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危機俺!  作者: 一集
第一部 イサークの奇行と愉快な仲間たち
1/54

1話 そうだ、ゴブリンを活用してみよう。

『危機的状況で示される人間性が最悪だった俺の、その後。』

『危機的状況で示される人間性が最悪だった俺のその後。の、あと。』

の続きです。

前2作を先にご覧になることをお勧めします。


ちなみに今回は前2作と雰囲気が大分違くなるかも。



俺は一つ、思いついたことがある。


いつもひょいっと現れ、ぼっこぼこにされて捨てられるイニシャルGもといゴブリン。

ゴブリンってのは実にうま味がない。


例えば魔物がモンスターたる所以である『魔石』という鉱物がある。

大体のファンタジーものにはこれが出て来るから、説明はしなくともわかるだろう。


この魔石、様々な使い道があって、その最たる例が魔道具。

地球でいうコンロ、こちらにも似たようなものがある(らしい)。

当然、魔道具。

この魔道具の燃料(推定)として使われているのが魔石。


推定、とするのは当然俺は見たことがないからだ。

こんな山奥の村に魔道具なんて、多分村長の家くらいにしかない。

もしかしたらアランの両親も持ってるかもな。元冒険者らしいし。


ま、どんな理屈で動いているのか知らないのだから仕方がない。

話を聞くに、魔道具は時に魔石の交換が必要らしいから、あながち的外れでもないだろう。


話を戻そう。

ゴブリンの話だ。


最弱の害獣、ゴブリンはこの魔石にすら価値が付かない。

魔石はある、……にはある。

だが小さい。そうだな、例えるならBB弾程度の大きさだ。

使い道がないから売ったとしてもはした金にもならない。

面倒な解体をしてまで、取り出す手間に見合わないのだ。


あるいは肉。

魔物の種類によっては食えるものもある。

希少性や味によっては怖ろしい値段がつけられることもあるようだ。

もちろんゴブリンは、――マズくて食えない。

処理の仕方次第で食用可能ではあるらしいが、それでもエグみがあって臭みが強くて、消化も悪い。子供はまず腹を下すような代物だ。


ちなみにゴブリンの死骸を放置しておくと、腐敗と同時に周囲の草木を枯れさせる。

だからこそゴブリンの死骸はできるだけ遠くに捨てられるのだ。

毒素でもあるのかねえ?


つまりゴブリンは倒しても何一つ利点がない。

そのくせ定期的に間引かないと生活を脅かされる。


――なるほど、嫌われるわけである。


で、俺が突然なにを思いついたのか、と言えば、このゴブリンの使い道についてだ。


豆粒程度とはいえ魔石があるわけじゃん?

売るには価値なしでも、個人的には興味がある。


そんなわけで俺は放置されていた、森深くに捨てられる前のゴブリンを慌てて引き裂いているわけだが……。

さすが豆粒。

砂漠の砂一粒とは言わないが、マジで探し出すのに苦労する。


ちなみに魔物によっては魔石の場所が決まってるヤツもいるらしい。

そう言うのは例外を除いて大体上位種。

つまり雑魚魔物だと、魔石がどこにあるか決まってないってことよ。

ゴブリン? 当然雑魚だね。

確かにこれだけ苦労して金にもならない、となると誰も好んでやらんわなぁ。


ん、ゴブリンの八つ裂き?

ああ、この世界じゃね、子供だってフツーに家畜や魔物の解体やるんだよ。

生活の為。生きる知恵、技術。そういう分類だ。むしろ出来なきゃ困る。

つーわけで、血や内臓なんて見慣れたもんよ(ドヤッ)


とはいえ、対象はゴブリン。好き好んでやるモンではない。

長時間やってると、なんか皮膚がぴりぴりするような気もするし。

なんなん? ゴブリン酸性なん?

え、……菌とか感染とか、大丈夫だよな?

ゴム手袋って便利な代物だったんだなぁ(涙)


離れた場所でやってるとは言え、ちょいちょい向けられる遠くからの村人の目。

「あいつは何やってんだ?」とばかりな視線の痛みに耐えつつ、やっと見つけた魔石は濁った半透明の石だった。

聞いてはいたが本当に小指の先ほどもない。


色と言い、大きさといい、砂利の多い地面に落としたら見つかりそうにないな。

苦労して手に入れたのだから、気をつけよう。


しっかし、これが魔道具の燃料になるとは不可思議なものだ。

不思議石、さすがファンタジー世界。


このファンタジー物質、燃料なのか万能エネルギーなのか増幅器なのか。

わからないから気になる。

大人に聞いてみたが、魔石とはそういうものなのだと言われてしまった。

その正体など考えたこともない模様。


俺の予想はやっぱりエネルギーの塊なんじゃないかと思う。

――そんなわけで実験だ!


このエネルギーとやらはどこまで、何に、どうやって作用するのか。


小難しいことを言ってみたが、要は建前だ。

実はやりたいことがある。


それにこのゴミ魔石が使えたらラッキーだな、と思った次第。


俺は近くの適当な場所を選び土に指で穴をあける。


で、その中にゴミ魔石を放り込む。

そして無造作に木の苗をぶすっとな。


「大きくなりますように!」


パンパンと手を合わせて祈っておく。


観察日記でもつけたいところだけど、残念ながら紙などという高級品もインクもない。

てか、文字が読めない。

もちろん書けない。

日本語ならまだイケるはずだけど、それすら最近は不安を感じていた。


なにせこんな場所だから大して不便を感じた事がなかったり?

元文明人としては由々しき事態だと今更気付く。


……まあ、いいか。


俺は問題を棚上げして村に帰った。


さて、それから数週間、実験は三回目にして成功を収めた。

つまりそれから二匹ほどGを引き裂いたわけだが、一度その作業中に(遠目からではなく)村人とばったり会った。

どうなったかといえば、変人のレッテルが強くなっただけだ。

もう撤回は無理かな……。


一回目はあっさりと枯れた。

Gの死体を近くに放置してたのでその作用と思われる。


二回目は浅く埋めすぎた。

強い雨が降って、苗と共にどこぞに消えた。

場所も悪かったんだろう。

ちょっとは考えようか、俺。


三度目の正直とは言うけれど、木の苗は外部から干渉を受けているとしか思えない速さで成長してくれた。

数週間で低木程度の大きさ。

十分だ。


一定の大きさになってからは成長速度が緩やかになったから根元を掘り返してみたら、魔石は濁った半透明から灰色に変化していた。

もはやただの石にしか見えない。


「吸収されたのか?」


肥料にしては急成長し過ぎだし、やはり何らかのエネルギーなのか?

魔石が木に作用したのか、土に作用したのかはわからないけど、結果よければなんとやらだ。


「うし! そうとなれば苗が必要だ」


もちろんなんでもいいわけではない。

欲しいものは決まっている。


だけど困ったことに、この辺りには生えていない。

ある場所は知っている。

森の中程。

臆病者を自覚する俺では死にに行くようなものだ。


「ん、ん~――?」


助力が必要だ。


「よし、頼んでみよう」


誰にって、アイツらにだ。

森にほいほい入って無傷で帰ってこられる人物は限られている。


大人は生活のために森に入っているわけだから、俺のようなお荷物を抱える余裕はない。

どのみち選択肢はなかった。


俺は今日も今日とて陽が傾いてきた頃に森から帰ってくるアランたちを待ち構えた。

最近では修行がてら獲物まで取ってくるから村人たちには大好評。

少しだけ俺たちの飯は豪華になっている。

アランさまさまだ。


あ、言うてたら丁度帰ってきた。


「よう、アラン! お帰り!」


さわやかに挨拶をしてみたが、当然無視された。

睨まれたから無視とは言わないかもしれないけど。


「どうしたの? イサーク」


かわりにドナが答えてくれる。

おー、ドナー。

相変わらず美人さんだなぁ。

ついつい手がドナの頭に伸びてしまうのは癖なのか何なのか。


「ドナ、そんなやつに構うな」

「優しすぎるのも考えものよ、ドナ?」

「疲れてるんだ、少しは気を遣ってくれよ、子守り係(・・・・)


アランとユリアと、インテリ然とした少年テオの棘のある物言いにドナは困った顔をした。


「テオ、失礼な言い方はやめて。イサークの役割だって立派な仕事よ」


むしろ好き勝手している自分たちの方が村の役には立ってないじゃない。

そんな風にドナは窘めてくれた。


ありがたいけど、窘め方が間違っていると言わざるを得ない。


「なんでそんなヤツを庇うんだ。君の怪我はあいつのせいじゃないか」

「そうよ、それにこれでも村の役に立ってないって言えるの?」


訓練ついでに狩ってきた兎を手にユリアが聞いた。

まったくもってその通りだ。

食い物は何にも勝る手柄である。


うんうんとユリアに同意して頷く俺に、ドナは「もう!」と頬を膨らませた。

なにそれ、かわいい。


これでは話が進まないと、仕方なしにドナは彼らを先に帰して一人で話を聞いてくれることになった。

ありがたや、ドナの方が話しやすい。


「それで、どうしたの? アランが居る時にイサークから話しかけるなんて珍しいじゃない」

「いや、頼みたいことがあってさ。ドナたちにしか頼めない事なんだ」

「!」


ドナが俺の言葉に勢いよく振り返った。


「やるわ!」


ドナさん? せめて話を聞いてからしよう?

ドナの前のめりすぎる返事に、そのうち悪い人に騙されるんじゃないかと心配になる。


「森に入るのについて行きたいんだ」

「森に?」


ドナが不思議そうな顔をする。


「欲しいものがあって、ちょっとこの辺じゃ取れそうにないから」

「つまり採取の護衛をしてほしいって事?」

「ご、護衛!? あ~…ついて行きたかっただけなんだけど、弱いのが一人いるってことはそういう事になるのかな?」

「イサークは弱くなんてないわ」


なにを根拠にこんな頓珍漢なこと言ってるんでしょうかね、この子。

それともドナと俺では「弱い」の認識が違うのか。


「で、何を探してるの?」

「ん~、棘の木の苗が欲しいんだよね」


正式名称は知らない。

けど、時々自生しているのを見る木だ。

地球でいうカラタチを凶悪にしたような外見で、枯木のような色をしている。


それが密集してると、毎回とある童話を思い出す。

眠れる森のいばら姫。

その先に美女がいるとわかってても、絶対に踏み込みたくないと思う俺は本当に村人向きだろう。


以前、棘の木の成木にゴブリンが突き刺さって死んでいるのを見たことがあった。

それくらい強くて長い棘が特徴。

……ってか、ゴブリンはあれに突進したら死ぬだろうという想像すらできないのだろうか。


ちなみに村の近くで見かけると即時撤去だ。

危ないからね!


でもいいと思うんだよ、防衛策としては。

地球でも昔はカラタチを生垣にしてたとか聞いたことあるし。


問題はチビどもが突っ込んでいかないようにしないといけないことだな。

……うわ、やりそう。

ゴブリンか、あいつらは。


まあそれは追々考えるとして、ものは試しにやってみるだけだ。

ダメなら別の方法を考えればいいだけのこと。


以前、「生垣でも作ろうよ」と提案したらあっさりと「そんな素材があるなら自分たちで使うわ」と却下されてしまったので俺なりに考えた結果だ。


ズバリ、素材がないなら作り出せばいいじゃない!作戦ね?


捨てられるだけのゴブリンの魔石と、育つには長い時間がかかる木の苗。

村にとって役に立たないものを使っただけなのだから怒られることはないだろう。


「もちろん、あたしは構わないけど。……もしかしたらイサークが居心地悪い思いをするかも」

「それは覚悟の上だよ」


ドナは遠回しにアランたちの俺に対する態度を指摘した。


もう慣れたから大丈夫。

あいつらも何かと俺に突っかかってくるけど、それで何をするでもない。

闇討ちとか、森の中に置いていくとか、そんなことはしないと知っている。

だって、結局は正義感が強い人たちだから。


「ならアランたちに話は付けておくわ。明日の朝、この場所で待ち合わせしましょう」

「さすがドナ! 頼りになる!」

「もう、調子いいんだから!」


そうして翌日、アランたちは大変不機嫌でした。

なんか、すまんな。


「なんで貴重な時間をこんなヤツのために使わなきゃならないのよ!」

「……ドナの頼みだから引き受けるんだからな、イサーク。そこを勘違いして調子に乗るなよ」


へいへい。


俺は大人しく彼らの後をついて行く。

出しゃばったりしないよ、死にたくないからね。


森もいくらか奥に入ると相変わらずゴブリンが顔を見せる。

けど、まったくもって怖くない。


一目散に隠れるのは邪魔にならないようにだからね!

か、勘違いしないでよっ!


冗談はさておき、アランたちがサクサクとやっつけてくれるのでマジで怖くない。

こいつら雑魚いな、とちょっと勘違いしそうになるくらいあっさりだ。


でも、倒すたびになんで俺を見るの。

拍手でもした方がいいのか?

実行に移したら怒られた。

なぜに?


「どうだ、お前にこんなことが出来るか?」


Gを三匹ほどまとめて切り殺したアランが俺を見ていった。


「いや、無理」


ってか、むしろやりたくないわ!


俺はぶんぶんと首を振る。

その剣すら満足に振れる気がしません。

この細腕を見やがれ!


正直に言ったら拍子抜けした顔をされた。

次の瞬間には真っ赤な顔で怒鳴られる。


「お前に聞いた俺が馬鹿だった!」


だからなんで怒るんだよ!

情緒不安定か!


彼らの足を止めるわけにはいかないから、ほとんどのゴブリンの死体は放置。

もったいない。

だけどちょうど休憩を挟んでくれた時には、いそいそとゴブリンを引き裂きにかかる。


「な、なにやってんの! あんた!」

「ん、解体?」

「そんな小銭にもならない解体なんてしてどうするのよ! 相変わらずワケわかんないヤツね!」


怒鳴られた上に、エンガチョとばかりに遠巻きにされた。

いや、いいけどさ。


「……ユリア、よく考えてみろ。これから冒険者になるとして、解体技術は必須だ。イサークのやっている事にも意味はある」

「そ、そういうことなの? あ~もう、びっくりしたなあ!」

「なんだ、イサークも考えてるんだね。今から訓練とか、さすがイサーク!」

「……く、イサーク、やはり君は他の奴とは違う」


外野がうるさい。

俺は砂漠の砂の中から豆粒を探すのに必死なんだ、ちょっと集中させてもらいたい。


いくつかのゴミ魔石を確保できたのは大変ありがたかったが、なぜか途中からアランたちも解体に加わってきた。


おい、横取りか!?


と思ったらゴミ魔石は放置だ。

どうやら解体を手伝ってくれてるらしい。

いいやつら。

惚れそう。


棘の木に関しては、そう奥にも入らず手に入れることが出来た。

英雄さまの幸運の賜物かな?


いそいそと必要数をゲット。

足りなくなればまた頼めばいいだろう。


村にも危なげなく帰り着いた。


「……お前とはやはり相容れない。だが! ……いや、なんでもない」


別れ際にアランがワケわからんことを言ってきた。

なんでもないなら言うなよ。

と突っ込んだら、いつも通り真っ赤な顔で怒り狂った。

なんか安心した。

怒られてホッとする俺ってマゾなんだろうか。


アランを宥めながら家に帰っていく未来の英雄一行を見送り、俺はチビたちの遊び場でさっそく作業に取り掛かる。


「にーちゃん、イサークにいちゃん」

「あそんでー」

「わーい!」


しゃがみこんだ俺の背中で遊んでるチビたちを放置しつつ、遊び場の外側を囲むように棘の木の苗をぶすっと植えていく。

ま、とりあえずこんなもんだろ。


「ねえ、なにしてんの、にーちゃん」

「おー、お前らこれ触ると痛いから気をつけろよ~」

「きゃー! いたーい! きゃはははは」


アホか。

するなっつったのに即やる。

しかも痛くてなぜ笑うんだ。

ガキはわからん。


まだ苗だから棘も柔らかいものだけど、そのうち凶器になるからな。

マジで触るなよ?


等間隔とは言い難く適当に配置された苗。

俺の性格がよくわかる。

ま、大きくなったら隙間も少なるだろう。

別にいいんだ、ちょっと大人たちが駆けつけてくるまでの間足止めにでもなれば。


一応近付くなって警告の看板でも立てておくか。

……あ、文字が書けない。

しかもみんな読めないから意味がない。


なら絵だな。

ドクロマークでも書けばいいのか、いやここはいっそゴブリンが突き刺さって死んでる絵でいこう。


木炭で木の板に描いた絵は我ながら上手くできた。

と思ったのに、ドヤ顔で披露したらチビたちにリアル過ぎて泣かれたので即撤去になった。


ええ~、なんでだよー!?

これ以上なくわかりやすいじゃんか!


「なに考えてるの!」


シャルとドナに説教されたけど。え、待って、俺悪くないよな?

そうだ、俺の絵の才能が悪いんだ!











なんとなく書いてみた。どうなるかは正直わからない。

超展開があっても気にしない方推奨です。

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