表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/93

薬草園の管理人

 シャーリーは薬室長に言われた事を反芻する。

「薬草園の管理を任せる」


 今までグラベル担当の薬草畑はグラベルが立ち合いでシャーリーが世話をしてきた。それがシャーリー担当の薬草畑をいくつか任されたのだ。

 薬室長が今後のことを考えて担当を見直し、仕事をあらたに割り振りした。


「シャーリーは薬室の管理している薬草畑二つとホルック領の担当ね」

 薬室長から言われた内容はシャーリーに重くのしかかる。

 ローレンスは薬室長宛に来る各地の報告書の回答を、カルロは許可制にした薬剤師の試験を定期的にする為、その試験問題作りを任されていた。


「グラベル様はまだお帰りになられないのね」

 最近はいつもシャーリー一人で食事を摂っている。

 少し前まではグラベルが一緒だったが、こうして一人で食事をするのは寂しいと感じる。

 今、グラベルは別件と言ってアーリシュやヨハンと共にケリーとハンスも連れて領地の視察に行っている。


「明日戻ると連絡がありました」

 サラが食後の紅茶を入れてくれる。

「別件って何をなさっているのかしら?」

「農作物のことだと仰っていましたがそれ以上は」

「そう……」

 シャーリーはホルック領のことで相談したいことがあるけど無理かなとため息をついた。

 食事を終えて自室に戻る。

 ホルック領の農地管理のための手順書はほぼ出来上がっていた。それをグラベルに見て欲しかったのだが。


 シャーリーは仕方なくもう一度手順書を見直す。

 明日は種付けをする為ホルック領に行く。

 もう何日グラベルと会っていないのだろう。

 シャーリーは明日持っていく荷物の中に手順書を入れ、ベッドに潜り込んだ。



 翌日、薬室に顔を出すとケリーとハンスがいた。

「どうして?」

 思わず声が出てしまった。


 今日、帰ると聞いていたが、朝からいるとは思っていなかったからだ。

「昨夜遅くに帰ってきたので」

 ケリーが答えた。

 ハンスはカルロと話している。

「グラベル様も?」

「はい。ただ、朝早くから調べ物があると言ってアーリシュ様たちと書庫へ向かいました」

「何を調べているの?」

「農地です。あっ、でもこちらは薬草畑にするものではなく、農作物のほうです」

「農作物?」

 グラベルは薬室の管理官であって、農作物は管轄外のはず。そのグラベルがどうして農作物のことを調べているのだろうか。

「流行り病の影響で、農民が減っているのです。その為、農作物の収穫量に影響が出始めているのです」

「農民が減っている?」

 シャーリーの知らないことだった。父であるカーネル伯爵の領地ではそのような話は出ていなかった。


「ホルック領は流行り病の影響があまりなかったのと領主が変わったことで農地と農民が薬草畑に確保でしたのです。しかし、流行り病の影響が多く出たところは、農地が余ってそれを管理する農民が足りないのです」


 シャーリーは初めて知ることに驚いていた。

 農民がいなければ農作物を作る人手が足りない。それは収穫量に影響するだろう。引いては国内は食糧不足に陥ることにもなる。

「どうするのですか?」


 シャーリーはグラベルが抱える事の大きさを改めて感じた。

 農作物ということは薬剤師や薬室管理官としてではなく、ウィルゼン公爵としての仕事だろうか。

「各領主に対応をお願いしていましたが、なかなか進まない領地もあり、そこへグラベル様が出向いて直接対策を立てておられます」


 流行り病が治まってからそろそろ一年が経とうとしている。それでもまだ影響を及ぼしているのだ。

陛下や側近だけでは対処できなくてグラベルも国の為に動いている。

 皇太后様がグラベル様は政に極力関わらないようにしていたと言っていた。その考えを曲げてまでも国を守ろうとしているのだと思った。



○○○

「シャーリー、そろそろ行こうか」

 カルロが声をかけてきた、

 シャーリーはもう少しグラベルのことを聴きたかったが諦めた、そのうち本人から聞けるだろう。それを待とうと思う。


 ローレンスとカルロと共に馬車に乗り込む。ケリーとハンスも一緒だ。

 馬車の中で今日の作業手順の確認をする。

「今日中に全て終わらせたい」

 カルロが力説する。今後のことを考えるとあまり時間はかけられない。

 種付けは一つづつ農地を回るが、シャーリーたちと農民全員で回ることにした。

 全員一緒の方が早いと考えたのと、数種類の薬草の種付けを農民全員に覚えてもらう為だ。


 一番初めの農地に行くと、ブランデンと農民が既に集まっていた。

 カルロが種付けの説明をし、農民たちはそれを手帳に記入していた。

「あれは?」

 シャーリーは農民たちが手にしている手帳を見てブランデンに聞いた。

「これからのことを考えて、農民たちに手帳を配りました。自分たちでできるだけ覚えてもらえるように」


 カルロが選んだだけある。みんな真剣に聞いて手帳に記入している。

 その後、全員で種付けを行い、次の農地へ移動する。

 次でもカルロが説明して種付けをし、終わったら次の農地へ移動することを繰り返して全ての農地の種付けを本当に一日で終わらせた。


「芽が出てからはこちらの手順書に沿って手入れをしてください」

 シャーリーは持ってきた手順書をブランデンに渡す。

「明日から暫く、薬室に来てくださいね。実際の作業を薬室で教えますから」

 ローレンスが言う。

「分かりました」



「どれだけ芽が出るかだね」

 ローレンスが言うとカルロが分からないなと言っていた。

「一応薬草が育つように土も整えたけど、どこまで育つか分からない」

「王宮と同じにしたのに?」

 シャーリーは疑問に思い聞く。

「シャーリー殿、王宮と同じようにしても全く同じに育つとは限らないのです。農作物も同じことが言えます」

 ケリーが言う。

「薬草の運搬に騎士団の護衛がつくと聞いたけど本当?」

 ローレンスが聞いた来た。

「本当です。できるだけ安全に運ぶにはそれが一番だとグラベル様が」

 運搬用の馬車も今手配しているとハンスが言う。

 シャーリーはどうしてグラベルがケリーたちを連れて行ったのか理解した。すべては薬草畑のためだ。

 シャーリーは同じに育たなかったらどうすしたらいいのか不安になる。グラベルがここまで準備したことを台無しには出来ない。やはり、グラベルに聞いてみたかった。

 今日は会えるだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ