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危機俺!  作者: 一集
第二部 モノ作り:冬

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41/65

41話 そうだ、裏の功労者を知ろう。




とある人物の話をしよう。


「なあー、もうくれとは言わねーからさー。せめてあずからせてよ~」


ねえねえと俺の肩をひたすら揺さぶってくるコイツの話だ。


名をコール。

リンの同世代でガキ大将をやっていた少年だ。

覚えてる人もいるかもしれないけど、彼の母の名はローザ。

魔法陣をシャルと一緒に彫ってくれてる彼女の息子。


リンならまだしも、コールくらいになるともう抱き上げるのにも苦労する。

体もデカいし、父親は安定の森組だしな。

元気溌剌に遊びまわってる姿をみるに、順調にその後を継ぐんだろうと思っていたが、現在その将来に暗雲が立ち込めている。


あの楽観寄りのローザさんが相談してきた位だからな。

一時期ゴブリン事件で危険信号が点滅していたけど、今回は俺が見てもはっきりくっきりびかっと点灯してる。


今考えれば、ローザさんが何度もヒントをくれていたというのに。

俺は大して気にも留めず持ち前のスルー力で気付かずじまい。


「ちょっと息子の事で相談が……」


と言われて、

素で「なんで俺に?」って思ったくらい関係のない話だと思ってた。


「いいから! 百聞は一見に如かずって言うでしょー!」


とローザさんに連れてこられた彼女の家。

開いた玄関扉の向こうに見えた光景に、俺は慌てて外から扉を閉めたとも!!


……なるほど。百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。


「イサーク、逃げないでちょうだい! どう考えてもコレ、イサーク病でしょう!?」


ひどい。冤罪だ!

そんな訳で俺は、ローザさん曰く「推定、イサーク病」のコールと面会させられた。


それじゃあとは若いお二人で、とローザさんは去っていったけど、俺に任された仕事は一体何なんですか。そこのところちょっとはっきりさせてから……。


「あー、にいちゃん! にいちゃんのスライム、俺にゆずる気ない!?」


そしてコールは俺を見て顔を輝かせ、一言目がこれだもん。

俺は頭を抱えたね。


ローザさんのところで飼ったスライムが異様な速度で分裂しているのは気付いていた。

靴用のスライムが滞りなく提供できてるくらいだし?

ローザさんの家ってよくスライムが育つんだな、とか思ってた俺の馬鹿!


ぶっちゃけその時に気付くべきだったよね。

いくらなんでもその分裂速度はおかしいって。


「……お前だったか、犯人は!」


つまり、ローザさんちでスライムが異様に育つんじゃなくて、コールが繁殖の天才だったわけである。


「はんにんってなんだよ、人聞きわるいな」


コールは悪びれる様子もなく口を尖らせて文句を言った。

ついこの間まで舌っ足らずなひらがなしか喋ってなかったくせに、あっという間に言葉が達者になって……。

俺はつい関係ない事を考える。

これもババアとジェシカさんの授業の賜物かね。


「どーりで最近お前の顔を見ないと思ってたんだよ」


子供は風の子。リンなんかいまだに外で転げまわって遊んでるというのに。


リンは手に入れたメガネが相当お気に召したらしくて、自分に見える世界の話を頼んでもいないのに逐一話にくるものだから毎日のように顔を合わせている。

なんなら「子供用ノルマ(宿題)の柵作り」なんか、俺の家までわざわざ材料を持ってきてやってたり。


そんなリンに一回だけコールのとこを何とはなしに聞いてみたことがある。


「え、コール? ……んーでも、お婆ちゃんのじゅぎょうにはちゃんと出てるよ」


リンは首を傾げてから、そんな答えをくれた。

よくよく考えたら「でも」から始まる答えなんておかしいに決まってるのに、俺は「ふーん」で終わらせた。俺の無能!


俺は改めて「なあなあ」と喋りかけてくるコールに目を向ける。

深いため息が出た。

大人なら放置しておくけどさすがに子どもは放ってはおけない。かもしれない。


「お前が最近引きこもってるせいで、ローザさんが心配してんだよ、アホ」


自覚しろとコールの額をつつく。

むうとふくれた。

可愛げはまだ残ってたらしい。大事。


「だってあいつら、俺が面倒見ないとすぐ死んじゃうんだもん」


死なせとけば?

と言ったら、会話を即終了される気がして言わなかった。


――あいつら、とは。

俺はちらとローザさんの家の天井に視線をやる。

黒いシミが動いていた。

俺はちらと壁を見る。

黒いシミが(以下略


……そうこの家、スライムハウスに成り果てていた。


めっちゃホラーなんだが?

幸いにも今日の俺はイム持ちだ。いつもの気まぐれで勝手に引っ付いてきただけなんだけど、結果オーライ。


俺に近づいたスライムはにょっと服から顔を出したイムに慌てて後退した。

以後、俺の半径1メートル以内に近づいては来ない。


ここのスライムたちも、うちのロフやミディのようにイムには絶対服従のようだ。

それは何より。


そしてそれを見たコールの目は爛々と輝いている。

で、今に至るわけだ。


「そのスライムがミディアムスライムの祖なんでしょ?」


うずうずとした気配がここまで漂ってくる。

ミディアムどころか、ローフロースライムの祖でもありますが、なにか。

とか言ったら話がこじれるからやめておこう。

俺が自主的に口を噤むくらいにビシビシと伝わってくる。


まだ(イサーク病患者として)大丈夫、と思ってたけど撤回するわ。

コイツ、わりとダメな気配がする。(キリッ)


「見て、あれとあれがその子の親戚だよ」


……おん。


「ち、ちなみにローフローはどれよ」

「見ればわかるでしょー? そこのと、あとは、……あーいたいた。あそこでじゃれてるのがそうだよ、二匹とも」


見てもわかんないんだな、コレが!

壁や床にへばりついてくるときはマジでわからん。

くっついてない時はドロッと具合でそれなりに見分けがつくんだけども……。

てか、あそこのシミ、二匹分だったんか……。


「ちなみにあっちのがにいちゃんのスライムの二世代後、あっちはもう四世代目だよ」


なにが違うんだそれ?


「やだなあ、にいちゃん。四世代目の方がおとなしいでしょー?」


大人しい、とは……。

あいつらまったく動いてないけど?

そこのとこちょっと、kwsk。


俺がどこからツッコんでいいのか考えてると、コールがにかっと笑った。


「やっぱにいちゃんはわかってるね! かあちゃんはなに言ってもきょうみなさそうだし。とうちゃんなんか怒って踏みつぶすんだぜ? おかげでスライムたちみんな天井にはりつく習性できちゃったよ」


ははと笑いながら天井を指さす。

天井に居るやつが多いと思ったらそんな因果か……。


ん? 習性……?

スライムにも学習能力あるんだな。しかも随分と速い。

それとも家スライムだからか?


ウチのは魔石を餌にしてたせいで比較対象にはならないし、ロフやミディはイムの支配下にあるせいでやっぱり観察には向いてない。


となれば?

……にやり。


「コールお前、字もう書けるよな?」

「え、うん」


うし! あとで紙持ってこよう。

レポートだ。コールに書かせないと。

書き方は……まあ、ナティアさんに出張頼んどけば教えてくれんだろ。


お? そうだコール、スライム死んだら今度から魔石くれ。魔石。


そんなの何に使うのかと怪訝そうだったが、コールには特に使い道がないらしいので頷いてくれた。

が、じっと無言で俺を見てくるその目は口ほどにモノを言ってたけど!


むむ。


「まあ、そうだな。俺の信用を勝ち取れたらいつか教えてやるぜ?」


その為にはほれレポート書け、レポート。

ちょっと考えたあと、コールは「ガッテン!」と力こぶを作る。


こいつぁは将来が楽しみだ。


素晴らしい話し合いと収穫に、意気揚々と家を出た俺はやきもきしていたローザさんの顔を見て止まった。


……あ。


うん!

びしっと親指を立てて素晴らしい成果をアピールしておく。


いい仕事をした後は気分がいいなー(棒)






もちろん、翌日コールの父に怒鳴り込まれた。

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