001 音
「power down」
モニターは薄暗い光で俺を照らしていた。
乱戦の中、友軍部隊からはぐれたのが運のツキだったか・・・
随分長い時間、俺は待機していたのだが動かない。HQから通知もこない。むしろ機体のモニターが死んでいるから来てもわからない。泥沼だ…
唯一の救いは機体の外でついて来ていた騎士型のイジェクトボディ同士の剣戟音が聞こえることだけだが。
「システムエラーとか、マジで運がないなぁ」
コントローラーに手を入れて動かしながら魔導士タイプβと戦闘した時の反省をしてみるが魔導士系の機体はハイレート機体と言われるほど強力で特に遠中距離での命中補正が高い。
なんて考察していると戦闘が終わったようだ。
「おーい!聞こえるかー!」
叫んでみるが、足音しかしない。
「こりゃ、無理かなぁ」
「そこの機体、所属はどこだ。」
「所属?同じ陣営だろ」
「答えろ!」
「あ、マイクも死んでるのか。しかし所属とかあったか?」
「後方部隊!こっちにこい。鹵獲機体一だ」
足音が遠ざかる。しばらくするとモーター音が聞こえてきた。
甲高いモーター音が近づいてくる。最早、理解しようとしていないだけなのだが。ここの後方部隊とか車両はなかったはずなんですけど…
「おい!お前ら早く降りろ。蹴り降ろされたいのかい?」
「整備長、ちょっと待ってくださいよぉ〜」
「怠けてんじゃないよ!はやくこの青い鹵獲機体を荷台に載せな」
「了解!おい、クレーン回せ!残りの奴らはワイヤーもってこい!」
「クソ!一体なんだってんだよ」
光がない暗い機体の中で何度目かわからない愚痴をこぼしながら只々、恐怖するしかなかった。
「整備長!こいつガワだけで中は大丈夫みたいですよ」
「これは搭乗員も生きてるかもね」
「開けます?」
「馬鹿かいあんたは。動けないんだからこのまんま持って帰るさね」
「了解、一応ブロックはワイヤーで固定しときますかね」
「荷台に載せてからやりな。ここは敵領地なんだからゆっくりしてられないよ」