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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
拾われたネコ
11/71

11さぶろう、ネコと風呂に入る

「さぶろう、おふろわいたー」

 パソコンで画像処理している俺の服を引っ張って、猫が風呂に入るのを誘ってきた。猫に会いたいがために、3日に1回は何かしらを持ってきてくれる管理人夫妻がシャンプーハットなんかくれたもんだから、頭を洗うことが好きになったようだ。

 風呂は正直面倒くさい。俺は今までずっと、ごく稀にシャワーだったのだ。汚部屋時代は浴室が汚いために、自分にたまりかねたときは銭湯に行くくらいだった。今でもそういう日があって良いと思ってる。当初は猫だって、風呂で身体を洗われるのは慣れなかったのに。


 だが、しかし。

 まだまだ手のかかる猫をひとり勝手に風呂場に送り込むなど危険すぎてできない。以前は風呂に入らない日もあったのに、こんな風にせがんで来るようになってしまって…。風呂に入るのが好きな猫なんてそうそういないのに、お前は本当に変わっている…。 

「もう少ししたらキリがつくから、もうちょい待ってくれ」

「んぅ」 

 不満気に唸っているが、実際、俺はこの間から仕事に追われている。この成果は数ヶ月後に俺の口座に振り込まれるので、現状は何も変わらずに俺だけが忙しいという状況だ。

 しょぼんとしてソファに戻る猫に済まないと思いながら手を動かす。少しでも気を紛らせるかと話を振ってみる。

「なぁ、猫、明日おでかけなの、分かってるよな?」

「わかってるよ?あさ、かえんだーにまるしたもん!

 えいがでしょ?!ネコはねぇ、ほんとにたのしみよ?」

 可愛いことを言うので俄然やる気が湧いてくる。世間の親は子供から、こんな感情を貰っているのだろうか。何かと、さぶろうさぶろうと俺を構ってくる猫が普通になって、それまでの俺の生活が誰とも関わりあいを持たない孤独なものだったのだと辛辣に気づかされてしまった。



「よし!今日の分は終わり!!」

 データを保存しながら立ち上がった。俺は見直しにはいつも時間を置いている。その方があらに気づきやすいのだ。明日少し早く起きて修正を見つけられなければそのままデータを犬神に送って、この仕事は完了だ。

「オーイ猫!風呂行くぞー」

「うぁーい!!」

 猫はソファからぴょこんと飛び出してきて浴室へ走る。

 お前は猫に戻っても風呂に入りたがるのか?…というか、いつかは猫に戻るんだよな??


 今の俺には、自分がどちらを望んでいるのか分からなかった。




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