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第4話 結界魔術

 楽しんで書かせてもらってます。

 読んでくださると嬉しいです。

「アリュフさん、最大助力(フルアシスト)、いきますよ。”インスピレーション・シェアリング”、”ミラージュ・レティクライズ”、”マジック・ダガー"、"リピート・マジック・コール・マジック・ダガー”」

 連続無詠唱!? どうなってんだこの人の頭ん中と魔力は。相棒の自称ジゼルにマジック・ダガーが次々と形成され、視界内の蟻の額にターゲットマーカーが出現する。


「わわわ、これどうなってるんスか!?」

「安心してください。一時的に目標表示を目の中に見える様にしただけです。ジゼル。補正頼みましたよ」

 相棒に浮かび上がっている文字がまた変わる。大方『心得た』とか『承知』と言った内容だろう。


「そう言うことなら」

 相棒がカタカタと震える。いつもの攻撃挙動の催促だ。もう一振りの魔合器・片手剣型も抜く。こちらは白磁色で素の魔合器の色だ。

 タッチアップして刃先を整える。と、二振目が朱色の輝きを帯びた。初めての起動は、相棒が片方に勝手にぶつかり刃先を整えたんだったと思う。それからこうしてる。

 鍛冶屋に頼んで同じフォルムにした青に染まった剣と朱に染まった剣。その先に次々と出来るマジック・ダガー計8本。


「ブースト・マルチ・スローイング!」

 技名を宣言したのは、格好いいと思ってるからだ! 特に発動条件とかの意味はない!

 全身で横回転、縦回転し、片手2本ずつダガーに与えた遠心力で放っていく。吸い込まれる様に天井と右の壁の前列、蟻4体、床と左の壁の前列、蟻4体の触覚切り落とす。同士討ちをしていた一体にトドメをさしていた集団が混乱に陥り、更にその場で同士討ちを始める。後列の蟻が容易に進めなくなった。これで生存率が上がり、報酬も回収しやすくなる。


「お見事です! しかし、よく同士討ちするようになるトコを知ってましたね」

「図書館で調べた事があったんスよ。ピック・アーミーもその時載ってて知りました。虫ってやつは、匂い(フェロモン)で感情から仲間まで識別してるって」

「フェロモン?」


「ええ。彼等、蜂からの魔性進化体らしいっスよ。フェロモンで軍隊行動を可能にしてるとか。だから触覚からの情報を断ち切ってやれば、知能が低いのでああなったと」

「なるほど。ダガーはもういいね。次は混乱してるやつ以外のトドメを刺して行きましょう」

「了解っス!」


「……」

 言った後にじっと二振目を見てるシュツルムさん。

「どうかしたっスか?」

「いえ、後ほど伺います。それよりここは、デュオ・アームズ特有の戦い方で行きましょうか」

「特有……っスか?」

「盾代わりのハンマーと薙ぎ払い用のブレードです」

 そう言って、シュツルムさんは松明を左手に持った。火をつけるのかと思ったがそのままマジック・シールド改めマジック・オブジェクトの発動ワードだけ唱える。


 なんだか魔法戦士のお手本って感じのシュツルムさんは、無詠唱やら発動ワードさえ無しを平気でやってのける。今までの戦闘魔法の持つイメージをことごとく崩してくれる。

 戦闘時に前衛がチンタラ詠唱なんかしてたら即死ぬけど。

 だから、なるほどと頷ける。

 器用貧乏などと冷やかされて来たけど、とんでも無い職業適性持ってたんだなと今更気付かされた。


「”ハンマー・ヘッド・フレキシブル・ロング”」


 マジック・オブジェクトがあれば、魔合器いらなく無いかなあ? などとつい考えた。

 二振り持つ意味もなかったか。

 双剣でカッコ良く戦って活躍できると思った時期がありました。

 思い描いていたのと大分違う現実にため息が出る。


「どうしました? インスピレーションを共有してるのですよ。内容は分からずとも落ち込み気味の感情ですね」

 シュツルムさんは、蟲達を見据えたままこちらの気持ちを指摘した。

「あ、いや、なんかシュツルムさんのやってる事と自分の実力差にちょっと打ちひしがれただけですので気にしないでください」


「この程度直ぐに出来ますよ。技術を1つ1つ磨いて行けば必ず出来ます。現に貴方はマジック・シールドの改造をこなしたじゃありませんか」

「でも、差がありすぎやしません?」

「アリュフさん、まだ、初日ですよ?」

「そうっスね」

「この旅は、貴方と旅すると決めた瞬間からデュオ・アームズを育てると言う意味が発生してるのです。しっかりしてください」

 シュツルムさんはこちらを向いて言う。

 今度は一緒に戦ってくれるのは嬉しい。

 けれど、メンタル的にスパルタにも程があるっス。

 もう少し緩やかにいかないっスかね?


「”マジック・スォード”、"シェアリング・オブ・フィール”」

 ん? 感覚共有? 先の説教でこのながれは、強制的に覚えさせると言う一体感覚教習(ユニゾンレクチャー)


「さぁ、同じ武器を用意してください。行きますよ。動きを出来るだけ真似てください」

「りょ、了解っス。そっちの可動式オブジェクトの作りを見せてくださいっス」

 シュツルムさんの松明の延長にかけられたオブジェクトを見る。雪かきスコップと同じく柄の見えない不思議な造りのハンマーヘッドだった。と言うか松明に直角に存在する直方体だ。


「単なるスタンパーですよ」

 そう言ってシュツルムさんは松明をすごい速さで振るう。その勢いでハンマーヘッドが壁に叩きつけられる。50×50×100/㎝の直方体が縦に細長い100㎝×50㎝の長方形の衝撃痕を壁に着ける。

 煉瓦の壁にはヒビ一つ入ってないが、風圧と衝撃は相当なものだった。


「これ自体に重さが皆無なので、速度で対処します。まぁ虫にはお似合いの叩き武器ですね」

 なんと言うサディスティックな武器か。

 触りたくない感がヒシヒシと伝わるっス。

 いや、めちゃくちゃ綺麗な鎧の意味がわかったっス。

 コレ(スタンパー)、隣に人がいたら使っちゃダメなヤツだ。

 絶対飛び散る。


「えーと、"我を護り、我が敵を屠れ、其は盾をも通す衝撃の破壊者 ハンマーヘッド・フレキシブル・ロング"」

 ほぼ、同じものが作成出来たようだ。

「一発でほぼ同じモノが作れるだけでも大した才能です。自信を持ってください」

 どうやらシュツルムさんは、褒めて伸ばすタイプらしい。


「インスピレーションを共有していたお蔭っス」

「アレだけで出来ましたか。コツは掴めた様ですね。では実技です」

「あ、ハイハイ! ”我を護り、我が敵を屠れ、其は断罪の(ツルギ) マジック・スォード" お待たせっス! これからは師匠っスね」

「師匠だなんておこがましいです。先輩として持てる技術を共有しているだけですよ」


「では、シュツルム先輩とお呼びするっス」

「少しこそばゆいですね」

 シュツルム先輩は笑って言う気配で顔をこちらに向けた。直後、前を見据えて緊迫した空気を放ってくる。次の瞬間、前に跳ねる。


 共有された感覚を追いかけて身体を動かす。微妙に位置をずらして。

 スタンプ。直方体(スタンプ)の上にに着地したかと思うとすぐに前に飛び出し、宙返り。元の姿勢に戻ると同時に薙ぎ払い。ついでに何やら薙ぎ払ったときに針をばら撒いてる。

 ソレを軽やかに表現すると、こう。

 スタンプ。宙返り薙ぎ払い。スタンプ、スタンプ、薙ぎ払い。スタンプ、スタンプ、薙ぎ払い、ピック・アーミー前列に接触、1匹の首を切り落とし一気に戻る。


 こんな感じ。真似て、スタンプを足代わりに進む。しかし、俺はまだ半分しか進んでない。シュツルム先輩は、その隣の比較的汚れの少ない床にスタンプを設置しその上に着地した。

 いやいや、無理だって、そんな動き。

 ほぼ助走なしの5m跳躍とか魔法でブーストしなきゃ出来るわけが無い。


「シュツルム先輩、さっきかけた重量軽減とステート・ブーストまだ続いてマスノ?」

「いや、あれは、あえて唱えてみせただけです。普段はオートスペルです」

「いやいやいや、そんなの無理っショ!」

「まぁまぁ、器用貧乏とバカにされる我々が獲得出来て唯一魔法使いに勝てるかもしれない基礎魔法です。獲得してください」


「まさか、そんなものまで覚えられるなんて誰も教えてくれなかったんスけど!?」

「それはそうですよ。ハイスピード・スワップの習得条件が厳しすぎますし、私が開発した魔導技術(マギノニクス)ですから」

「はっ!?」

 習得条件? 講義受けた上で実技訓練受ければ習得できるモノじゃないのかよ!


「まだ冒険者ギルドの獲得スキル構築手順に登録して2週間しか経ってません。何より講師がいませんからね」

「はあぁっ!?」

「そんな大層なことではないから、すぐにあなたにもできますよ。コツさえ覚えられれば簡単です」

「……貴方みたいな凄い人、見たことない人間には、そんな言葉すぐには信じられないんスけど」

「既にコツも一回掴んだ。でしょう?」

「ま、それの条件てヤツも教えてもらえるんスよね?」

「さっき言った通り条件からですけどね。因みにヒントはさっき与えたのと一緒です。考えて欲しいですけどね」


「んんんんん?」

「すぐには出来なくても大丈夫ですから。それよりもタイムアップです。さっさと片付けますよ」

 近寄って来た虫をスォードで軽く払う様に切り、再びジャンプして後ろへ下がる。さっきの場所までの残っている虫をほぼ全滅させた。


「さ、これで後ろの憂いは無くなりました。思い切りこれでやれます」

「シュツルム先輩、意外と荒々しいんスね」

「これ位は、デュオ・アームズなら嗜みですよ」

「オートスペルもスか?」

「それの登録はごく最近なので他の人で使えたとしても、ほぼ独自スペルしかいませんよ」

「え、それじゃ、オートスペルの体系化って、初なんスよね? 世に出しちゃって、大丈夫なんスか?」


「高位の魔法使いなら多少は使ってますよ。彼らには自動化のメリットがない人ばかりですけどね」

「使えるのに勿体無いですね」

「魔力を常時、使いっぱなしの方が勿体無いと考えるでしょうから」

「ああ、確かにそうスね」

「それに魔力は消費されるのが常識ですからね」


「え? どう言う意味スか?」

「それもまた、そのうち話しますよ。今は感覚をよく捉えて覚えてください」

 そのうちとは、今話せないことからは核心だっったのだろうか? 『消費される常識』ではないところにオートスペルにつながる何かがあると言うことだろうか。

 そして今はそれを知るための準備期間と考えて良さそうだ。直ぐに全ては教えてくれそうにないが。


「仕上げの準備をしましょうか」

「どうするんスか?」

「ちまちまやってたのは、どうしても確保したい場所があったからです。インスピレーションは見えて居たと思っているのですが」

「『ガスの膨張』スか?」


「ええ、まさかこんなに相手しなければいけなくなるとは想定外でしたけどね。これを使えばなんとかなるでしょう。それと無差別範囲攻撃になるので覚えたら人相手にしてはいけませんよ」

「それは、どう言うことスか? さっき通路の各所に投げてた小さな針とかでやるんスか?」

 あの素早い動きの中で確かにインスピレーションが流れて来た。スォードを振るいながら小さな針が通路の各所にばらまかれて居た。結界を作成するようだが何の変哲も無いマジック・オブジェクトのかけらから作られた針だ。


「ふふ。よしよし、ちゃんと見えていましたね。こうするんです」


 "Making circle on magic Marker,"

 "Auto shape wall to 1,2,17 to 20 marker circle"

 "Zero Gravity to 3 to 9 Marker circle"

 "Flexible mover to 5 to 20 Marker circle"

 "Heat from marker circle 10 to 16, Cool after 5 seconds"


 インスピレーション・シェアを介して3Dマップと魔法陣の展開式が無詠唱と共に具体的に流れて来た。さっき見せてくれなかったのに。

 しかし、その仕組みが理解できた。

「そうか、動く魔法の壁で空気の容積を強制的に膨張させるのか!」

「その通りです。膨張魔法も基本ありますが、割と効果時間と範囲のため魔力に問題があります」

「単体魔法よりいっぺんにあの蟻の行列にかけられると言うことスか」

 ざっと見積もっても最前列迄は23~25m。そっから曲がり角まで50m。同士討ちの最後の団子が終息しつつある。50㎝の凶悪な蟻どもをいちいち単体魔法で相手して居ては確実にヤバイのはこちらだ。


「まぁ、だいたいアリュフさんの言う通りですよ。シャボン玉みたいに彼らを取り込みながら移動する障壁さえあれば魔力コストからは格段に安上がりですからね」

「なるほど。確かにまとめて倒せなくとも弱らせられれば、後が楽スね」

「いえ、何を仰いますか。ちゃんと倒しますよ。一つ一つは取るに足らない魔法です。しかし、ちゃんと理解して使えば爆裂魔法並の結果は得られます。しかも安全安心確実に」


「でも、それなら爆裂魔法の方が安上がりな魔力なのではないですか?」

「ま、見れば分かります。"膨張開始"」

「これは……開始時の結界内を無重力と熱で膨張しやすくした上で結界の先を通路に沿って下がらせて?」

 蟲達が宙に浮き、無重力に翻弄されている。 足が壁などに引っかかったモノはしがみついて無重力に屈すること無く凌いでいた。


「そうです。まずは80倍ほどの体積にします。排水路と途中合流する通路や穴も止めて単純計算で約0.0125気圧に10秒でします」

 しかし蟲達は普通に蠢めいている。生命力だけは定評のある奴らだ。減圧程度じゃビクともしないのかもしれない。


「あんまり効いてそうに見えない上に地味スね」

「殺傷に地味も派手も関係ないですよ。まず弱いものの腹が破れます」

 10cmに満たない蟲達の腹が次々に破裂した。異様な光景だった。

 蒸されて、しがみついていた蟲も温度に弱い種は壁に力なく、足だけが引っかかって浮いている。

「ここまで、耐えられた種達は体液が絞り出されます。それらは脱水症状となり平衡感覚を脅かされてるはずです」

 蟲達の体から滴り出た体液が煙となって蒸発していく。減圧環境下の凄まじさを物語っていた。それと同時に激しくその場でもがき出す。そして直ぐに動きが鈍くなっていった。


 ◆


 これが、相棒ジゼルの性能らしいっス。なんだか凄いっスね。今までの実力の半分は相棒のおかげってこと。そのことにショックを隠せないっスよ。

 ______________________

 個体名:Giselle/種別:シミター

 素材 ベース:Molybdän

 攻撃力:普通の魔合器と変わらず

 耐久性:B(通常魔合器相当)

 本体成長性能:C(通常魔合器相当)

 意識成長性能:S(放出系魔法は覚える気がない)

 [特殊アビリティ]

 ・個体名を名乗り、的確に攻撃に助力するほどの意識を持っている。

  ※かつて知的生命体だったのか、それとも複製でベースとなった意識体があったのか不明。

 ・基本使用言語:ハイパー・エンシェント・ニーモニック

 ・使用許可者(主人)認証(遺伝情報、網膜、声紋、魔力紋)能力

  ※使用者資格条件システム、仮認証システムあり。

 ・古代魔導技術行使

 [使用可能古代魔導技術]

  【空間知覚系】

   《空間把握:常時》《空間分析:常時》《目標並列捕捉》

  【魔素操作系】

   《魔素干渉》《引力発生》《斥力発生※非放出魔法》

   《他物配下化(条件:接触 制限時間:10分)》

最後までお付き合い頂きありあとうございます。

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