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第3話 相棒 ”ジゼル” の存在発覚

 お待ちしていた方、お待たせしました。

 やっと主人公の性格に繋がる喋り方が定まってきました。


 お楽しみ下さい。


 報酬の獲物はモンスター全般だ。当然、脅威度が高いもの程に高値がつく。巣は見つけ出しただけでもその情報で報酬が貰える。


 何度も言うが、ドワーフが創り出したこの場所には生態系が存在する。冒険者達も増えすぎない様に『駆除し』に入って来る。それも既にこの生態系に組み込まれていると言っても過言では無い。


 俺がココへ足を踏み入れることになって3ヶ月。マップが出来、そこにおぞましき生物達の大まかな行動が重ねられる。

 何とな~く、入って来る冒険者のテリトリーを把握し、書き込んだ。更に何とな~く徒党を組んだりしてる奴ら(何故かパーティーを組まない変な連中だ)のトコに足を踏み入れると脅され追い出された。


 それらを踏まえて考えた。各テリトリーに多少踏み込んだとして、狩ってしまったとしても残骸は他生物の馳走となり半日もすればなくなる。

 いつもはもう少しのんびり熟す仕事だ。しかし、旅に出なくちゃいけない。となればこの『人が居て良いわけがない場所』の脱出を図るのが得策だろう。


 シュツルムさんが実力を垣間見せた。今度は、俺の(ターン)。次に取るべき行動は、『テリトリーに入っていないここで狩る』を実行する事。

 持って来て居た解体用ナイフを取り出し、マジックシールドを唱える。解体用ナイフの延長線上30cm先にマジックシールドで縦50×横80/cmの少し湾曲した雪かきスコップ状の板を形成。この地下都市の上に(ソビ)えるエーゼルバニア山脈の北側は海風に吹かれて大雪が降る。冬場は雪掻きも仕事に上る。そんなスコップをモデルにしたのだ。


 このマジックシールドの形状改造スペルはなんて便利なんだろうか。物理的に接触可能なオブジェクトを一時的に作れる特性をシールドと言う名前で概念が縛られている所為だな。もはやシールドと言うよりマジック・オブジェクトと呼ぶべきだ。


「何をなさるんです?」

「まぁ、見ててくださいっス」

 ナイフに起点固定した柄のないマジック・スコップで水路に流れていく油の残骸を通路の来た方向へ伸ばす。10数mほど塗りたくる様に。


 伸ばしながら所々松明で少し炙る。直ぐに小さな虫が集り始めた。

 さらに時間が経つと大物が現れる。適当にその中の金にするには早すぎる奴にトドメをくれて放置する。


「なるほど、動き回るより撒き餌で誘き寄せるのですね」

「ま、ちょいと危険スけどね。ヤツラが来てからが本番ス」

「ヤツラ?」

「殲滅すべき対象スよ。魔法はどれ位撃てるっスか?」

「おや、アテにしてるのですか?」

「何せ数が数ス。数百相手にしなきゃいけないかもなんスよ」

「おやおや、この後の依頼に支障がでそうな数ですね」

「何が餌にかかるか、わかんないっスから」


 実際コレは命に関わる。それでもシュツルムさんは、次の依頼に行く前提の返事をしてくれた。本当に頼もしい。

 とは言え教えて貰った技術を使った『トッテオキ』の一つや二つお披露目しなきゃ同行者として認めてもらえないだろう。


 やっと30cm級のお出ましだ。捕食しやすい無害に近い虫__とは言えこんな場所に棲息する奴がただ食われる為に多産多死な生態系を形成するわけがない。底意地の悪さを具現化した何かを持ち合わせてるものだ。毒とか寄生虫の共存とか色々だ__なんかを食べても生きてられる悪食な溝鼠どもだ。

 此奴らはまだ予兆。魔素に充てられて魔獣化した奴がそろそろ現れるだろう。


「さて、そろそろさっき教えて貰ったヤツでアレンジしたのをお披露目っス」

 刃渡り30㎝弱、刃幅8㎝の短刀を抜き放ち、構える。片刃の青い刀身。峰には朱色の読めない特殊文字。(つば)の取り付けのロックにもなっている円形の磨き上げられた装飾。陶磁器の様な輝きを放つ異形の刀。

「行くぜ、相棒」

 囁きかけると刀身が淡く光を放ち出す。


「へぇ、インテリジェンスですか? お名前は?」

「え? いん? なんて?」

 刀身に浮き上がった文字が変わったが、見ていなかった。

「ジ ……ゼル。なるほど。ジゼルですね」

「え?」

 自分の抜いた短刀を見た。読めない超古代文字(ハイパー・エンシェント)が峰に沿って白く浮かび上がっている。勝手に魔力を使わないで欲しい。


「シュツルムさん、これ読めるんスか?」

「ハイパー・エンシェントですが何とか読めます。詳細な部分などは流石に怪しいですが」

「へ~、この魔合器、ジゼルなんて名乗ってたのか」

「は? 今、なんと?」

「え。『この魔合器、ジゼルなんて名乗ってたのか』っス」

「これ、魔合器なんですか!?」

「え、えぇ、そっス」

「一体何を素材に選んだんですか?」

「え? 魔合器ってこんなモンじゃないんスか?」

 シュツルムさんがさっき使っていた刃渡り10㎝のナイフを出して見せてくれた。一見して果物ナイフに生物的な異形のアートを纏った様なデザインだ。威力増幅特化の魔法陣が刃に芸術的に刻印されている。暴走前提の『物騒ここに極まれり』だ。こんなモノよく使いこなすなぁ。


「可愛らしいサイズなのに凶悪そうなフォルムの魔合器っスねぇ」

 ……おや?使用者から勝手に魔力を吸い取ったり、機嫌損ねたりする魔力の感情の色がない。うちの子はこんなにヤル気満々のコンディションブルーを示しているのに。


「あれ? ちょっと持たせて貰っても良いっスかね」

「どうぞ」

「お借りするっス」

 左手で持つ。『手に一体化する』相棒の様な反応がない。誰でも持てる初期の魔合器と同じだ。


 ちょっと待って欲しい。2振目の方はイマイチ起動の遅い寝坊助さんだが、両方とも戦闘時の使い勝手はまるで自分の手足のように扱えた。その上、次にどう動くといいとか、なんとな~く主張して来る。

 機嫌を損ねると力を貸してくれないどころか重くなるので仕事にならなくなる。そう言った意味で1振目はだいぶ問題児だ。全ての魔合器にはこんな機能があるとばかり思っていたのだ。

 いんてりじぇんすそーど? 聞いたこともございません。合成時に特別な素材なんて……何、足したっけ?


「パーティーの頃からジゼルを使ってましたか?」

「え? そう言えばあの頃は全然だったのですよね。色も白磁色で今みたいにバラエティに変わらないし……」

 言ってるそばから鮮やかだった青がみるみる群青へ変わり更にどす黒い青紫に変わって行く。

「お返しするっス」


 慌てて左手のナイフを返す。完全に黒くなるのを防いだ。嫉妬だろうか? 感情を持ち合わせているとなんとなく思っていたが、知恵の魔導器(インテリジェンス・ソード)化の時期を思い出してみる。

 合成時、合成時……鉱石とポーションとなんかの宝石に遺物の欠片。いや、遺物の欠片を合成炉に入れてからあがって来た時は変わってなかったし……。 


「もう一振りもインテリジェンスですか?」

「えぇ、多分」

「インテリソードを二振りとは贅沢ですね。っと後で二振目も見せてください。大群が来ましたよ」

「あぁ、そう言えばっスね」

「半分やれば良いですか?」

「いえ、2、3匹傷つけた後、ここの狭くなってる通路までダッシュで後退っス。狭い通路の出口付近で迎撃するのがベストっス」

「ふむ。しかしそれだと時間がかかるのでは?」

「かかるっスよ。一気に倒せないので逃げながら倒していくっス」

「それではイマイチです。次の依頼の納期ギリギリになる危険性がありますね。フルアシストするので一気に片をつけましょう」

「でも一気にって、……来たっス」

 鉤爪を引っ掛けて移動する音、金属を軽く連続で打ち鳴らす様な擦過音。巨大化した昆虫系で間違いない。


「って? えええええ!?」

 忌み嫌われる者No.1の大黒油蟲かと思いきや、壁に天井に現れたのは大軍隊鎌蟻(ピック・アーミー)だった。カマキリみたいな前足の先端が金属製ピック並みの鋭さを持っている。尻には蜂の様な針、蟻、蜂特有の丈夫な顎。エビルトピア大陸からの外来種と言う話だ。獲物を生きたまま巣に持ち帰り体内をドロドロに溶かされチューチュー吸うとか言う話だ。生きて帰れた奴がいるのだろうか。噂でも恐ろしい。


「あれはピック・アーミー! おおよそこんなトコに居るはずのないヤツですね。でも大丈夫。思い切りやって構いません。次の依頼はなんとかします」

「了解っス! 我を守れ。刃と成り、我が意のままに敵意を(ホフ)れ。"マジック・ナイフ」

 相棒と呼んだ魔合器・片手剣型はジゼルと名乗った。今まで気付けなくてすまないと思うがハイパー・エンシェントで訴えられてもわかんねぇっつうの。

 そのジゼルにマジック・オブジェクトでナイフと呼ぶには大き目の15㎝の柄の無い刃を作成する。

「これは、良い。相棒を汚さずに済む」

 呟いた後、刀身の変化を観察する。嬉しいのか刀身が淡く白のオーラを放ち出した。汚れるのはやっぱり嫌いらしい。って、ちょっとコレ無駄に魔力出てってない?元々俺から奪った魔力だよね? 大事に使って欲しい。

 左手の平を前にかざし、片っ端から餌に尻針を打ち込むターゲットを見定めながら、次の呪文を唱える。


「万物の主よ、我が脳裏に天来妙想(タマワ)(タモ)う。”バトル・インスピレーション”」

 アレだ、弱点看破、現状打開策、必殺相乗効果を自分の分析処理能力向上に魔力で下駄履かせてみようと試みたのだ。高速処理で素晴らしい思いつきがあるかも知れない。今さっき作ったフルカスタム・マジックだ。と言っても感覚に下駄履かせる魔力の使い方を教えて貰わなければ思いつかなかった。

 発動成功率は半々、且つ俺がその時に欲しい情報に突き当たる確率も見えてない博打みたいな魔法だけど、自分の頭ん中にかける魔法だから魔力消費が異様に少なくて良い。なら、かけておくのもアリだろうと思った次第だ。もっとも、発動したかどうかイマイチ判らない。きっちり魔力は消費されているが。


「万物の主よ、我が魂の余力と同じ物をひととき与え給え。"マジック・リカバリー"」

 コレもさっき思いついた魔法。カスタマイズが何処まで効くか実験してみたが、コレは発動しなかった。簡単にチート出来るほど世の中甘くはないらしい。実現は次の機会に回そう。


「とんでもない魔法を唱えますね。まだ貴方がその類を扱うには早いと思いますよ」

「ま、何は、ともあれ! ”ブースト・ショット・ターン"だ! 相棒!」

 自己満足だと思っていた「相棒」の呼びかけに魔力の流れが応えた。気がする。この時、俺はターゲットを見据えてた。だから気づかなかったが、刀身から浮いて光るハイパー・エンシェントが返事らしきものに一瞬変わる。ターゲットに一瞬背を見せ、向き直り終わったら刃を遠心力込みで投擲する。俺のユニーク・テクニックだ。

 このテクニックは基本的に大道芸の類で誰でも出来る。回転力に振り回されやすく的に当てるのは至難の技というだけのものだ。思えばジゼルが手にあったから出来たのだと思う。今回投げたのは、勿論マジック・ナイフだ。半透明の淡い光を放つナイフは回転しながら吸い込まれる様にターゲットにしたピック・アーミーの額の2本の触覚をサックリと切り取って壁に刺さった。


「キーッ」


 意外な程鳴いて、お怒りのご様子。頭を切り落とされても動く生命力を持っててもナイーブな場所だけに反応が激しい。だが、鳴いた直後、隣に居た仲間の蟻に尻針をいきなり刺した。それも奴らの弱点と思しき「胸」に打ち込んだ。これは、これでアタリを引いたらしい。


「流石、相棒! 次行くぞ。我を守れ。刃と成り、我が意のままに敵意を(ホフ)れ。”マジック・ダガー”」


 マジックナイフを新たに整形した。今度のは空気抵抗を考えて作られたスローイングダガーと同じ刃の形で細長いマジックナイフである。魔力も半分ほどに抑えられる。魔力量までカスタマイズに自由度があることもこれで解った。一石二鳥だ。ん? さっきの蟻の触覚切り落としも、形成し直しもバトル・インスピレーションの効果か? だとしたら凄い効果だ。

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 今回、あの黒いヤツをどうしても出したくなくて、もっと凶悪な魔獣を思いつき出しました。他にも忙しかったストレスの反動か思いついたものが多かったので、すべて入れてみました。

 ちょっと付け焼き刃感が否めない部分もありますが、冒険者の物語って想定外のことがよく起こりますよね。

次回も楽しみにしていただけると幸です。

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