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危機俺!  作者: 一集
第三部 おや、村の様子が?

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59/60

59話 そうだ、武器を作ってみよう。




「……あのさ」


ちら、と隣にいる人物に視線をやる。


「うん?」

「仕事、立て込んでるとか言ってなかったっけ?」

「まあな」


言ったところで上の空。

半分諦めてはいる。すでに幾度と交わされた会話だし。


「こんなところで油売ってていいの?」

「仕事より大事なことはある」


ないでしょうが!!

数日で出ていくといってた冒険者兄妹。

すでに一週間を過ぎ。そろそろ二週間……。


え、俺の仕事?

もちろん仕上げたよ。ライトの事っしょ?


靴の調整は専門職(シャル)に任せ、スライムとのマッチングはもちろんあの親子に放り投げ、ナイフは俺が使ってた小型ナイフを貸した。

んで確保できた時間でちょちょっとな。


その過程には、徹夜がバレてリンに怒鳴り込まれ、俺が説教されるついでにヒイロさん達も怒られたなんて事件もあった。

あの日から二人はリンには妙に腰が低い上に従順だ。

具体的に言えば、家の中に二人の監視者が増え、俺は徹夜が厳禁になった。

まあ胃袋握られてるし仕方ないか。……俺も含めて。


「なんだよ、ちゃんと村には貢献してんだろ?」


話は戻り、なにが不満なんだと怪訝な顔のヒイロさん。

最初は普通の居候だったのに、滞在が伸びるとさすがに働かざるを得なくなり、最近では森に繰り出し、村の連中では綿密な作戦と人数を必要とする中型魔物を狩ってくるようになった。


本音を言えば、助かってはいる。

中型はルパートさんたちが出て行ってから、餌になる小型の魔物の数を頑張って減らすことでしか対処できてなかった。それでもじわじわと増えていた脅威を均してくれてるんだから村としてはありがたい。


でも!

それとこれは話が違う。


「冒険者クビになったらどうすんの!?」

「そんな簡単にクビにならねーって」


はははと笑うヒイロさんがちらりと斜め上を見る。

あ、これ。多分ある。クビの可能性十分あるヤツ。


「まあ、……そうだな。そのうち、発つよ」

「そのうちっていつ!」

「イサーク、そんなに俺たちを追い出したいのか!? ひどいじゃないか、お前に貸した恩を忘れたのか!」

「だから返してるでしょ! いま!」


こんなあけすけなやり取りができるようになったのは、多分良い事だ。

以前だったら、立場に差があり過ぎてこんな冗談が冗談にならなかったもん。『貸した恩を忘れたか』はもはや脅しよ。断れない脅し。

今はほらこの通り、普通に言い返せるから。


「せめてコレが完成してからでいいだろ。ってか準備中だよ、出立準備中!」


ヒイロさんが指すのは彼の武器。

立派な剣だ。本人曰く、量産品らしいけど。


「完成って、もう完成してんじゃん!」

「いーや、してない! ほら、見ろ! 今回最大出力を上げてもらっただろ? そしたら入力から発動までのラグがかなり大きくなったんだ。さすがに縮めないと使い難い。ちょっと調整してくれよ。……とすると、柄と刃のバランスが変わるわけだけど。ヒュー爺さんの身柄確保しておかないとマズいかな?」


ヒイロさんが……。

ヒイロさんが、あっちの世界に足を踏み入れてるぅ。(涙)

くっ、どうしてこんなことに!


「はっ! イサーク、そういえば伝えようと思ってたことがあったんだった! 燃費が悪いのはもうしょうがないと諦めて、使い方でどうにかしようと思ってたんだが。消費を減らす方法を試してるうちに気付いたことがあって、」


うんぬんかんぬん。

あ、あ、あ、あ゛あ゛~! 始まってしまった。

使用者の聞き取りは大事。

でもぉー、この人、ウチの家に泊まってるんすよ?

四六時中こんな話をされてる身としてはですね、……はい。

もう、右から左だよね。

だって、これに加えてアルネさんもいるし。


「あ。ところでアルネさんは今日はどちらに?」

「ん? 朝はイザベラと遊んでたな」

「あぁ……うん」


言葉を額面通り受け取ってはいけない。

アルネさんとイザベラの遊びはほぼ殺し合いだ。


「また怪我でもしてるんじゃ……」

「はは、そんなやわじゃねーよ。ってか冒険者なんて怪我してナンボだろ。ましてあれは訓練みたいなじゃれ合いだ。アルネも遠慮なくやり合える友達が出来てはしゃいでるんだろ。大目に見てやれよ」


あーもう! この戦闘狂ども!

都合さえよければ、あの魔物もどきも簡単に友達扱いだよ!


は~……(溜息)

もういい。ちゃんと消毒さえしてくれれば目を瞑ってやろうじゃないか。


「今回の試作も大分使いこなせるようになったみたいだから、そろそろ次のを要求されるんじゃないか?」


くうっ、試作品じゃねーし、改造品だし!(涙)


なんの話かと問われれば、護身用ナイフの話。

当然最初はアルネさんに渡したよ。だって護身用想定だからね。

が、蓋を開けてみたら全然違う用途に使用し始めた。


ええ、ええ。二本の短剣を振り回して立派な凶器と化してますねぇ?

ナイフから短剣用に魔法陣を描き変えるのは、そこそこ苦労したんだけど。誰も労ってはくれなかった。かなしい。そんな簡単なことじゃないのにー!


しかもアレよ、物足りなかったらしいよ。威力が。

あっれー? おかしいな。俺が制御できるギリギリに設定したハズなんだけど。

ちょっと出力上げたら保持すらできなくて、凶器が手から飛んでったからね。俺の手の平を切り裂いた上で!


その光景を見たお婆が大激怒し、イムは飛んできて俺の手を包み込み……いや、お前血を止めようと? それともまさか、啜ってんじゃないよな?

とにかく指が落ちなかったのが奇跡だった。マジ冷や汗かいたぜ。


アルネさんにはこのリミットを外して、様子を見ながら出力を上げているところだ。

散々危険性は説いたんだけど、「こんなの子どものオモチャじゃない。なんの冗談よ」と笑い飛ばされた。

……俺には何も言えなかったよ。


ちなみにヒイロさんも似たようなもの。

テンションが上がったアルネさんを見て興味が湧いたのか、ちょっと使わせてくれとナイフ片手に森へ出かけ、……帰ってきた時にはもう片鱗が見えてた。


自分のメイン武器にこの機能をつけてくれって大興奮。

一方のアルネさんは殺傷能力を検証したいと魔物を切り刻み始めた。

いかに魔物と言えど生態系ってものはある。やたらめったら手あたり次第殺されても困るから、イザベラを紹介したんだよな。

訓練相手になってくれたらいいかなと思って。


ん? イザベラが殺される危険性?

いやあ、あんまり考えなかったかな。なんか、……もう十分ヤバい匂いしてたんだもん、二人とも。

自分でいうのは癪だけど、いわゆるイサーク病ってやつ? 一週間もしないうちにほぼ末期症状。俺が見た中で一番進行が速かった例かもしれない。


一応ね? 最初はちゃんとイザベラの姿に驚愕してたんだけど。

すぐにどうでも良くなったクサい。


イザベラはイザベラで今まで人間を相手にしたことがなかったからか、アルネさんとの手合せに夢中になった。

ダンおじさんが傍でずっとオロオロ見守ってたけど、心配がウザくなったのか、ついにはイザベラに見学禁止を言い渡されてた(もち、身振り手振りだったけど)

ダンおじさんの哀しい背中を久々に見た。ドンマイ。


とは言え、イザベラも真剣にならざるを得ない。

だってあの頑丈な棘の木でできたイザベラが、アルネさんが発動した短剣で撫でられただけで枝が切り落とされたからね。


生存本能が刺激されたのか、イザベラはそこからすごかった。

あっという間に対抗策として部分的な硬化能力を手に入れた。刃の当たる個所を瞬間的に硬化させて攻撃をはじくのだ。


イザベラとしては大きな転機になったらしい。

戦闘時の人間の動きを学習したのか、一気に日常での動きも滑らかになった。無理やりにでも動かすことで体の使い方を覚えたんだろう。

思考という点でも一段上った感がある。訓練時に相手の攻撃を読んだとしか思えない動きを見せたりするし。


どんどん人間っぽくなるイザベラと、更にその裏をかいて攻撃をあてに行くアルネさん。

毎日一歩間違えれば死人が出るような模擬戦を繰り広げている。大変良いコンビだ。


イムとイザベラの進化はちょっと怖くもあるけど、もう一蓮托生だと覚悟を決めた。

こいつらに裏切られたらどうせ終わりだしな。


さてはて、一方のヒイロさんの話をしよう。

彼には希望通り超音波振動剣。すでに短剣版を作っていたからわりとスムースに完成した。


問題はそのあと!


そもそもアルネさんが使用している短剣ですら、一つの魔石で発動できる時間は長くない。

だから瞬間発動が肝(アルネさん談)、らしい。

それを剣版にしたら、そりゃあもっと発動時間は短くなる。


だが!

それでも!

たった一度の発動でショートするようなシロモノではないハズなのだ。


あれ?

どこか間違えたかな、と思いながら直したさ。


そのあとも度々。

さすがに何回も繰り返してると、自分のせいじゃないのでは?と思い始めた。


そもそもかかってる負荷がおかしい。幾度も想定を上回るから、何度も設定を上げているのに、毎回それを超えてくる。

ショートするわけのないところでショートしたり、導線が溶けてたり、魔石にひびが入ってたり。


なんじゃこりゃと突き詰めてたところ、結果的にヒイロさんのスキルを知ることになった。

なかなか言いたがらなかったけど。本人曰く「火魔法の出来損ない」らしい。


「何かを温められる程度の、使い道のないスキルだ」


肩をすくめる仕草には自嘲が隠れ見えた。


つまり火にはならない。誰かの手や、冷たい保存食を温める程度の能力。

……個人的にはそれだけでもめっちゃ便利だと思いますけど?


そんな個人的意見は置いといて、俺は考えたね。


以前、魔力ってのは誰もが持っているものなんじゃないのかと思ったことがあった。

魔法を使える使えないは魔力を貯められるか否かの違いではないかと。


ならスキルってのは魔力を放出する道筋みたいなものなのかもしれない。


どんな事象として発現するか、その方向性をスキルが定めていると考えたのだ。

スキルがない人間は放出する手立てがない。スキルがある人間は道筋に従って定められた魔法しか放出できない。そういうことなんじゃないか。


そしてそのスキルに今回、剣に施した魔法陣が干渉してるのでは?


「いや、干渉ってか、……これは道筋が伸びた的な?」


スキルってものが体内に描かれた魔法陣だとしたら、そこに剣が接続してしまったようなもの。


で、色々と実験してみた。

俺の結論を先に言えば、ヒイロさんのスキルの本質は火ではない。

――熱だ。


そりゃヒイロさんがスキルを使えるわけがない。その前提(火魔法のなり損ない)から崩壊しているんだから。


とはいえ、今更そんな話されても熟練度が一気に上がるわけでもなし。

ヒイロさんはせっかく貴重なスキルを手に入れていながら、時間をかなり無駄にしたことになる。


結論。今回ヒイロさんのスキルが魔法陣に干渉したのはただの偶然。


超音波振動で起きる事象としては、摩擦抵抗を減らすことと、摩擦熱。

この熱という共通項のせいだろう。


そんなわけでヒイロさんの武器は魔石補助型となった。

簡単に言えば、ヒイロさんの魔力も燃料にできる仕様だ。

ただ発動だけはどうしても魔石の補助が必要になる。着火剤のようなものだろう。あるいは火種。


なんとか出来なくはない、と思うけど。大規模な改造には時間が足りなさすぎるんだよ!

とりあえずそれで勘弁して!


しかもこれですら燃費悪いから常時発動型にはできなかった。

ヒイロさんも初めて魔力の枯渇という状態を経験して、その危険性を実感したようだ。


「いや、普通に死ねる。デバフでお前並みになるぞ? 灰色狼とやり合えるかすら怪しい」


俺よりは大分強いみたいですね?


立ち上がるのも難しい。剣を支えに何とかレベル。

最悪そのまま昏倒。

一回だけやったらしい、限界超えて。

アルネさんが一緒で本当によかった。じゃなきゃ、雑魚魔物に殺されてたよ。


「枯渇したら終わり。そこまで追い詰められた時点で詰み」


なんども心に刻むように呟いて、ヒイロさんはひたすらどこが自分の限界なのかを探る作業を繰り返してた。


聞くに、どうやら重力何倍みたいな感じらしい。

息すらするのが大変とか言ってたから、内臓の動きまで鈍くなるのかもしれない。


ってか、それで気付いたんだけど!

もしかしなくても無意識に魔力で体の強化してる?

体内含めて。

冒険者とか明らかに人間超えてるし。

いや、むしろそれができる人が冒険者になってるのか?

冒険者ほどではなくても、知らんうちにやってる人いそう、村人にも。


これもまた才能とでも言うのか!?


…………俺、多分、この分野でも才能ゼロだろうな。

クソがっ!











そうだ、武器を作ってみよう。(結果論)

便利ナイフを渡そうと思ったら、武器にされてた。(本音)

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