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第5話 司祭獲得?(ヒーラーゲット?)

 一方的な殺戮だった。


「これが減圧攻撃魔術と言うものです」

「魔術? 魔法では?」

「プロトコルの古い成り立ちなので魔術ですね。一般的には戦略魔術で大掛かりなトラップとして扱われます」


「古いのにそう言うトラップに使われるのが魔術っスか?」

「実際は魔法陣を地道に書いて、何日もかけ契約やら精霊の配置やらが必要で、チームで行います」

 え? お一人様で実施したっスよね?

 ツッコミそうなのを飲み下した。


「複数の魔法陣を地道に書く作業を魔法で省略してるんスか?」

「正解です」

「でも、その分の魔力も攻撃に回した方が良くないスか?」

 と言うかマジックオブジェクトで全滅させられたっスよね。

 絶対。


「まぁ、そこは一旦棚に上げさせてくださいませんか。後で、詳しく、教えます」

「はい」

 なんか、ちょっと威圧的なオーラを感じたので、素直に返事した。


「こうした小規模でも大量の魔力を消費します」

「でしょうねぇ」

「……」

「どうぞっス」

 なんだろう、相槌のつもりが微妙な空気になったので、続きを促す。


「中に人が居れば、急激な変化によってこの蟲達同様の急性的な熱中症、脱水症状、高山病、その他の機能障害を併発します。健康体でも保って数分で戦闘不能に陥れます。10分あれば死に至らせられるでしょう。もちろん限りなく0気圧に近づけることも可能です」

「? 熱中症に脱水症状? ヒートの所為ですか?」


「いえ、ヒートがなくてもなるのではないでしょうかね。高い山に登ると比較的に熱中症になりやすいのと同じ理由です。さて、威力の程は理解いただけたと思うので光もシャットアウトします。見ていて気持ちのいいものでもないので」


「ところで、一体どこでこんな虐殺広範囲魔術を?」


 結界内が見えなくなった。

 一方的過ぎる。デュオ・アームズの極め方の延長には違和感を感じる程に。

 英雄譚で語っていいものじゃない。こんなのは冒険者じゃない。

 根本的に生き残る為じゃなく殺戮する為の……。


「おや、バレましたかね? 別に隠し立てする気はないですが」

「こんなの冒険者が思いついて実行出来る様なシロモノじゃないって思っただけっス」

 素直な感想を述べてみた。便利だが、こんな悪手ひけらかしても何処吹く風の態度に更に違和感を感じた。


「コレの根本は対悪魔大戦戦術研究機関__自衛手段を主目的とした軍組織ですが__その思想を基にした魔法です」

「仕組みは面白いですが、覚える気にはなれないっスね」


「そうですか? しかしお陰で今回は短時間で片付きました」

「結果的にってヤツですよね?」

「一つ言わせて貰ってもよろしいでしょうか?」

 威圧的なオーラをまとった美しい鎧。

 超コワイ。


「道具とは使う側による意思で使われますよね」

「そうっスね」

「武器も道具です」

「一つ、ではないんスか?」

 一つ言わせてに即効ツッコンだら、威圧付きで返された。

 まじコワイ。


「説明が必要なのです。その説明の途中です。武器も道具ですね?」

 ちょっとした威圧感。一体何を理解させようというのか。しかしここは素直に頷かなければ先に進みそうもない。


「そう、ですね(・・・)

 改めて真面目に返す。

「道具とは目的達成の為の手段の一つまたは、手段の助力をするものです」

「……」

「力も手段の為の助力をする為の物です」

 意見を聞きたいのかこちらの反応を伺う態度に対して『どうぞ』のジェスチャーを返した。


「無力を嘆くかも知れない時のために私は手段の選択肢を増やしました」

「……」

「覚える覚えないは、貴方の自由です」

 肩をすくめて返事とした。


「でもその前に侮蔑を持って判断するのは間違いだと私は思います。要は目的さえ見失わずにブレずにいる事が重要だと言いたいのです。以上です」

「了解したっス」

 狂った思想の持ち主でなくて一安心と共に力の使い方に対して一歩引いて考えようと決意した。


「さて、巣も一緒に減圧環境下に入れる事ができたようです」

「そりゃ凄いっスね。思ったよりも稼げたっスね」

「巣の位置も分かっているので、必要最低限のみ回収して他の冒険者の実入りに分けましょうか」

「ごっそり刈り取らないんスか?」

 ガッポリ稼げるのに勿体無い。


「次の依頼もありますし、こんな回収だけに時間のかかる仕事。労力の割に独り占めに対するやっかみと逆恨みしか買いませんよ」

「経験者は語る。っスか?」

「そんなところです」


「なら、小ぶりのヤツでいいっスか」

「まぁ、それで得られる物も多いですし良いのではないですか?」

「そう言えば、奴らの卵って減圧でも死滅させられるんスかね?」

 卵は意外に丈夫な事を思い出し、聞いてみた。


「無理かと思います。減圧結界、解きますよ」

「え、卵残ってるとかヤバくないスか?」

「冒険者なら、大丈夫ですよ。直ぐに討伐隊を組織しなければいけない種ですし」


「なるほど。それより結界解かないんスか?」

「解きましたよ。向こう側の結界ですがね。中見てますか」

 光を通さない結界だけ解かれた。こちらに向かって蟲の亡骸が押し寄せてくるとこだった。


「うわわわわっ!!」

 結界で不自然に堰き止められ、巻き上がった埃も死骸もめまぐるしく向こう側がかき混ぜられ、直ぐに収まる。正直チビってしまいそうだった。

 寿命の縮まる思いの数が押し寄せてきたのだから。


「おさまりましたね。こちらも解きます」

「分かっていましたが、流石に多いスね」

「さ、コレとコレで良いでしょうか?」

 シュツルム先輩は、40㎝位の比較的綺麗な死骸を二つピックアップした。


「誰か、冒険者巻き込んでたりとかってないっスよね?」

「どんな生物も襲って食料にする蟻のいる近くをですか?」

「愚問でしたっスね」

「生存者がいた場合は結界に取り込まれた時に解りますから、人の形をした者、人の魂も引っかかりませんでしたよ」

「そんな事まで分かるんスか?」


「ええ。魔力は意思をのせてますし、知覚に特別なオプションをつけるイメージを組み込むんですよ」

「特別なオプション?」

「全てをいきなり教えても覚えられないでしょう? それは、またにしましょう」


「それ『も』っスよ」

「フフフ、そうですね。早く戻って次の依頼へ行きましょう」

「巣を見に行かなくても?」

「見に行ってる時間も無駄です。その間に折角動かない標的が孵ってしまったら面倒なことになる可能性がありますからね」

「そうっスね。急いで戻るっス」


 ◆


 地下下水道を急いで抜け、ギルドへとたどり着く。

 換金を依頼し、ピック・アーミーの巣の情報を伝えると直ぐに討伐隊が編成された。そうでなくともピック・アーミーは危険種でありながら、その利用先は多岐に渡る。


 硬い甲殻を始め、単眼と複眼は使い魔としての簡易ゴーレムの目、翅や鎌は魔合器合成素材としてもそのまま流用パーツとしても重宝される。


 内臓も魔力が蓄えられた肝臓に似た器官は万能薬の素材に。フェロモンにいたってはレシピの公開されてない惚れ薬の素材になるとの噂もある。捨てるとこはないと言っても過言ではない。


 従って、他の生息している魔物に食われてしまう前に、回収しようと冒険者がこぞって討伐・回収に手を挙げる。

 卵の始末の心配はやはり杞憂だった。


 俺達は次の依頼へ直ぐに旅立つ支度にかかる。

 シュツルム先輩が保険のための依頼を出していると言って、手続きしに行った。


 その間に換金結果を受け取り、掲示板を眺めながら思案する。

 次の依頼の気になる内容は悪霊祓い。期限は引き受けてから2日以内。


 プリーストやクレリックならターンアンデッドで一発解決だが。なぜプリーストの居ないパーティーでシュツルム先輩がコレを引き受けたのか。


 まぁ、俺に取っては修行になる。それには文句はない。しかし目的が問題になってくる。恐らくは最初からデュオ・アームズの人材確保が目的なのだろう。


 推測の域は出ないが黒幕は対悪魔対戦戦術研究機関とか言う組織。

 この先、勧誘された時に納得の行かない目的なら断れば良い。


「お待たせしました。こちらはプリーストのヴァレンティナさんで、次の依頼の同行者です」

 シュツルム先輩が戻って来た。何やら新メンバーの紹介もしてくれる。


 俺の時には来なかった癖に上級者だと直ぐに捕まるんだな……悔しくなんかないぞ。ぼっちでも問題なく依頼遂行出来てたんだ。


「シュツルム先輩、お帰りなさい。はじめまして、アリフレット・スニーフ・ネットハーツです。アリュフとお呼びください。クラスはデュオ・アームズです」

 まずは、シュツルム先輩に一言。そして、流れる様に自己紹介と冒険者流の軽い会釈。


「はじめまして、聖デコグリフ六神一体が第五神・恋愛の神プリシェラに仕えるヴァレンティナ・カガミ見習い神官です」

 ヴァレンティナさんは左手でスカートの裾を少し上げ右手を胸に宮廷式の会釈をした。育ちの良さが出てる。ミドルネームはないのにどこかに仕えてもいるのだろうか。


 メイドでプリーストか? メイドでプリーストな の か!?


 灰色の生地のドレスに純白のエプロンドレス。その上に神官章の入ったボタンの白いポンチョ。ダークグレイのブーツ。


 俺よりお給金良さげな衣装ですね。

 何これ悔しくなんかないんだからね。


「あ、えーと……」

「? どうかされましたか?」

 冒険者の大半がお宝の山(ピック・アーミー)を回収する為に支度をしている中、本気で気付かなかった事を彼女が指摘する。


「その、とても言いにくいのですが、い、一度着替えとお風呂に入る事をお勧めします」

 ヴァレンティナさんは途中から口と鼻を抑えて言う。我慢させてしまったらしい。

 本当に済まないと思う。


「あ、そう言えば、汚水は被らずに済んだんスけど、魔獣の体液を避け損ねたんスよね」

「アリュフ、まだ少し時間はあります。温泉に浸かってくると良いです」

「あ、あぁ、はい。そう言えば、シュツルム先輩は匂わないっスね」


「返り血や飛沫を浴びる様な体捌きを私がするわけがないです」

 なにそれ、ズルい。そう言うのも教えておいてよ。

「それに、いざとなればクリーニング・メンテナンスも使えます」

 シュツルム先輩は独り言の様に呟いた。


「それ、教えてくださいっスよ」

「そのうちに。今は温泉を楽しむといいです」

「先輩、一緒に行きましょう」

「遠慮します」

 即答された。地味に傷つく。そりゃ男同士よか可愛い女神官と一緒にいた方が良いよね。


 そこでシュツルム先輩は何事か首を傾げ、爆弾発言。

「アリュフ、何か勘違いしてる様ですが、私は女ですよ」


 ーー思考フリーズーー


 ……はい? そんな素振り、どっこも見せていただけませんでしたっスよ。え? ちょっと? 待て待て待て待て、男女二人旅だったってことか!? 顔知らないけど。いや、普通ないでしょ!? 俺の出逢いは既に始まってたって事っスか!? 顔見てないけど! いや、待て、慎重にだ! 冷静になれ! そんな美味しい話がある訳がない! 今までどんだけ美味しいシチュエーションに苦渋を舐めさせられ煮え湯を飲まさせられてきたか私は忘れない私は忘れはしまいよっ!!


 ーーここまで0.2秒ーー


 一瞬の思考停止の後のフル回転で思考が駆け巡った。すぐその後に腰の相棒がブルルルと振動した。

 ちょっとジゼルさん、ジゼルさんも何気に意見を言いたいのですか?

 ちょっと衆人環視の中であなたは出したくないんですけどね。


 その思考の後ブルルル、ブルルルと信じられない振動速度で何かを訴えかける。

 ちょっと待って、ジゼルさんここで抜刀とかあり得ないからやめて。一定の振動は確認しろと要求する様に止まらない。ヤバい。変な汗が吹き出てくる。そこ、『ちょっと』が多過ぎとかツッコマない!と誰ともなしにツッコンだ。


「アリュフ、ジゼルが何か訴えてますね。少し見せてくれませんか?」

 あー。なんで言っちゃうかな、バレちゃうじゃん。もうヤケだ!

「チョット此処ジャ、確認シニクイカナ。人目ノナイ処デ確認シマショウカ」


「私も行こう。匂いだけ消してやる」

「なになに? 何でアリュフさん、手が凄い勢いで震えてるのですか?」

 シュツルム先輩に手を引かれ外に歩き出しながら脱臭魔法をかけられる。ホントこの人、魔力底無しだな。


 とにかく外に出て拠点にしてる馬小屋へ向かう。適当に裏路地へ入り鞘から相棒ジゼルさんを10cmだけ抜くと超古代文字が浮かび上がる。

「わ! これ何ですか? きれーい! 貸して見せてください」


「ヴァレンティナさん、ちょっと後にしてくれないっスか? シュツルム先輩」

 浮かび上がったそれをシュツルム先輩が読んだ。

「失礼しますよ、どれどれ、『主人、私の可愛い、あまりするな、イジメる。鎧の』」

「んー?」


 ポク、ポク、ポク、ちーん


「『私の可愛い主人をあまりイジメるな。鎧の』」

 誰となしに誰か呟いた。


「失敬な! イジメてなどいないぞ! ジゼル!」

「あ、シュツルム先輩、ストップ。確かめたいことがあるっス。このまま話進めるとややこしくなるかもなので」


 ジゼルさんひょっとして……。

 ゴクリと唾を飲み込んでから『ちょっと質問。受けてくれる? イエスなら1回振動。ノーなら2回振動』と相棒ジゼル指定で思ってみる。


 ブルルル


 思考読まれてるー!?


 ブルルル


 ……あ、質問終わりで。ナニコレ、チョー恥ずかしい。いつからだ。いやそんな事もうどうでもいい。俺の心がいつのまにか自分の武器にダダ漏れとか恥ずかしい! 武器だけど。なんか女性名名乗ってるだけに恥ずかしい!


「アリュフ? 大丈夫か? まさかとは思うがジゼルと心が通じてるのか?」

 浮かんでた文字が変わる。その瞬間に雷もかくやと思う速さで納刀し腰に帯剣する。

「だーいじょーぶ、問題ない、何も問題は無かった。いいっスね?」


「そうか。……ジゼルが言うには幻惑一体化時の疑似神経で脳と直結してるのだそうだ」

 その場で崩れ落ち、膝をつき、身悶える。

 見えてたよ! そう言えばこの人の動体視力異常に高いんだった! 今の超古代語そう言う意味かー。


「ジゼルって、その武器生きてるんですね。凄いです」

 居たのか……って唯一まともに見える女性に酷い言い草かも知れないが。

「ま、まぁね。ん? 今さっきハイパー・エンシェント解読したんスか?」

「え? しましたよ?」


「マジか!?」

「と言うか、プリシェラ様から恩恵を受けるための神語(ゴッドグリフ)に近かったのでそれ程苦労なく読めますよ?」

「「なんですと(ですって)!?」」

 黙って聞いていたシュツルム先輩も同時に声をあげた。

読んで下さり、ありがとうございます。


活動報告は書いておりませんが、ペースで少々悩んでおります。

文字数落としてペースを上げていこうかと考えております。

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