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『七行詩集』

七行詩 21.~39.

作者: s.h.n

在学中に始めたオリジナルコンテンツの七行詩(ななぎょうし)より、

21番~39番を掲載させていただきます。


卒業する年の11月から書き初め、

卒業までに書いた39番までを

「39(サンキュー)の詩」として一旦綴じました(笑)


『七行詩』



21.「雪月橋」


純粋なものがあるとすれば それは透明で


曇りなく晴れた 銀河を映す


空のようなものだろう


あの日僕は空だった すべて投げ出して


優しい目をして君の姿を


見ていることに気づいたんだ


(そして今 君を覆う夜闇へと溶け込んで)



22.「雪月橋」


欠けゆく月を 数えれば


虚ろな日々の 短いこと


満ちゆく月を 見つめれば


遠く 遠く 手を伸ばしてしまう


(翳りゆく月に 重ねれば


その御姿は 謎めいて


沈みゆく月ぞ 我が心ば知る)



23.


この本棚には 今まで夢中で集めたものが


駆け抜けた時が 眠っている


君の本棚を見れば 分かるだろうか


その教養は 如何にして得たのか


そのしなやかさは 如何にして育ったのか


そして 僕らの昔話も


片隅にでも 並べておいてはくれぬだろうか



24.


満ち溢れ 駆ける想いとは 裏腹に


向かい合いては ややもせば


空へ行きたがる風船を


この手に繋いでいるような


零れる浜辺の白砂(しらさご)


この手にとどめているような


そんな風にも 思えるのです



25.


常夜(とこよ)の如き暗闇が 貴方をも惑わせるのなら


私を残し お行きください


月隠(つごも)りの世を 渡り歩くのは


私だけで 十分でしょう


お情けは もうくださらずと よいのです


暗中 愛しき面影は 一層眩しく 貴方へと


導く光となるでしょうから



26.


夢とは 醒めゆく際に見るものでございます


霞み至り 過ぎし夢とぞ 知りながら


追い求めたは ()の面影


伝えるという事は 貴方の中に残すことです


ほこりに眠り 忘れ去るまで


貴方に贈った あの歌だけ


愛していては くれませんか



27.


髪を乾かすということは


さぞ大変なことでしょう


けれど もしも愛しきその髪が


涙に濡れることがあれば


ぬぐい取り 隠してしまうことはせず


それさえ ご自身とともに


櫛に()かし 愛でてあげて欲しいのです



『まみえては 心見せじと 忍ばれど


滲む衣手(ころもで) なほ美しき』


(お会いしては 心は見せまいと

貴方は隠そうとしますが

袖が涙で滲んでいることに気づき

それがいっそう美しく見えてしまいます)



28.「ロンリー・ロード・ホーム」


蝋燭を立てて灯りにした


僕は手紙を書こうとした


けれど筆は動かず 胸の奥へと沈んでいった


覗いてくれないか 君を想った心全てを


その顔が 声が浮かぶ度 君に許しを乞うんだ


もしも僕が明日 遠くへ行ってしまっても


いつものように 君のもとに帰るから、と



29.


徒を渡す この橋にも 雪が降り


川のほとりの 白く染まるのが見事です


水面に映る 月さえも さぞ美しい事でしょう


先を行く 心の端にも 陽は射して


いつか私が 形を無くせど


この雪のように 染み渡り


貴方の中に 花々と 緑の庭を作るでしょう



30.


通い路に ものの見事に 咲き誇り


十重(とえ)二十重(はたえ)に 咲き並ぶ様を


いつか貴方と 拝みとうございました


散りゆけど 約束されし 春の花は


来る年も必ず 咲くでしょう


そんな風に 消えない約束を


貴方の中にも 残しとうございました



31.


もしもこの 銀世界にて 出会(でくわ)せば


時の悪戯か 気まぐれか


正しく雪でも 降るようなこと


けれど 零度の静寂(しじま)が 見せる幻想は


ひと夜に伏して とけ去ると


われら共々 浮き世の川へと 流れ込み


最早 互いの姿など 見出せはしないでしょう



32.


この身には 過ぎたる名とぞ 知りながら


醜く生き永らえる様を 蔑んでください


泥の衣装を纏う太陽に


一体 何を照らせるというのでしょう


けれど 正しき愛の神は


何と美しい名を 貴方にお与えになったのか


そのお姿を照らし 包む光となれぬものか



33.


夏は貴方のためにあり 冬は私のためにある


昼は貴方を照らすため 夜は私を包むため


四季と 一日のめぐりの中で


全てを愛でられるように


それぞれは 正反対に生まれたのでしょう


そして 海が空の色を映すように


私達も 見つめ合い 変わってゆけるのです



34.


心から 奏でることは 祈りのよう


まだ この言葉に音楽はない


声にすれば (うた)は運ばれ


貴方の心に 響いてこそ


そこに音楽は生まれるのです


この胸に 湧き出る泉が 貴方をも


癒し 満たす日を 待ち焦がれて



35.


もしも私が 影だというなら


慕うお姿を 護ることは叶わず


付き纏う闇へと 成り下がるのか


もしも私が 光だというなら


いいえ、一本の ロウソクでした


ずっと待っていたのです 火を灯されるのを


貴方の道行きを 照らせる日を



36.


全ては 来るべき未来のため


今は別れを恐れないで、と


いつもと変わらぬ声で 包み込んでくれた


けれど どうしてかな


長い間 君の幸せを 願ってきたけど


時々 君の生きる理由さえ


壊してしまいたくなるんだ



37.


愛しい人 僕の首輪が 外れたとき


いったい僕が 何を選ぶのか


信じて待っては くれないだろうか


君が指輪を 投げ捨てたとき


床に跳ねるより 大きな音で


きっと心は 砕けてしまうから


優しい人 僕を信じてくれないか



38.


朝ぼらけ しんと張りつめ ()すまちに


出でて染めゆく 東雲(しののめ)の朱


透明な空に 昇りゆく陽は


雪解けの時を 知らせるように


光眩しく 降り注ぎ 遠い夢から覚まさせる


長い間 この夢を見たくて待っていたのに


時計も君も 僕を待ってはくれないのかい



『待てりとて この身堪えうる ものならば


めくる暦に はるひとぞこい』


(待つといって

もしもこの身が堪えられたなら

巡る暦、カレンダーをめくった先には

晴る日、春の日、人よ、恋よ、

私のもとに来てください。)



39.


日記代わりの落書きが 歌になり始めた頃


出会えたことは どの新聞にも 載ってない


僕たちだけが 知っているのは


とても素敵なことだよね


この期に及び 面倒くさがりな 君の代わりに


僕が歌にして 残しておくから


君は前だけを見て 進んで行けばいいんだよ




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