ドロップ
缶に入ったドロップをもらった。
きらきら輝く、綺麗なドロップ。
一粒口に入れたら、信じられないくらいフルーティーで、幸せな味がした。
赤、緑、黄色、紫、ピンク、オレンジ、水色、白、透明。
全部味が違って、食べるたびに違う感動をくれた。
こんなにおいしいキャンディがあるんだと、大喜びして。
毎日一粒づつ、大切に食べる。
日替わりで楽しむ、15分間。
幸せな、15分。
宿題を終えた後の、お楽しみにした。
毎日幸せに大切に食べてきたキャンディ。
だんだん数が、減ってきた。
毎日の幸せを、二日に一度にする。
だって、なくなってしまうのは、悲しいから。
大丈夫、まだ半分以上残っているから。
だんだん数が、減ってきた。
二日に一度の幸せを、三日に一度にする。
だって、なくなってしまうのは、悲しいから。
大丈夫、まだ半分くらい残っているから。
だんだん数が、減ってきた。
三日に一度の幸せを、一週間に一度にする。
だって、なくなってしまうのは、悲しいから。
大丈夫、まだ半分以上残っているから。
一週間後。
缶を振ると、音がしない。
中で、キャンディが、固まってしまった。
取り出すことが、できない。
缶を、無我夢中で振り続ける。
何度も振っていると、ガコンゴトンという音と共に、固まっていたキャンディがばらばらになった。
缶のふたを空けて、中身を出そうと傾けると。
ばらばらに砕け散ったキャンディのかけらが、ザザッと出てきた。
あんなにきらきらしていた、宝石のようなキャンディが、白くにごって、色が混じって。
私は、なんと言うことをしてしまったんだろう。
手の平の上の、色の混じったかけらを口に入れると。
あんなにおいしかったキャンディなのに、味がばらけてしまって、おいしいけれど、悲しくなった。
半分のキャンディが、本当のおいしさをなくしてしまった。
キャンディに、申し訳なくて。
キャンディのよさを握りつぶしたのは、紛れもなく、私。
おいしいものを食べるなら、時期を見極めないと、だめなんだ。
おいしく食べてあげられる、時間を見極めなければいけないんだ。
「おいしく食べられるうちに、食べないといけないんだって!!」
冷蔵庫に、プリンがひとつ残ってたのよ。
プリンってさ、生ものだから、足が速いでしょ?
だからね、食べといてあげたんだってば。
「ほう、なるほど・・・?」
ヤバイ、娘の顔が、マジモードだ。
「味薄かったよ!!」
「嘘つけええええ!!!」
昨日並んで買ったという限定数100のプリン。
ついついおいしそうで、一口もらおうと思ったら、ついつい全部食べちゃって。
めっちゃおこられてる私がここに。
「何でちょうだいっていわないの!!!」
「ちょうだい!」
「食った後で言うな!!!」
だめだ、ゆるしてもらえそうにない。
明日の予定は、朝一プリン行列に並ぶことが決定した。