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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
人間になったネコ

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20 ネコ展覧会にゆく

 

「さぶろうの絵が飾ってあるんでしょ?しかもネコの絵もあるんでしょ?!ぜったい行く!」

 ネコはこの話が決まったときから大騒ぎで、犬神の勧めもあってオープニングに一緒に参加することになっていた。田貫さんからの呼び出しに渋々ながらも送り出してくれていたのは、ネコがこの展覧会をとても楽しみにしていたからなのである。俺が狙われていたなど、真相はとても言えやしない…。


 いつかのときのように、かっこいーからと言う理由でまたもや全身黒コーディネートでお揃いにされて、地下鉄を乗り継ぎ、会場である都内の私設ギャラリーに着いた。


 ちなみに言うと、猫の思う“かっこよさ”は黒色に集約されるらしい。まだネコが小さかった頃、テレビ番組でお笑い芸人が、黒豹を飼っている富豪を紹介していたのを見て、うっとりと言っていた。

「かっこいー…ネコこうなりたい…」

「こんな家に住みたいってこと?」 

「ちがぁーう!くろくておっきいし、おおさまみたいな、あんなネコになりたい」

 コーヒーを飲んでいた俺はせた。

「あれ、猫じゃないぞ」

「ネコじゃないの?!」

「豹だよ」

「ひょうとネコちがうの?…おっきくなったらネコ、ヒョウになる?」

「ならない」と言いたかったがそんなことを言ってしまったら泣いてしまいそうで言えず、そういえば俺は何と言ったんだろう…?

 出版社とその関係者のお偉方の挨拶の間、俺はそんなことをぼんやりと思い出していた。挨拶が済むと、お得意様(?)を始め、招待された関係者は、贔屓ひいきする作家のブースへと散って行った。優先的に作品を購入できるらしい。

 新聞紙などのメディアも呼ばれており、俳優業が本職の作家が2人ほどインタビューを受ける準備をしているのも目に入った。

 犬神も田貫美穂も流石に今日ばかりは細々としたことに忙殺ぼうさつ)されているらしく、たまにチラと姿を見たが俺たちに話しかける余裕は無いようだった。



「さぶろう、これ何て読む?」

 俺のブースの何枚かの作品には既に《売約済》と書かれた紙が貼ってあった。

「ばいやくずみ」

「ばいやくずみ?」

「もうこの絵は誰かが買ってますよってことだ」

「ふぅん、もう売れちゃってんだ。やったね、さぶろう!」

 ハハと笑いながらもう一度絵をみる。

「ネコ、このときのこと覚えてるか?」

「覚えてるよ!ネコ、さぶろうとのことは全部覚えてるからね!」

 都合の良いこと言いやがって、と思うものの満更でもない。最近のネコはどうも小賢しくなってきたなとムズムズする。

 背後から「先生」と呼ばれて猫と共に振り向くと、レオ君が立っていた。

「あれ?本当に外国のひと!?」

 レオ君の今日の髪の毛は猫と同じプラチナブロンドだった。着ている服も黒一色だ。振り向いた猫の顔が自分と同じようなファッションをした日本人では無いのに驚いたのだろう。レオ君は少し身を屈めて猫と目線を合わせて自己紹介した。


「レオです」

「…」

黙ったままのネコを肘で小突いて、目で挨拶しろと伝えると猫はしぶしぶと答える。

「ネコです」

「あれ、日本語わかるんだ」

 ネコは相変わらず俺の背中にひっついて人見知りする子供のようにモジモジしている。

「友達の子どもを預かってるんだ。ホレ、ちゃんと挨拶しろよ」

「ネコ…って言うんですか。まぁ俺もレオだから似たようなもんか。ハハ」

「ハハっ、猫とライオンだね」

 レオ君の不思議そうな顔を誤魔化すように俺は茶化した。


「俺、コレ買っちゃいました」

 やにわに、レオ君はさっき猫と話していた一枚の絵を指差した。結構な値段のするものである。まさか彼が買ったなどと思わず、動揺した。

「えっ?!昨日絵をいただいちゃったのに、俺のは買ってくれたの?!悪いよ!俺もプレゼントするよ」

「先生はファン心理を知らないな…あっじゃあ…えっと…」

「?」

 何回か言い淀んで彼は真っ赤になった。

「一緒に写真撮ってください!そんで…インスタあげてもいっすか?」

 何を言うかと思ったら、そんなことだった。構わないよと俺とネコと一緒に3人で写真を撮った。彼のマネージャーという人にあーだこーだと何枚も撮られたが、猫はノリノリだった。俺の方がだんだん表情が固くなって、結局1枚目が1番良いと言われてしまった。

 乗り物に乗ること、お風呂に入ること、写真に写ること…普通は嫌いじゃないのかなぁと思うが本当に変わった猫である…。


 展覧会は盛況で企画は継続されることになったらしい。次回はチャリティー色も入れて規模を大きくしたいと犬神の上司が言っていた。

 意外にも俺の絵はまとまって売れ、手数料を差し引いてもそれなりの額になったため、迷った末、結局、俺は新車を買ったのだった。

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