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王子を産めない王妃、イザベラの下賜。以前、陛下を毒殺しようとしたソフィーをグラベルが庇っていてそのため、イザベラをグラベルに下賜して二人を厄介払いしようと陛下は考えていると。さらに、陛下は新しい王妃を迎える準備を始めているとまで出ていた。

 

ソフィーを庇っていたのは確かだが、グラベルはこれ以上、ソフィーが毒を使わないようにしていたというのに。それに陛下がイザベラとグラベルを厄介払いしようとしているとは考えられない。

グラベルも陛下はイザベラを手放すことはないと言っていた。それに迎えるとしても側室だ。王妃ではない。シャーリーはなんて勝手なことを言うのかと苛立っていた。

そして薬室にもう一人、同じように苛立っている人物がいた。カルロだ。


「どうしてそんな話が出来るのか!」


カルロの怒りはもっともだった。

イザベラの妹のカタリーナがイザベラを心配してよく王宮に来るようになっていた。だが、それさえも周囲の者は噂話につなげてくる。

イザベラの父、ラウエン伯爵はイザベラが下賜されるのなら、妹のカタリーナを新しい王妃にするべく陛下に迫っていると。

実際、そんな話は出ていないが、人々の関心と興味がそこに集中している。そして関係する人物がこの王宮に集まっているのが原因だ。

ラウエン伯爵にその意思がなくとも周囲はそうは思わないのだろう。そうやって噂を流し、その話を内側から潰しにかかろうとしているのが分かる。そして、ことが収まったころを見計らって、別の王妃候補が陛下の前に現れるという計画らしい。

珍しく、シャーリーの父、カーネル伯爵が薬室に顔を出してきて教えてくれた。どうやら父は、イザベラがグラベルに下賜されることを危惧して、内密に調べていたようだ。

実際、グラベルとシャーリーのことはごく内輪しか知らない。そのため、比較的簡単に調べることが出来たらしい。


カルロは兵士たちから噂を聞いて怒っている。イザベラの体調は何とか持ち直しているが、今度はカタリーナが心労で倒れそうなくらいだ。

それを心配しているカルロを見ていると何とも言えない気持ちになる。

陛下を襲ったソフィーの乳姉妹とノゲルの部下がその噂の出どころのようだと昨夜グラベルから聞いた。


陛下の侍従でリンゲル領に残っていたギルバートと騎士団がソフィーの乳姉妹とノゲルの部下の行方を追いかけているらしい。その行く先々で陛下の無情ともとれる噂を耳にすると連絡が入っているらしい。


その噂に便乗する貴族もいるようで、反対に陛下を廃位に追い込んでグラベルを王位につけようと画策している貴族がいるとシャーリーの父、カーネル伯爵から聞かされたらしい。


グラベルとシャーリーのことを知らない者は、グラベルの一番近くにいて話を纏めやすいシャーリーをグラベルと婚姻させ、陛下の代わりにグラベルを担ぎ出そうとしていると。

最も、シャーリーの父はしっかりと断ったと言ってきた。シャーリーは騙された振りをしてその貴族たちを捕まえてもいいとさえ思っていたが、グラベルと父から止められた。


「カルロ様、これ」

「これは?」


アンヌが薬袋をカルロに渡す。薬袋を受け取りながら不思議そうな顔をした。


「カタリーナ様は食欲がないそうです。以前、王妃様の妊娠中に使っていた薬草で作ってみました。滋養にいい薬です」

「ありがとう。今日、来た時に渡してみるよ」


アンヌの言葉にカルロも理解したようだ。アンヌも少し安堵したようで小さく息を吐くのが見えた。

カルロの恋を応援することは出来ないが、これくらいなら問題ないだろうとシャーリーとアンヌが話し合ったことだ。

カタリーナはその立場から、いずれそれ相応の相手と婚姻を結ぶことになるはずだ。いつかは手放さないといけない想いを抱えているのに二人はとても幸せそうに話をしている姿を見るとシャーリーのほうが辛くなる。


シャーリーとアンヌはカルロをその場に残して薬室に戻った。もうすぐ、カタリーナが来るはずだ。


「シャーリー様、リンゲル領とフォアボルド領がこのままだと薬草が足りなくなりそうです」


リンゲル領とフォアボルド領に応援で言っているエレノアとレティックスからの連絡をマースから渡された。


「代替え用の薬草を出しましょうか」


シャーリーはそういうとアンヌとマースの三人で温室の横にある倉庫へ向かった。

倉庫から代替え用の薬草を運び出しているとグラベルがリズバルク伯爵と話しながら歩いてくるのが見えた。


「どうするのだ?」


三人が薬草の入った籠を運び出しているとリズバルク伯爵が聞いてきた。


「リンゲル領とフォアボルド領の薬草が足りなくなりそうなのでこちらを送ろうかと」


マースが説明すると、それならと言ってグラベルとリズバルク伯爵自ら薬草が入った籠を運び始めた。


「あの……」


アンヌが必死に止めようとするが、グラベルとリズバルク伯爵は気にしていない様子でどんどん薬草を運び出している。


「アンヌ様、諦めましょう。あの二人に言っても聞きませんよ」


シャーリーは首を横に振りながらアンヌに言う。他の貴族であれば自ら動こうとはしないがこの二人は違う。グラベルは元々薬剤師だが、リズバルク伯爵も薬剤師たちに交じって薬草を運んだり、薬を袋詰めしたりと何かと手伝ってくれる。


そんなリズバルク伯爵をアンヌは諦めた様子で眺めている。とても優しい眼差しを向けていた。

その向こうでカルロがカタリーナと話しているのが見えた。


薬草を運んでいたリズバルク伯爵は立ち止まりその様子を見ていた。グラベルも同じように籠を抱えたまま立ち止まった。


「シャーリー、あれは?」

何と答えていいのか迷う。

「カタリーナ様とカルロ様です。カタリーナ様は最近食欲がないとお聞きしましたので滋養の薬を作ってカルロ様に渡していただくようにお願いしました」


アンヌが代わりに答えた。

下手に勘繰られないようにしないといけないが、グラベルには気づかれたようだ。一瞬、足元に視線を動かしその後、振り返りシャーリーを見た。

シャーリーは何も言わない。言わないが、多分分かってしまった。アンヌとマースも気づいていることを。


どうするのか心配で見ていると、何事も無かったかのようにグラベルとリズバルク伯爵は再び薬草の籠を運び始めた。


やはり、このことは気づかないふりをするしかないのだと分かった。シャーリーはアンヌを見ると、アンヌは泣きそうな顔をしていた。


「私たちも運びましょう」


シャーリーはそれしか言うことが出来なかった。

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