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止まらない

楽しんでもらえたら嬉しいです!


次の日。


委員会2日目、

わたしは幸田くんと一緒に、花壇の掃除をしていた。


「大体、高校にまでなって花壇ってなかなかないよなぁ〜」

「そうだね」


5月も半ばになって、そろそろ少し運動しただけで汗ばむような季節になっていた。


わたしたちが任されたのは、草むしり。

暖かな気候が続いて、草は伸び放題だった。


「今日の現国、眠かったな〜」

「幸田くんいつも寝てるよね」

「あの先生声からα波出てるんだよな〜」


何気ない会話が楽しい。自然と笑顔になれる。


自分にはとても縁のないはずだった人との共同作業。突然訪れる非日常。


わたしは草をむしりながら、緊張を隠せているか気になって仕方がなかった。


昨日の帰り、このままだと彼に恋をしてしまうと自覚した。

優しくされて好きになるなんて、我ながら単純すぎる。


それに、あたしはきっと相手にされない。

わかりきっていることだから、絶対好きになったりしない。

このままおとなしく委員会を終えて、このまま卒業する。


大丈夫、まだ間に合う。


昨日、お風呂に入りながら決意したこと。

絶対、幸田くんを好きにはならない。


手は動かしながら、幸田くんは、沈黙が無いように話を振ってくれる。


「ナカムラ、元気?」

「うん、毎日ダラダラしてね、元気だよ」

「それ元気って言うの?」

「ん〜〜」


今度見に行っていい?って言ってくれないかな。って!何期待してんのわたし!!


「大体この量で2人って、ブラック企業だよな!」

「ブラック企業って」


あ、流れた。

でも例えの仕方に思わず笑ってしまう。

幸田くんも笑う。

2人で同じことで笑えるのが嬉しい。

だめだわたし。これ、もう…。


だめ。だめ。

草をむしる手に力が入る。


すると幸田くんは、わたしのに突然言った。


「中村さんは、笑わないようにしてるの?」

「え?」

「笑っちゃだめなの?」

「いや、別に…」


何を聞かれているのかわからなかった。


「面白かったら笑えばいいんだよ、中村さんもね」

「え?」


思わず草をむしる手を止めて、幸田くんを見る。


「いつも笑った後、慌てて笑わないようにしてるように見える」

「そ、そうかな…」

「うん」


あくまで幸田くんは草をむしり続ける。

放課後から作業して、気がついたら日が傾いている。


雑草もだんだん無くなってきている。


「もっと笑ったらいいのになぁと思うよ」

「え?!」

「…笑った方がいいよ」


それは、どういう…

まじまじ見ると、幸田くんは自然に気がついて、


「そんな見ないでよ」


と笑って言った。

人懐こい、犬みたいな人。だから周りに人が集まる。


「…幸田くんはすごいね」

「えー?」

「うん…すごいよ」


わたしだだたら、わたしみたいな子には話しかけない。委員会の仕事も、こんなに楽しいものにできない。


「俺は中村さんのがすごいと思うよ」

「え?」


何を言ってるのかこの人は。


「いつも教室で本読んでてさ、凛としてる」

「り、凛としてなんか…」

「かっこいいな、って思って見てたよ」


なかなか笑わないけどね。

そう言って、幸田くんは笑った。


「そんで、中村さんはコシヒカリみたいだよねー」


突然のことすぎて、何を言われているのかわからない。

コシヒカリ?米?


頭にハテナマークが浮かんでいるわたしに、また幸田くんは笑った。


さっきから幸田くんが眩しい。目の中に光が入ったみたいに。

それは多分夕日のせいじゃなくて。


「ツヤツヤしてるよね。髪とか、目とかいじってなくて。」

「…?」

「すっごい、綺麗だなって思うよ」

「…っ」


自分でもわかる。

顔が真っ赤だ。

でもそれは夕日のせいだ。

そうに決まってる。


何も言えずに固まっているわたしをよそに、


「よし、じゃあ終わろう。これ捨ててくるね」


と、抜いた雑草を入れた袋を持って、行ってしまった。



しゃがんだまま、頬を両手で挟む。

どうしようもない、こんなの。


わたしって単純だ。

顔が赤いのは、熱いのは…


綺麗なんて言われたことなくて、自分を綺麗だなんて思ったことも無くて。


綺麗だなんて…しかも、見てたなんて。


頬の手を顔に移して、顔を覆う。


「無理…しんどい…っ」


呻くように出た言葉。


すると、ガサ、と足音がした。

顔を上げると幸田くんが戻ってきていた。

少し心配そうな顔をしている。


「…しんどいの?」


慌てて立ち上がる。


「ううん!大丈夫!帰ろう!!」

「?」


幸田くんは、自分の言葉がわたしを惑わせてるなんて思ってないんだろう。

そう言ったらどう思うだろう。わからない。

今の自分の気持ちが好きに入るのかもわからない。


けど、1つだけ言えるのは、

わたしが幸田くんをもっと知りたいと思ってるってことだ。


幸田くん。わたしはあなたのことをもっと知りたいです。


あなたは、わたしのこと、もっと知りたいって思ってくれてる?


活動報告書を書きに教室に向かう。

わたしの少し前を歩く幸田くんに、心の中で話しかける。


幸田くん。


もし。

もしあなたをわたしが好きになったら。


あなたはそれでも、今と変わらない笑顔を向けてくれる?


話すようになってまだ2日目なのに、そんな願いをかけ始めた。



*



帰り道。


「そういえばさ」


幸田くんがわたしに話しかけた。

考えていたことが幸田くんのことで、ビクッとなってしまう。


「な、なに?」

「ナカムラに会いたいんだけど」

「え?」


ナカムラって猫の方?だよね?

ここに来て猫の名前がややこしすぎることを実感する。


でも、今わたしは幸田くんと一緒だし…そうだよね?


「いいよ」

「ほんと!?やった!!」

「また今度ね」

「うん!」


そしたら幸田くんと居られる時間も増えるな。

なんでそんなことを考えてるあたしはもう、幸田くんのことが好きなのかもしれない。


絶対、叶わない。


幸田くんがわたしに優しく接してくれるのは、同じ委員会だからだ。


委員会が終わったらきっと、しゃべることは無くなる。


もし、ナカムラと幸田くんを会わせる約束をしたら、委員会が終わっても、話す機会があるかもしれない。


小さな約束に、わたしはとても大きな期待をしていた。


そんなわたしの心を知るはずもなく。

幸田くんは、駅前でまた笑顔でわたしに手を振って帰って行った。


わたしはそこからまた歩いて、家に帰る。


ナカムラは、またお気に入りの場所で気持ちよさそうに寝ている。


「ナカムラ〜」


無視。


「ナカムラに会いたいおにいちゃんがいるよ」


そして、ナカムラの横に座って、ナカムラを撫でる。


もう家に着いたかな。

一緒にいても離れても、思い浮かぶのは彼のことだけだった。

書きたいことがありすぎてまとまらないとはこのことだなぁと思いながら書きました。


誤字脱字は温かい目で見ていただけると嬉しいです。

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