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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
囚われたネコ

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1 ネコ囚われる

第三章はネコ視点で綴られます!

「誰に、なにを言ってもらっても構わないって、さぶろう君、そう言ってたわよ」

 白い煙を口からもやっと吐き出し、赤い唇を引き上げ気味に喋っているのは熊谷ゆかりだった。

「百万円を渋るくらいなんだから、大したガキじゃないのかしら…それとも儲かってるってのはガセで、相変わらず底辺生活してるとか?」

「そんな生活してて、手のかかりそうなガキ置いとけるわけないだろ?」

 反論されても気にした風もなく、熊谷ゆかりは壁にもたれたまま、もう一度煙を吐いた。

「じゃあどうする?そのガキ、どっかのすけべジジイか、成り金マダムにでも売る?さぶろう君脅して引き出すより高く売れそ…」 


「もう少し、考える…」

 少しの静寂のあと、男は小さく答えた。、

「あんまり時間はかけない方が良いよ?置いとく分、リスク上がるし…このガキはなんていうか…」

 彼女は絨毯の上に縛られて寝っ転がっているおれに近づくと、かがみ込んで様子を伺いボソッと呟いた。

「…面倒臭い気がする…」



 面倒臭いだと?

 泣き疲れて寝てる…というフリはバレてないなと思いながらおれは考えていた。

 さぶろうのバカ…。

 大人同士で話をして様子見てみるって。そのあとネコと作戦会議しよって。そう言ってたのに、ヤツらの方が、もう乗り込んで来ちゃったじゃん。


 やっぱりあのとき、さぶろうについて行けば良かったんだ。さぶろうが出て行った後、おれはふてくされながらいつものように漢字の書取りをしていたんだけど、ふいに不穏な空気を感じ取って身震いした。

 この気持ち悪さは何処からくるのか、気になったベランダの手すりの隙間から下を覗くと、白くて四角ばった車から男が3人降りてくるのが見えた。

 敵は熊谷ゆかりだけじゃなくて、コッチにもやって来たんだとピンと来てしまった。おれ、こういうの外したことない。

 どうしよう?…オロオロしたのは一瞬で、すぐに思い直しちゃったのだ。いや、ひょっとしてコレはチャンス…おれこそがさぶろうを守ってあげられるって、身をもって分からせるには絶好の機会なんじゃない?


 そう思ったおれは、後で帰宅するさぶろうへのメッセージを書き取りノートの最後のページに残し、何にも気付かないでテレビを見てるふうを装った。ほどなく玄関からガチャガチャと音がして、鍵を開けて男が2人、入って来た…!


 おれはゆっくりと振り返って、わざと目を潤ませ「だれぇ?!」と声を震わせて言ってみた。目深に被った帽子とマスクで顔はよく分からない。

 どんな表情をしているのか謎のまま、男たちは「悪く思うなよ」と言って、あっという間に猿ぐつわと同時におれを後ろ手に縛って布袋ぬのぶくろに入れると、また車に乗り込んだ。まぁ、おれも大して抵抗はしなかったしね。だって、虎穴こけつらずんば虎子こじずって言うでしょ?

 車に乗せられてる時間はそんなにかからなかったと思う。布袋から出された場所はマンションの一室のようで、さぶろうの住んでるところより、はるかに広かった。ヨーロッパのどこかの国みたいな木目の美しいツルツルした調度品や、鈍く光る重厚そうなカーテンが目に入る。フッカフカの絨毯は心地よかった。


「悪いが、人が来るまでそのままだからな」

 そう言われて放置され、外からの日差しがだいぶ薄暗くなってきたところで、熊谷ゆかりと、男が部屋に入って来た。今日のさぶろうとのやり取りを男に報告していたから、おれもだいぶ事情が飲み込めた。とりあえず、さぶろうはお金も取られず、あの女に酷いこともされず、無事だったみたいでホッとする。



 言いたいことだけ言って熊谷ゆかりは部屋を出ていき、残された男はバンとテーブルに手をついた。

「クソッ何もかもうまくいかない」



 この人はどうも、さぶろうのお兄さんのじろうっていう人らしい。お兄さんなのに、さぶろうにイジワルするの何でだろう?

 これ以上ちょっかいかけて来ないように何とかしてやらなきゃ!お手柄を立ててさぶろうに褒めてもらうんだ。



 おれ、「秘密兵器」だしな!!



「最初から出したら勿体ないから、ネコの出番はここぞって時に出すってことだよ」

「相手の出方を見るってこと?」

「冴えてるな、ネコ!そういうことだよ!」


 そんな会話をしたのはちゃんと覚えてる。そもそもさぶろうとの会話は、ほぼ100パー忘れないものなのだ。さぶろうとおれのラブラブな毎日を守るために頑張んなきゃ!

 そんな風に考えていたら、今度は男が近づいてきた。


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