第10話 肝試しミステリー
自衛手段ですので以下は気にせず、飛ばしてください。
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今話題の2CHRead無断転載問題、五分で出来るちょっと痛快な自己防衛対策のすゝめっ!
作者:MITT様よりお借りしました。
客間でのお茶の一時を楽しませて貰ったお礼をしてチップを置き、俺たちは再び幽霊探しに出る。時刻は宵の口を過ぎた頃。良い子は寝る時間。
「待て、アリュフ。ジゼルが何か言ってるぞ」
「え? あ、ホントだ」
「えっとー、どれどれー? 仮想敵を探知。探している目標ではないか? ですってー」
「え? ジゼルさん今回の件、分かるの?」
「重々、承知。ですってー」
そう言えば、俺の心を読んでるんだった。
「あ、じゃぁ、その幽霊のトコまで連れてって貰っても良いでしょうか」
「おっけーですってー」
「それは、私にも理解出来た」
「あ、俺も。なんで軽い感じなんスかね?」
「気分じゃないですかねー」
ひょっとしたら、思ったよりも女の子女の子してたりして……
ジゼルがこの時進む方向を振動で指し示してくれたのであっさり幽霊に遭遇した。死んだ人に着せる白装束にドクロの様な顔立ち。それが浮かんでいる。裾なんか霞んでて煙のごとく。
やはり、分かっていても薄気味悪い。死を直接意味するからなのか、物理的に普通の攻撃が効かないから怖いのか不明だが、怖いもんは怖い。どうしようもない。
その幽霊はただ浮いていた。敵意も何もなく浮いてるだけだった。
「手はず通りで?」
声を潜めて、確認する。
「そうですね、話をしてみましょう」
「攻撃的動作を認めたら、ターンアンデッドでー」
「分かったっス」
右腰のジゼルの柄に右手を置いてリラックスした様な感じで幽霊に近づく。
「こんばんは〜、この屋敷に何の用っスかー?」
二人は少し離れて跡をついて来る。その足音を確認しながら間抜けっぽく話を振る。
「出来れば屋敷から出て行ってくれないっスかー?」
幽霊がゆっくりとこちらに顔を向け、左手の指を下に手の平を見せる。そこに小さな映像が浮かぶ。
「? おたく、メッセンジャーなんスか?」
返事はない。兎に角見ろとばかりに映像を見せに来る。小さ過ぎて良く見えない。仕方ないので三人とも近寄って、映像を確認する。すると、再生がまた始めからになった。頭の中に流れる音声。幻惑か何かの魔法だろうか? それともこの幽霊の記憶か……
◆
聖デコグリフの五角形を基調としたシンボリック。ヴァレンティナ嬢の司祭服の左胸にあるものと同じ。ただ細部が商人を表す"コインと革袋と天秤"、それと階級のマークがあり全部が同じというわけではない。それが誇りの証の様に着いた帽子を被った司教が教壇で演説している。
「お前達は悪魔との間に出来た子である。よって、光の民に仇なす使命を受け継ぎ、未来に脅威となるであろう! しかし! 我らが慈悲深き商人の神であるハウゼント様は、命までは取らず! その身を光の民の為に費やさせることを提案する! 奴隷罪として今後の生涯を許そう!」
そんな事を平然と宣言する司教様に反吐がでる思いで三人は見続けていた。そこに映る獣人やダークエルフとの混血児達が鎖に繋がれ、強制的に馬車に乗せられる様を。
言葉もなく、その映像を見守っていた。同じデコグリフ教のヴァレンティナ嬢が居るのだから、何を言えばいいのか分からないからだ。色々考えてしまっていると場面が切り替わる。
「あの憎きデコグリフの商人の神ハウゼントに仕えるゼニゲバのダーニシ司教は、奴隷制度を正当化してしまった! 我々は気付くべきだったのだ、貴族と教会の癒着がこの子らを不幸に導くと! 奴隷罪の廃止を! ひいては奴隷制度の廃止を! 英雄ネザーツに続け! 我らゾッディメラ教団はその為の手段は厭わぬと宣言する!」
言ってる事は至極真っ当な、顔に大きな火傷痕のある深紫の司教服の男が声高らかに洞窟のような広間で演説している。大甕の中から生気のない腕やら足やらが溢れ、見るからに死霊術師的なヤバそうな雰囲気の背景で。
映像はそこで終わった。
◆
「何やら、生前の記憶っぽいものがヤバそうな……でも放置しとくともっとヤバそうな雰囲気ですねー」
「か、かかわりたくないっス」
「本当にヤバさしか伝わって来ない。しかし……」
「でも、デコグリフ教全てをあれと一緒に考えて欲しくありませんねー」
「ヴァレンティナ嬢はあんな嫌な感じしないっスね」
「確かにだが、で、この幽霊はどうするんだ?」
その時ジゼルが震え出す。少しだけ抜いてやると古代語を空中に浮かび上がらせた。
「『真実かどうかも定かではないものに惑わされるな』だそうでーす」
「よし! ターンアンデッドを頼むっス」
「し、しかし」
「何かありますか? シュツルムさん。かけちゃう前に確認なら出来るかもしれませんけれど」
「邪教の争いに巻き込まれた幽霊が奥方なら、奴隷罪の現場を知り、邪教の祭壇を見た記憶を持つこの幽霊は一体どこの誰なんだ?」
「奴隷だった可能性は高いっスね」
「奴隷だったとして、何故、デコグリフ教とあの邪教の司祭の演説を見せるのだと思う?」
「あ! そっかー! 私分かっちゃったかもですー」
「何がスか?」
「だからー、デコグリフ教とあの邪教のヘイト稼ぎですよー」
「うん、それで黒幕は何処だと思うっスか?」
「え? えぇとー」
「いや、最初の構図からしてっスね、クライアント、その奥さんを犠牲にしたと言う邪教ゾッディなんたら、そして奴隷制度を作った商人の神を崇める勢力っス。基本的には三つ巴っス」
「じゃぁ、この幽霊さんはクライアントの差し金ですね!」
「そして、クライアントは豪商っス。品物の取引先と卸先があるのが普通だとするっス。であったなら、生活全般に浸透してるデコグリフ教会が得意先にもなりやすいっスね。おまけに商人の神様っス」
「え、あれ? でも、あれー」
「しかし、ネザーツを英雄と言う執事を抱える豪商か……クライアントは一枚岩では無いのか?」
「それは、ヴァレンティナ嬢、以心伝心を頼んでも良いですか?」
「え? 良いけど、マナ足りるかなー」
「なんとかなると思うっスよ。ね? 先輩」
「え? あ、あぁ、任せろ」
「じゃぁ、行きますよ。“以心伝心”」
全員が手を繋ぎ輪を作ると奇跡がかかる。
『時間が無いっス! 監視されてると思って行動して欲しいっス。目の前の幽霊も監視者の可能性があるっス。この屋敷の全てを疑えっス。執事だけじゃなく、奴隷の扱いが良いのはハーフオークだからだと思うっスよ』
『『つまり?』』
『鈍いのぉ、ブヒボンドのバックに奴隷解放の勢力が息衝いておる可能性を捨て切れぬと主人はいっておるのじゃ。大方メディゾッラ……じゃったかの?』
『ゾディメラですよー』
『覚える気は無いでの。どうでも良いわ』
『それで、それから先何を言おうとしたのですか?』
『いや、まだ推測の段階っス。推測に基づいて動いてその推測が間違ってたらあまり効率が良く無いのは分かるっスよね。もっと情報を集めてからの方が予測を聞くより正解に近いものが得られるっス』
『そうか。分かった。アリュフに従おう』
妙にシュツルム先輩がしおらしく可愛い。……というかシュツルム先輩から仄かに甘いナニカを感じる。
『え? パーティーリーダーはシュツルム先輩じゃ無いんですか?』
『アリュフの方が今回は私より適任だからな』
『ホッホッ。"鎧の"は、我が主の偉大さに気付いておるのだな』
『アリュフさんて、本当はネザーツ家の人なんじゃないんですかー?』
ドキリと心臓が跳ね上がる。
『な、何を根拠に……』
『やっぱりー、今ドキリとしたのが証拠ですー。ね? シュツルム先輩。アリュフさんが英雄の子息だなんて素敵ですよね』
『え? あ、え? あ!』
シュツルム先輩からの色んな思惑が伝わって来た。そういう事か!
『コネクト・ハーツ中に尋問なんてズルいっスよ!』
『"鎧の"。弁えよ。主は吾の物ぞ』
『『いやいやいや何言ってる(のですか)っスか!』』
『ハッ! でも宗教戦争に巻き込まれるのは真っ平御免っス! 真実は知っておけば切札に……』
ここで以心伝心の効力が切れた。
「!!……なるっスから!」
最後まで言えなかった台詞を敢えて口にした。
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