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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
幸せをもたらしたネコ

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3 さぶろう安堵する

 風呂に入れて綺麗にはしたが、毛並みはパサつき、だいぶ痩せてしまっているようだった。再会したときから、以前のような元気さは無く、日中もクッタリとしている。どこで何をどうして来たかも分からなければ、体調も不安ということで、久しぶりに動物病院へ連れて行くことにした。

 ネコは、自分でも思うところがあるのか、嫌がるそぶりも見せず、病院へ連れて行くことについて嫌がりはしなかった。


「えーっ!!大山田さん!!どーしたんですかッ?!」

 受付で叫ばれて注目を浴びた。大声を出してしまった猿渡さんは慌てて口を手で抑え、小声に変えて嬉しそうに語りかけて来た。


「随分とお久しぶりじゃないですか?!大山田さん!!猫ちゃん、また、戻って来たんですか?!」

「うん、またいろいろお世話になると思う」

 俺も思わず笑顔で答え、猫の頭を手のひらで覆うように何度も撫でた。猫との幸せライフが戻ってきたんだと実感し、再び胸が熱くなる。

「また、一緒に出かけたりしま…」と、猿渡さんが何か言いかけたところでニャーンと言いながらネコが俺の頭の上に登った。

「ははっやめろよ、朝は元気なかったのに…」

 そう言いながらも全然俺は嫌がっていない。髪の毛で遊び始めるのをやんわりと引き離す。

「すいません、何か言いかけてましたよね?」

「いいえぇ?お気になさらず?ふふふ、ネコちゃん相変わらずですね」

 何と無く言い方にトゲがあるような気がしたが、後ろに人が並び始めたので、ぺこりと頭を下げて待合室に引っ込んだ。


「大山田ネコさーん。ネコさーん、診察室2番にお願いします」

 やはり周りからの視線が気になる。良い加減慣れたい…。俺はネコを赤ちゃん抱きして診察室に入った。


 前回と同じ初老の獣医が、眼鏡を引き上げながら聴診器をあてている間、ネコはずっとおとなしく、何故か俺の顔ばかりみていた。やはり消化器系に問題があるらしかった。

「あとは…ストレスかな?離れてた間、ずいぶんと寂しかったんでしょうね。スキンシップするとか、いつも通りの毎日が続けばだんだんと元気になりますよ。一応おなかのお薬を出しときますから」


「ありがとうございます」

「ニャニャン」


 可哀想に。俺のところまで来るのに飲まず食わずだったのか、変なもんでも食ってしのいでいたのか。良いもんを食わせたいが、腹に原因があるとなると、そんなに贅沢はさせられないな…等と、いろいろ考えながら、いつもより高級な猫缶を買って帰った。




 帰宅後、ネコがリビングの本棚のところでゴソゴソ何かを探して取り出してると思って自由にさせていたら、最初にひらがなを覚えるときに使ったひらがなシートを引っ張り出してリビングの床においた。

「あっ、ネコお前まさか…!」

 ネコは得意げに、ひらがなの上を前脚で順番に触っていく。なんて頭の良い…!!!

 後を追って同時に読み上げる。


『ゆ、か、り、は、げ、き、た、い、し、た』

「ゆかりって、あの熊谷ゆかりのことか?」

「ニャン」と言って頷く。


「撃退したって、どういうことだ?あの人に何か変なことされなかったか?」

『も、う、し、ん、ぱ、い、な、い』


「何やってきたんだよ…」


『ひ、み、つ』

 ニャーンと可愛らしく泣いて前脚をペロペロと舐める。


「ぬぅ」

 詳細を聞くには何かしらの首輪をつけてやれば、人の姿になって教えてくれるだろう。でも俺は悟ったのだ。猫のままの方が都合の良いことに…。この間みたいな脅迫を受けるのは人間の姿だったからなのだ。猫のままなら何も問題などなかったのだ。

 この程度の意思疎通で十分ではないか。ネコは無事に戻って来たんだし…


 そう。


 あぁ、ネコ、お前ほんとうに戻って来てくれたんだなあ…俺は猫を抱き上げてもふもふした毛並みを、撫でくりまわした。

 

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