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危機俺!  作者: 一集
第一部 イサークの奇行と愉快な仲間たち
7/54

7話 そうだ、新たな実験をしてみよう。




Gから回収した拝借物、……まあ、端的に言えば目ん玉だが。

シャルが悲鳴を上げながら回収したものも受け取って川へ来た。


シャルはSAN値(正気度)がヤバそうだったので安全地帯(実家)へ帰した。

多分家でもGをぶった切ってる親父さんがいると思うけど……。


どんまい、シャル!

強く生きろ。


さて、川に何をしにきたかと言えば、洗濯、もとい洗浄を。


一応下流を選んだところがエチケットとマナーの上昇ポイントです。

実は洗濯に来ている奥様方の驚愕の目と冷たい目と畏怖の目と敵意の目を次々受けて、空気を読んだ結果だヨ……。


久しぶりにユリア母の姿も見たけど、睨み殺されそうな気がしたのですごすごと退散した。

美人は怒ると夜叉になる、マジだぜ?


そんなわけで寂しく一人で川辺に座って地味に目玉を洗う。


両手では全部持ち切れなかったので、用意したズタ袋に入れてきた。それを一つ一つ取り出して丁寧に処理をしていく。


細かく説明すると、まあ、眼球についてる諸々の組織をべりっとな。つまり血管とか神経とか、組織片とかモゴモゴ。


ゴブリンに目蓋がないのは先述の通り。

もちろん目は急所だ。守るものがないワケがない。

ゴブリンの目には、だから代わりに透明な膜が張り付いているのである。


これが結構厚さがあって、形としては水晶体に似ていた。

だからヤツらの眼球は人間みたいに球体じゃない。

目蓋モドキの透明な膜に合わせて角膜部が凹んでたりする。


さすがファンタジー世界よなぁ……。

地球じゃ存在しない構造の生き物がわんさかいる。


さて話は戻って。

眼球と透明目蓋の引き剥がし作業だ。

剥がしやすいものと剥がし難いものがあるのは、新鮮さの違いだろうか、個体差なのだろうか。

ううむ、興味深い。


ちなみに無理矢理引き剥がすとかえって後がめんどくさいことが早々にわかった。

あれだ、卵の殻みたいな。

薄皮を残すと面倒だろう?

あれを100倍くらい頑固にしたカンジ。


川の中の石で小さな土手を作って、失敗したヤツはそこにポイっと着けておく。

ふやかされて取りやすくなってくれるとありがたい、と思っての行動だった。


今回必要なのは透明目蓋の方。

まずはきれいに取れたものを太陽に翳してみる。

うん、素晴らしい。

うん、……眩しい。

決して真似をしてはいけません。


ふやかしてるヤツも手に取って邪魔なものを落とす。

さっきよりは取りやすくなってる。

引き剥がし方法としては「アリ」ってことだ。


が。

同じように光に翳してみるとわかる。


……ま、アウトですな。

よく見ると水流で川底や石に当たって傷だらけ!

う~む、繊細。


とは言え現物は有限。

とりあえずは完璧を求めず、最後まで強引に進めてみようじゃないか。


傷については今後の課題ということで。うん、後回しね。


ふやけてるせいか、本来の柔軟性なのか、わりとぐにょぐにょなのは予想外。

こんな柔らかくては使いにくくて仕方がない。


ということは、いったん乾かしてみる工程をプラスしてみないとな!

それで固まってくれると一番嬉しい。


つまり、あとの作業は室内になりそうだ。

んー? なら家か。


……待て。そーいや、これ持ち運びに注意しなくちゃならんヤツでは?

どう考えてもこのぶよぶよ具合、(やわ)いに決まってる。


せっかくきれいに剥がせたヤツも傷モノの危機だ。

とは言え選択肢は無い。

他に方法がないので、仕方なく持ってきた時と同様に袋に泣く泣く入れる。


結果は目に見えてたけど。家に持ち帰って広げてみた目ん玉には案の定表面に無数の傷が出来ていた。

出来るだけ慎重に運びはしたけど、限度はあるよねー。


目が粗い袋で適当に運ぶとアカン、というのはわかったけど。てか想像ついてたけど。

ならどうやって運ぶのかと言われると、なにも思いつかない。

どうしようかねえ?


なんにしても持ち運びが課題その二か。

その課題についてもいったん寝かせる。


失敗は目に見えてるが(目ん玉なだけに)、もはや実験のつもりで一晩放置して水分を抜く作業を強行。


起きたらある程度固くなってた。

よかった、方向性はこれでよさそう。


……引っ付いてたけどな!?

木製の机の上に置いていたのだが、これが見事に張り付いてる。

くっ付いていたものを無理矢理引き剥がしたらぶちっと切れた。

アカンやつ。


机に残った方の残骸はちゃんと剥がれるんだろうか……。

机が平らじゃないと皿と鍋が置きにくいんだが?

ゴブリンの欠片と食事をしたくないんだが?


透明目蓋の乾燥具合はまちまちで、まだ比較的柔らかいものは頑張れば剥がせた。

けど張り付いていた面に木目が形状記憶されてる。

これじゃ、まったくもって役に立たない。


「あ゛ー!! これ、どう干したら正解なんだよ!」


思わず頭を掻きむしる。

思った以上にめんどくせー!


今回の実験はすべて失敗。

一つも完成に至らなかった。


くそう、肥料といい、最近失敗ばっかりだな!


今更にはなるが。何を作っていたかというと、お察しの通りレンズだ。


目蓋にレンズ機能があることに気付いたのはただの偶然だが、そのレンズ機能だけを取り出すことにこんなに苦労するとは……。


だがこれで諦めるわけにはいかない。

普段なら諦めてるかもしれないけど、トーマス小父さんの手前がある。


二回目のゴブリン収穫にも当然のごとくSAN値が回復しているであろうシャルをつれて数を稼ぐ。

トーマス小父さんは行くぞとシャルに声をかけた俺と、白目気味なシャルを交互に見た後に――目を瞑った。

それでよし。


ちなみに今度は目蓋と目玉を分離せずに持ち帰った。


運んでる時に傷が付かなかったのはそのせいだろうか。


そもそも目蓋は目玉を守ってるわけだし。

何の作用かわからんけど、眼球があることによって強度が増すのかも?


要実験、要確認、だな。


乾燥実験も目玉付きで行った。

眼球を下に目蓋を上にして、接地面にレンズがくっ付かないように置いてみた。


乾燥した後に目蓋と眼球を剥がす作業だけが中々骨が折れたが、こちらの方がまだ成功率が高い。

高いって言うか、前回の方法は全滅だったから比べるべくもないけど。


ある程度乾燥して、表面がくっ付かない程度になった頃合いを見計らって剥がすのがコツっぽいな。

完全乾燥してしまうときれいな分離は不可能だ。これもある意味実験成果。


そこからさらに乾燥。

出来上がったものを覗いてみる。


「お、いい感じの倍率」


一番面白いのがゴブリンによってレンズの倍率が違うところだ。

多分これは作業工程の問題ではなく、ゴブリンの個体差だと思う。


ゴブリンが使う武器はいくつか知られている。

例えばこん棒とか、弓とか、槍もどきとか。

なんなら武器を持たない斥候みたいなのもいる。


奴らのその役割の割り振りはどうやっているのだろうと思っていたけど、これが一つの指針なのかもしれない。


レンズ倍率が高いやつは弓とかな。

生まれ持った性能差があるなら、そりゃ生かした方がいい。


完成度は置いておいて、一応形になっただけのなんちゃってレンズを持って捻くれおじさんの元に足を運ぶ。

付きまとい行為でトーマス小父さんの精神状態がそろそろヤバい。


目的の人影はトーマス小父さんの周辺を探せばすぐに見つかった。

しっかし、まともに話したことがない人に声をかけるのは勇気がいるな。


「あの、テラーさん……?」


そっと声をかけたら、ぎろりと睨まれた。


全員が顔見知りの小さな村なのに、話したことがないのはなんでかって?

以前も言ったかもしれないけど。

――だって、会話ができないんだもの。


「用がないなら話しかけるな、小僧」


な?


俺だって用がないのにアンタみたいなコミュニケーション能力皆無の人に話しかけたくないよ。そっちこそ察して?


「実はテラーさんに見せたいものがあって……」

「俺は見たくない。邪魔だ、どけ」


この通り、取り付く島もない。


視線の先にはトーマス小父さん。

ストーカー行為を再開しようってか?


はーい、ダメですぅ~。


「テラーさん!」


ばっとテラーさんの前に出て、進路を塞ぐ。

テラーさんの元々不機嫌そうな顔が嫌悪感で歪んだ。


こっわ!

大人なんだから少しは感情をコントロールしようぜ!

あと、あからさまに感情を表に出す行為は控えよう?

機嫌が乱高下する人間は嫌われるんだぞ!

――っても、テラーさんは下で安定してるともいえるけど。


「……何のつもりだ、クソガキ」


ひえ、嫌われることを何とも思ってない人は強いね!


でも、嫌われてることを知ってる俺も強い、ハズ!

そして俺はわりと多数の村人からすでに嫌われてる!

悲しい!

でも、「今更」と思えば、何のその!


「どうしても! テラーさんに! 見てもらわないと! 困るんだ!」


どすこ~い!


「俺は困らん!」


ずいっとテラーさんが一歩進み、俺を実力行使で俺を退けようと手を伸ばしてきた。

だが!

子どもの特権、「身軽さ」でその手をひょいと避ける。


「俺は困る!」


ので、話を聞いてくださいー!


「……いい度胸だな、食いっぱぐれたいのか?」


この俺を怒らせるとどうなるかわかってるのかと、ガチめな脅しをかけられた。

テラーさんは村の食糧事情の一端を握ってるだけにリアルにこわい。

餓死の危機です、天国のお父さん。


でもお!


「あ、大丈夫です。トーマス小父さんがいるので」


と、冷静に返してしまった。


すんげえ大きな舌打ちされた。


「小賢しいガキめ!」


大人げない大人め!


俺を押しのけることを諦めたのか面倒になったのか、忌々しそうな表情を残してテラーさんは踵を返そうとした。


ああ、くそ。

なにを言えば話を聞いてくれるんだ、この人!


弱点、弱み!

脅し!

ぜんっぜん思いつかない!


会話の糸口をつかもうとして必死に頭の引き出しを開け閉めする。

テラーさんと言えば、なんだ!?

畑、トーマス小父さん、嫌われ者!

あとは、奥さん、息子!

そう、実はこんな人にも家族がいるんですよ、意外でしょ?

……じゃなくて!

えーと、えーと、え~っと!


「そう、テラーさんと言えば! 土が! 土を! 土で! 虫に! 微生物の!」


つまり土壌観察が趣味の変な人!


「……土?」


ん?


「ん?」

「土がなんだ、小僧」

「ん?」

「見てもらいたいと言ってたのは土か? それを早く言え、バカめ。どこの畑だ? 症状は? 土の色はどうなってる」


ん?

会話、のようなものが、今、テラーさんから聞こえたような?

……まさかな?


「聞いてるのか、小僧。俺は迂遠な会話は好まん。俺に合わせる気がないなら話は終わりだ」


ああー!?

話してる!

マトモなこと話してるぅ~!!!


俺が驚愕に目を見張っているうちに、ふん、と今度こそテラーさんが足の向きを変える。


もはや最後のチャンス!

細かな説明をしている暇はない!


「ままっまま、待って! これ! 土が! 見えるんだ! どこでもいい! テラーさんの畑でもいいから、これを通して見て! 土を!」


とにかく押し付けよう!

キーワードは多分「土」だ。


「お、おい、小僧?」


案の定、土という単語に聞く耳を持っていたテラーさんはうっかりとそれを受け取った。

俺はレンズを返されないうちに脱兎のごとく逃げ出す。


戸惑うテラーさんという貴重なものが見れたので今日の所は良しだ。

あとは野となれ山となれ。


無理矢理握らせただけで説明の一つも出来なかったのが少し心残りではある。

テラーさんがレンズの使い方に気付かなかったら失敗です、ごめんね、トーマス小父さん。




結果は、といえばすぐに出た。

翌日の事だ。


トーマス小父さんの畑で、こそこそと成果の報告をしていた時にテラーさんが飛び込んできた。


「げ、テラー! ついに正面から来た!?」


これは最近ずっと付きまとわれて辟易していたトーマス小父さんの台詞。


「どうしよう、イサーク!」

「もう素直に言ったらいいんじゃないですかね?」


だって、面倒なので。


ちぇーレンズ作戦失敗か~。

ってか、俺はあんなに苦労して形になったレンズがゴミになっただろうことがショックだよ。


現れたテラーさんは視線を外さず、一直線にこっちに向かってくる。


「や、ヤバい。殺されるかも!」


んな馬鹿な。

と思ったが、目が尋常じゃなく血走っていたので、すでに逃げ腰だったトーマス小父さんに倣って俺も素早く逃げの体制に入った。

獲物を狙う目だね、あれは確実に。


ら、それを見たテラーさんがかっと目を見開いて。


「逃げるな!!」


と怒声で一喝。

思わず止まった。

俺もトーマス小父さんも。


威嚇ってホントに効果あんのな。

これ実体験。


「ひえぇえええ」


トーマス小父さんが隣で情けない声を上げる。


しかし瞬きの間に目の前まで駆けてきたテラーさんは()の肩を掴んだ。


「へ?」

「い、いだだだだだだ!」


ちな、上がトーマス小父さんで下が俺の声ね?


あ゛ー、ちょっとテラーさん!

あくりょく。

大人の握力、甘く見ないでぇええ!


必死で肩に乗った手をタップするが、興奮した様子のテラーさんが気付いた様子はない。


「おい、クソガキ! いや、小僧! いやいや坊主!」


ちょ、言い直しの意味!

呼び方に改善があんまり見られないんですけどー!?


「今すぐに教えろ! あれはなん(・・)だ!?」


ゴブリン(の一部)ですぅー!


「いや、わかってる! あれほどのものだ、隠そうとするのは当然の話。だが! 俺には見せた。そうだな? つまり僅かなりに俺の目を信用したということではないのか?」


なにを言ってるのか、意味を吟味する前にこくこくと頷く。

え?

だって、こわいじゃん。


「そうだろう。そうだろう……」


近い! 顔がめっちゃ近い。

おっさん相手じゃ、全然嬉しくねえええ!


テラーさんは元々目つきが悪い。それが細く笑みを作り、更にしたり顔になった。


ひえ。

もう凶悪犯にしか見えないね。

俺以外ならちびってるよ。

現に隣でトーマス小父さんが腰を抜かしてるし。


え、俺?

悲しいかな、人間って慣れる生き物でね?

突き刺さる視線には慣れたものよ。


肩に乗った手がさらに強く握られる。

……あの、もしかして俺の骨折ろうとしてたりする?


「ならば、――見せろ! 全てを、俺に! そうすれば歴史を変えてやる、この俺が!」


頼み事、……じゃないよな、これは。

もはや完全なる恫喝でしょ。


「イサーク、一体テラーに何を見せたの……」と尻もちをついた小父さんが怖々と呟く。

が、この件に口を挟むなとテラーさんに吠えられて、絞められた鶏のような声を最後にぴっちりと口を閉じた。

息してる?

大丈夫?


「小僧、俺たちは協力者だ。……いいな?」


あれだよね、気分はヤンキーに絡まれてる優等生。

これはイエス以外にいっちゃいけないヤツだ。

拒否ればタマ取られるかも。


「悪いようにはしない」


肩を組まれて耳に囁かれてるのは一体どんな悪事だ?

うっかり変に勘繰りたくなるムーブばかりかましてくるよ、この人。


「なあ、俺たちは仲間だよな?」


嫌に馴れ馴れしい態度に鳥肌を立てながら、必死に思考を引き寄せる。

ええと、コレ何の話だったんだっけ、そもそも。


ダンおじさんがイザベラに恋をして、トーマス小父さんが猟奇行動にハマって、悪徳刑事テラーが事件解決に乗り出したと思ったら、俺が脅されてる。


……あれ、あってる?


「おい、聞いてるのか小僧」


ぴたぴたと頬を叩かれてはっと現実に返る。

なんだっけ。

そう、そうだった。何はともあれ言いたいことが一つあったんだ。


「イサークです」

「「……はあ?」」


二人分の虚を突かれたような声。

言わずもがな、テラーさんとトーマス小父さんだ。


唐突な話題転換についていけなかったらしい。


「小僧じゃなくて、イサークですよ。名前、覚えられました?」


だって、名前を呼ばないような人と付き合っちゃいけないって、母さんが言ってた!

……ような気がするので、仕方なく。

そう、仕方なくね?

うん、別に心が狭いわけじゃないんだよ。


「言えたら考えてあげますよ? 今後の付き合いを」


俺はうっそりと笑ってやった。

ちょっとくらいいいじゃない、仕返ししたってさ。


どうやら俺の作戦がテラーさんにぶっ刺さったらしい。

つまり立場はこっちが上ってことでオーケー?


「……イサークが臆病者って、誰が言ったんだっけ?」


首を傾げながら、自分の世界に行ってしまったトーマス小父さんがぶつぶつと何か言ってる。

かわいそうに、テラーさんがよっぽど怖かったんだね。

安心して、(かたき)は俺が討つ!


耳元でぎりぎりと歯を食いしばる音がした。

テラーさんが鬼の形相だ。

それをちらと視界に入れて、爽快な気分に口角が自然と上がる。


最初から素直に頼めばよかったのにねえ?

にっこり。


「自業自得って言うんですよ、そういうの」

知ってました?


テラーさんはぐうの音も出ないらしい。

俺の一言一言に頭に血を上らせていくテラーさんだけど、彼がここまで執着したレンズを諦めるわけがない。

――きっとレンズから覗いた世界は彼が知っているものとはまるで別物だったんだろう。


彼は折れた。

屈辱と顔に書いてある表情で俺を呼ぶ。


「……イ、イサー、ク」

「はい?」

「……あの道具、について、教えて欲しい」


はい、よくできました。


そんな顔しなくても大丈夫、ちゃんと教えますよ。

悪魔じゃあるまいし?

別に大した秘密でもない。


テラーさんこそ『秘密』を聞いて、拍子抜けしそう。

そんなことでこんな屈辱を味わったのか!って。

だってソレ、実はゴブリンの目を抉り取って、透明目蓋を剥がし取って、乾燥させただけだから。


今度こそぶっ飛ばされるかも?

そっちの方が心配になる。


ってのは杞憂に終わったけど。


「お前は馬鹿か! コレの、どこが、大したことがないんだ! ええ!? 俺に言ってみろ、今すぐ、俺を納得させてみろ! だからお前は希代の大馬鹿野郎ってんだよ!」


後のテラーさんの罵り言葉である。




――そんなわけでこの日から俺は村で唯一、捻くれおじさんことテラーさんに名前を呼ばれる子どもになった。


当のテラーさんは、まあ、予想はついてると思うけど。

悪いことをしたらテラーが目玉を抉り取りにくると、子どものしつけに堂々と登場する人物になった。


イサーク病罹患者第三号ですね。ハイ。


言われて、テラーさんが満更でもなさそうだったのが印象的だった。

実はツンデレ属性だったとか、マジ予想外すぎでしょ。


誰得なの。

いや、むしろ俺損なだけだと思うとやるせない……。











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