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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
拾われたネコ
15/71

15 さぶろう、禁煙し始める

 久しぶりにベランダに出てタバコをくゆらせた。生活が整うにつれ、やることが増え、その時々の気分転換に手放せてはいないが、最近めっきりタバコを吸う機会が減ったなぁと思いながらしみじみと味わう。このまま辞められれば、本当はそれに越したことは無い。タバコは贅沢品だしこれ1箱買うお金で猫にもっと良いものを食べさせてやれる…のは分かっているのだ。

 まぁそんな簡単に辞められるんなら、今までに辞めてたよなぁと思いながら、くるりと振り向くと猫がいた。

「おぉ、ネコ…居たのか…」



 最近こういうことが多い。今も振り向きざまに目線を感じてビクッとした。 

「ネコもすいたい」

「あぁ?!何言ってんだ!タバコなんてダメダメ!!お酒よりタチ悪い!!」

 途端にムゥっと顔をしかめる。そんな顔してもダメだ。

「猫のくせに」と言おうとして泣かれたことを思い出す。(これは犬神との打ち合わせにどうしても連れて行けと駄々を捏ねた時)「子どもはダメ」と言おうとして、つい先日子ども扱いして噛まれたことも思い出す。

「…ぬう」



「タバコは20歳以上っていう法律がある。違反したら俺も猫も警察に捕まるからダメ」

「ほういつ…」

「そう、法律がある!」

 おお、真っ当な言い訳じゃないか。俺はウンウンと自身で納得して頷いた。猫は法律という普段聞き慣れない単語の意味を探るように、ううんと呻ったあと言った。

「じゃあネコおっきくなったらすえる?」

「そうだな、でも猫が飲めないコーヒーより苦いぞー?」

「にゃッ」

 変な顔をする猫を思わず笑った。



 ところが後日、タバコが与える猫への悪影響なんて記事をネットで見つけてしまい、人知れず戦慄してしまった。

「え…、笑い事じゃないじゃん…」

 人間の5.6倍の悪影響?!リンパ腫とか、癌とか怖い単語が並んでいる…。


 辞めないと…!!

 と、いうわけで目下禁煙中である。辞める、と決めると辛いものがある。しかし吸うたびに罪悪感を感じるようになってしまったのも事実で、ひとり悶々としている。今日もソファーの定位置で、グルメ番組を食い入るように見ている何も知らない猫をうろんな目で見ながら、ひっそりと耐えている俺だった…。



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