表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
人間になったネコ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/73

18ネコVSタヌキVSちょっとイヌ

「またぁ?」

 ネコの鋭い声に俺はため息をついた。

「仕事の打ち合わせって言われたら行くしか無いだろ?」

「そう言っておいしーもん食べたり、お酒飲んだりしてるだけだったじゃん」

 俺のとなりで、クッションを抱えながらネコは頬を膨らませてプイッと横を向いた。

「…」

 そうなんである。最近田貫(たぬき)さんからの連絡が頻繁にある。断れる場合もあるのだが、仕事にも関係するのでと言われ、渋々(しぶしぶ)苦手な繁華街へ出かけるも、仕事の話にはならない。経費で落ちるという料理も酒も美味いが、どうも田貫さんのあの目で見られるといろいろ縮み上がってしまう。何が目的なのか不気味で、俺も持て余しているというか…

 …

 正直、行きたくないのだった。


「なぁ、ネコ、一緒に行く?」

「ネコ行っていいの?仕事なんでしょ?」

「…」

 だよなぁ。()()()()()()()()は猫にも伝わったのか、塩対応である。まぁ実際、行った先に彼女の上司がいたり、例の展覧会の出品者なんかいたりするなら、かなり気まずい。俺は、現状を相談するていで犬神にラインを送り、とりあえずの保険をかけてみることにした。『最近打ち合わせで田貫さんに呼び出されるけど、こんな頻繁にあるものなんですか?また教えてください』こんなもんでいいかな。


「じゃあ行ってくる。戸締まりはちゃんとしてな。留守を頼んだぞ。知ってる人が来ても無視するように!」

「わかってるってば。それより早く帰って来てよ」

 俺の膝の上に擦り寄って上目遣いで訴えられる。

「俺もそうしたいよ」 

 ふーと長いため息をつきながら、ネコの頭を撫ぜて答えた。



 案の定、指定された場所には田貫さんしかいなかった。

「あの…今日は打ち合わせでしたよね??まさか2人きりではないですよね?」 

 おずおずとそう言うと、後から合流しますから!と勢いよく言われ、その場所から遠くないビル地下のお店に引っ張られた。


「とりあえず、先ずは乾杯してからで」 

 嫌な予感のまま、いつもの一言から始まってしまった。「ここのお料理、オススメなんですよ?!」からの「このワインが合うんですよ」からの「コレ!コレが美味しくってえ…!」からの…延々と仕事の話は微塵みじんも無く進んでいく。俺も俺で、いつものように仕事の話を催促することも、合流するのは誰でいつ来るのかとも言い出せずに、がれるままに杯を重ねた。

 それにしても、今日はこじんまりとした薄暗いダイニングバーの雰囲気がそうさせるのか、呑まされてる気はないのに、いつもより酔いが早い気がした。



 何杯目のワインだったのか、気づけば意識が朦朧もうろうとしていた。こんな風になるのは初めてのような気がする。

「犬神と親しいようですけど、正直、さぶろうさんは彼女のこと、どう思ってるんですか?」

「…?どぉ…とは?」

「やだぁ、男と女ですよ。推してはかるべしでしょ?…て、もう頭まわってないかしら?」

「まぁってますよ」

 なんだか呂律ろれつも回らない。


「ンもう!ただの後輩なのか、女として見てるのか、いずれ恋人にしたいとか、いろいろあるでしょうに」

「とんれもない…!!アイツは恩人で…すよ…。足向けて、寝あえないえす」

「ふぅん、そーなんだ…」


 いろんなことをつらつらと話したが、別の場所に頭があって、そいつが他人事ひとごとのように喋っているような感覚で、俺自身はもう眠くて仕方がなかった。一瞬眠ったような気がした後、いつのまにか俺はタクシーの後部座席にぐったりともたれていた。俺の指先に何かが絡みついてフニフニと握られている。ネコ、猫に戻ったのか?俺は思わずソレに頬擦ほおずりをした。あれ?フワフワしてない…??


 ずっと頭がぼーっとして、視界もはっきりしておらず、次に気づいた時にはふらつく体を誰かが抱き止めてくれていた。

「あ…しゅいません…」

 真っ直ぐに歩けず、壁で半身を支えた。見慣れた俺のマンションの廊下だった。

「もうすぐお部屋ですから、頑張って」

 目線だけをずらすと、そこに田貫さんの笑顔があった。ふらふらになった姿を支えてくれていたのは田貫さんだったのか。その場で寝転がってしまいたい衝動と自分のベッドにダイブするのを天秤にかけながら、マンションのドアの前まできたところで、お互いの息が感じられるほど、彼女の顔と数センチも離れていないことに気づいた。腕が動かないのは酔いのせいなのか、田貫さんの支える腕のせいなのか…フニャと唇に柔らかいものがくっついたと思う。フフといつもの田貫さんの妖しい笑い声が頭に響いた。



 バン!!

 いきなり玄関のドアが開いた。

「きゃっ?!」

「さぶろうに何してる?!」

「ええ?!キミは誰?!なんなの?!」

「さぶろうを迎えに来たんだよ!」

「迎えに…?!えぇ?!誰なの?!」

「そこ退いて!」

「ちょっと!!ボク、何者なのよ?!いったい…」

「俺はさぶろうの家族なの!!」


 あれ?ネコの声が聞こえる…またオレって言ってないか…?まぁ別にどうでも良いんだけどさ…肩と腕に細い猫の手が掛かって引きずられ、自分の家の玄関の匂いにたどり着くと安心感に気持ちがゆるんだ。


「えぇ〜?!なんなのぉ?!」

 田貫さんの声が遠ざかり、さらに気が楽になる。そうだ、俺の家まで来たんだからベッドじゃなくて玄関でも良いっか…俺は猫の引っ張る力に逆らって()()()を枕にして寝そべった。なんだか遠くに犬神の声も聞こえてくる。


「美穂先輩!!信じられない!!!」

「犬神?!あんたも何でいんの?!ストーカー?!」

「そんなわけありますか!!さぶろうさんからの連絡でイヤな予感したから来たんですよ!」

「そんなウソつかなくったっていーから!」

「てゆーか、先輩恥ずかしくないんですか?こんな…酔わせて…!!!」


 普段聞いたことない女性特有のキャワキャワとした声をぼんやりと聞いてると再びバン!という音が響いた。ネコが玄関扉に手をついて仁王立ちしている後ろ姿をぼんやりと見上げた。

「おばさんたちうるさいよ!!ケンカするならよそでやって!!」

「…おっ!おば…!おばさん〜?!」

「ちょっと!先輩!!隣の人に見られてますよ!!行きましょ!!」


 俺は笑っていたらしい。俺の身体はフワフワしていて無性に陽気な気持ちになっていた。

「さぶろう?!起きて!!さぶろうー!!」

 心配顔で俺を覗き込むネコは久しぶりに見る猫の姿の猫だった。抱きしめて、ところ構わずキスをした。

「ネコぉ、おまえはかわいいなぁー」

「さぶろぉ…!!」





 朝7時。

 開けられたカーテンからのまぶしい朝日が俺の顔を照らした。二日酔いの鈍痛に耐えながら、それでも頑張って、うめき声のような「おはよう」を喉から絞り出す。挨拶は無く、ネコが怒り顔で枕元に立っていた。


「さぶろうはぁ、(すき)があり過ぎる!!」

「えぇぇ…??」(掠れ声)

「とりあえず水飲んで」

 サッと出てきた500mlのペットボトルを寝たままごくごくと一気に飲み干した。なんで俺はこんなに喉がカラカラなんだと思う内に、昨晩の醜態の数々が脳裏にフラッシュバックする。え、嘘だろ?!これ本当に俺の記憶…?!


「サンキュ」(掠れ声)

「さぶ…」

 ネコが口を開く前に俺は酒焼けた声で早口に叫んだ。

「わーーーーすまん!反省してる!!!本当にごめん!!とりあえず昼まで寝かせてくれ!!」

 そう言ってタオルケットを頭からばっさと被った。大の大人が何と言う恥をさらしたのか、猫と顔を付き合わせて話せる厚顔は今は持ち合わせられなかった。


「まぁね、さぶろうは特別だから、大目にみてあげるよ。貸し二つくらいにしとく」

 フッと笑ってネコは寝室を出て行った。


「ゔゔぅ…」

 そんな台詞を何処で覚えて来るんだ…この頭痛は深酒ふかざけの理由だけでは無さそうだった。

なおかさんに言われて追加したタヌキ回。私にはこれが精一杯…。

もっと迫らせたかったなぁ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ