ランタンの少女
光が全く存在しない空間。
目を開いているのか閉じているのか…、身体を動かしている感覚のみで目視できない。
見えない体を確かめるようにゆっくりとしゃがみ込む。
「真っ暗ってこういうことをいうのかな…。」
はははとわざとらしく笑いながら懐中時計の形をしたロケットを祈るように握りしめる。
状況を冷静に判断しようと動く思考とは違って体は正直だ。
手が震えているのだろう、ロケットに繋がっているチェーンがチャリチャリと音を立てている。
このまま誰にも見つけてもらえなかったら…という考えがよぎったとき
「あらあら、懐かしい気配がすると思ったら迷子かしら」
ゆったりとした優しい声に振り向くと紫陽花色の光に目を瞑った。
瞬きをして光に慣らしていくと柔らかく細められたルビーのような瞳と目が合った。
「光に慣れたみたいね。」
うふふっと微笑む淡い紫色の髪の少女は赤紫から紫、青紫と色がゆらゆらと変わるランタンを手にしゃがんで目線を合わせてくれていた。
「…あ、はっはい。」
少し裏返った声に顔を熱くなるのを感じながらゆっくり立ち上がり、改めて少女の姿に目をやるとさっきとは違う意味で頭が混乱した。
制服のような服に不思議なランタン、赤い瞳、薄紫の髪、その間から出ている人ではない長い耳。
「…ところで、君はそれをどこで手に入れたのかな?」
先ほどの優しい口調からどこかとげのある言葉。
怪しく光る瞳とあった。
内容を変えました。
今後は更新予定日をあとがきに残していこうと思いますので、ご参考くださいませ。
次回の更新予定は10月28日です。