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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
囚われたネコ

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8 ネコデパートに行く

 日中は屋敷中を歩き回って、ここで働いている人の行動パターンを把握したり、抜け道がないかそれとなく探したりしていたが、夜はリビングでテレビを見ることにしている。だいたいこの時間に坂本という男がやって来るので、おれが人畜無害な()()()少年だと思い込ませたくて、というのもあった。

 その日もソファで、だらんとなりながらテレビを見ていた。昨日リニューアルされたばかりのデパ地下の食品売り場特集をしていて、ちょっと…いや大分興味をそそる…。

「うァ…っとと」

 ヨダレが垂れそうで、慌てて口を閉じたところに坂本が珍しく龍宮寺を伴って現れた。


「おかえりなさーい!!」

 誰に対してもとりあえず愛想の良い挨拶は欠かさない。

「ただいま」

 当然のようにどかりと隣に腰を下ろして肩を寄せて来る。

「たまには一緒に出掛けるか?何処か行きたいところはあるか?」

 この男と行きたいところなんかあるわけないっての…なんて正直にそのまま言えば怒りを買うだけなので「一彌さんの行きたいとこ」と言うと、デレっと笑い、「じゃあ明日楽しみにしてろよ」と軽く小突かれた。



 翌日、車で出掛けたのは、昨晩テレビで見ていたデパートだった。ドヤ顔でおれを見てくる龍宮寺がしゃくさわるものの、悲しいかな、興奮は隠せない。ごくたまにさぶろうと行っていたデパ地下とは全然規模が違って広い!しかも、いつかは行ってみたいと思っていた、憧れの北海道展なるものまで催事場でやってるじゃん!!!


「なんで最初に言わないの?!下調べして来たかったのに!!もーーーっ」

 とガチの本気でむくれると、昨日のまたデレっとした笑顔でゴメンゴメンと言う。

「詫びに、欲しいものは何でも買ってやる」

「そういうんじゃないの!」


 反論はしたものの、人混みを避けながら幾つもある店を順繰りに見、嗅いだことのないような海鮮系の香ばしい匂いに包まれたりしていたら、怒りなんかあっという間に忘れて夢中になってしまった。

 龍宮寺はレストランに連れて行きたがったけど断り、試食をがっつり食べ、即席フードコートのような場所で有名店のラーメンを食べた。

「一緒に食べれば良いのに」

「いつも独り占めしてるんで、マズいんすよ…」

 並んで順番をとってくれていたのは坂本だったのに、小声でそう答えて海鮮丼を買うために離れていった。手足のように働くって大変だ。ちなみに、海鮮丼にするかラーメンにするか迷いに迷った末、龍宮寺の提案にのって、それは買ってもらって家で食べることにした。



「ねぇアレ見てさぶろ…」

 上着の裾を掴んで振り返ると、それはさぶろうではなく龍宮寺だった。言葉は届かなかったらしく「どれだ?」と、ヤツは優しく笑いかけてきたけど、おれは密かにびっくりした。そして急に寂しくなった。


 さぶろう…

 さぶろうに会いたい…


 目の前に並んでいるフワフワのチーズケーキだって、さぶろうと一緒に食べたい。さぶろうに甘えたい…。自ら(いさ)んで敵地に乗り込んで来たものの、こんなところで、初めて切なくなってしまった。

「もうそろそろ帰るか?」

 おれが少し口元をへの字にしたのを察した龍宮寺のセリフが、殊更ことさらに優しく聞こえた。




 風呂から出て来ると、龍宮寺がおれを待っていた。

「今日は私と一緒に寝てくれないか?」

 1日慣れない場所ではしゃいだのと、最後にしんみりしたのですっかり疲れ果てていた。夜ごはんにしっかり食べた海鮮丼もまだお腹に残っている。もぉバタンキューしたかったけど、断るとさらに面倒くさい。あとは寝るだけだし、投げやり気味に答える。

「良いけど…」


 言った瞬間におれはお姫様抱っこされた。

「?!」

「本当に可愛いなぁ…」

 脚と肩を触る手つきがいつもと違って気持ち悪い。何だろう…落ち着かない、少しイヤな予感がした。


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