレオ君は、猫が何処にも居ないのを隅々まで確認してガックリと肩を落とした。

「オレ、ぜったい嫌われてるっすよね…」


「…」

 苦笑するしかなかった。

 沈黙の後、気を取り直したようにレオ君は元気に言った。

「とりあえず、こないだ借りてった本とか持って来たんで!ん、とにありがとうございぁっした!」

 良かったら他の本も借りて良いよと言ったので、前の家と新居とで2度ほど家に来てくれている。一度俺ンチにも来てくださいと言われたが、猫が嫌がるので叶わず、今回もレオ君が我が家まで来てくれたのだ。




「ネコチャーン…っっ」

 と最初に抱き上げようとした時は思い切りバリかかれていた。その後もシャーッと威嚇して来て取り付く島もない。かと思うと遠くから目を皿のようにして俺たちを見ているのだ。猫大好きなレオ君は、気にしないでと傷口をさすりながら、ずっと笑顔のままだったが、一度もおさわりを許されないので、流石に可哀想になってくる。




 なんでだ?と聞いたら、ひらがなシートでどうたんきょひと返って来た。

「同担拒否ぃ?!なんの担当だよ?!」

 俺が叫ぶとひょいひょいと前脚で俺を指す。確かにレオ君は俺のファンだと言ったし、ネコが俺のことを好いてくれてるのは分かっている。だがしかし。

「おかしいだろ、レオ君はお前が好きなんだぞ?!」

 ネコはツーンと首を振ったままそれ以上を語らなかった。


 ということがあったので、俺も気を遣わずに、レオ君を仕事部屋に案内した。一軒家に越してから5畳ほどではあるが、俺は専用の部屋を持つようになったのだ。イラスト談義に花を咲かせていると急にレオ君が俺の腕を掴んで引き寄せてきた。耳元に口を寄せてささやく。

『ドア…っドア見て…っ』

 一拍置いて視線を巡らすと、空いているかどうかわからないくらいの細い、ドアの隙間から縦にネコの目がのぞいていた。

『可愛いっすねぇ…』


 いや、可愛いよりは気持ち悪いと言うか、怖いと言うか、ギョッとした俺と違いレオ君は少し頬を染めていた。病気かも知れない…俺はこの一途さがネコに全く理解されていないことに心底同情した。


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