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魔法の首輪をつけた猫 〜現代版長靴をはいた猫〜  作者: 東條 絢
拾われたネコ
10/71

10 ネコ、映画に誘われる

 

「さぶろぉー」

 ちょっと舌足らずな猫の声が遠くから聞こえるが、久しぶりに飲んだ昨晩のビールのせいか、目が開けられない。

「うにゃー!!」

「うっ」

 ドスっと胸に猫がタックルしてきて、ずっと無視して寝続けるわけにはいかなくなった。地味に痛い。身体に残るアルコール特有の気怠さを振り切って、上半身を起こした。

「ねこ… おはよう」

「さぶろーうーおはよーう!」

 猫は元気に動き回っている。立ち上がると、コーヒーの香ばしい匂いが部屋を満たしているのに気づいた。

「コーヒー、淹れてくれたのか…。…ん?」

 その割には匂いが強い。嫌な予感がして慌ててキッチンに行くと、いつものようにコーヒーメーカーは飴色の滴を落としていたが、蓋を開けたら粉が溢れんばかりにはいっていた。今日は、カフェオレにすれば良いか…寝坊した俺を気遣ってわざわざ淹れてくれたんだから。後で豆の量だけちゃんと教えておかないと。


 猫の飲むミルクを電子レンジに入れて温める→猫がトースターに入れてくれたパンを取り出して皿に載せる。このルーティンから、最近の俺の朝は始まる。

 先日一階に住む管理人夫妻がバターとジャムをくれ、猫は特にバターを気に入ったようだ。今日もモリモリつけている。猫よ…それは結構なお値段がするんだぞ?

 ベッタベタにした口周りをホットタオルで拭いてやると、猫はウフンと、うっとりして気持ち良さそうにした。

 ふと思いついて提案してみた。


「ネコ、映画見に行くか?」

「えいが」

「真っ暗な中で、デッカい画面におっきな音でアニメを見るんだよ」

「それ、おもしろいの?」

 そう言われると微妙な気持ちになる。面白い…筈だが…

「またさぶろうとおでかけするの?」

「そう。俺も映画は何年ぶりだろうなぁ」

「じゃあいく!さぶろうとおでかけしたい」

 映画よりお出かけか…可愛いヤツめ。思わず顔がニヤつく。

 犬神が帰り際に、良かったら、と映画の券をくれたのだ。彼女の勤務先であるA出版の看板御長寿漫画が毎シーズンやっている映画で、アニメだけれど何枚もあるからネコ君と行ってみてと言われてありがたくいただいたのだ。

 そういえば、今度、私とも映画見に行きましょうと言っていた。俺に社交辞令なんぞいいのに…

 社会人の鑑である。


 最近は以前に比べて随分仕事も増えたので、作業時間や進行スケジュールを考えながら生活しなければいけないが、猫がいるからこそ出来ることをやらないのは損だと思う。たまにはイベントのようなものを作ってモチベーションにするのも良いだろう。

 頼まれたイラストをその日までに仕上げて、朝からショッピングモールと隣接している映画館に行こうと決めた。カレンダーに丸をつけて、猫にそう説明すると、嬉しそうに笑った。


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