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中年独男のオレ達が、何の因果か美少女冒険者  作者: 明智 治
第四章  三匹の黙ってれば美少女 暗い闇の中に潜る  の話
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04  『それは 冒険者達の日常』

 そして今、ギョクたち見た目詐欺三人と二組の冒険者たちは、揃って王都近郊の林の中を進んでいた。丁度スズが、学園で教師の質問に答えていた頃のことである。


 王都から徒歩で丸二日ほど進んだ先にあるこの林の中を進めば、もうしばらくで今回の目的地である遺跡が見えてくる。

 先頭を進むのは探索を得意とするメイズ。ゴースとアカザの前衛部隊が続き、少しだけ距離を開けてギョク、カガミ、モネーの女性陣三人が歩いている。最後尾についているのはツルギだが、これは女性陣の中で最も防御力が高いとの判断である。

 ぶっちゃけて言えば、回復の使えるカガミの方が継戦能力は高いのだし、そもそもギョクやカガミを女性陣に含めて良いのかという根本的疑問も生じる。だが、その辺りの詳しい内情を知りようも無いゴースたちの判断としては、この布陣に疑問の余地は無いのであった。



 特に危険な区域と定められているわけではない森の中を進みながら、隊列の真ん中あたりからきゃぴきゃぴとした女性の話し声が聞こえる。

 話好きと見える好きなモネーにつられて、緊張感の薄いカガミとギョクまでもが、他愛無いお喋りに興じていた。


「へぇ。そんじゃ、お前さんとアカザは、以前から組んでるってワケじゃないのか。『相棒』だなんて言葉を使ってるから、てっきり長いのかと思ってたぜ」


「私が王都に移ってきたのは二ヶ月くらい前の事だもの。彼と出会ったのはそれからしばらくして、こっちで受けた依頼でのことよ。その後、あっちから一緒に依頼を受けないかって誘ってきてくれたの」


「なるほど、最初は向こうから……。でも、本当にここ最近のお話なのですね。その短期間で『相棒』と言うのは、ちょっとだけ意外です」


「もぅ、二人ともわかってないわねぇ。良い? これぞって男の子を見つけたら、こっちからグイグイ行かなきゃダメなのよ。これまでは彼も一人でやってたみたいなんだけど、これから先、いつ何処の女狐に目を付けられるかわかったものじゃないわ」


「だから、お前さんの方から相棒扱いして、アカザとの距離を縮めにいってるってワケか……。いやはや、涙ぐましいモンだな」


 自分の押しの強さに胸を張るモネーに、ギョクは呆れた口調で返す。だが、そんな魔女っ子の反応にも、モネーはフフン、と鼻を鳴らしていた。


 今回の依頼が始まった当初は、まだギョクたちにも敬語を使っていたモネーであったが、一晩明けた今では随分と気安い態度である。そもそもギョクやツルギが、初対面からあんな感じで振舞っているのだし、見た目だけならば年下にも見える三人なのだ。

 モネーは既に、同性の年下に対する接し方に切り替わっていた。



「何言ってるのよ。私みたいな女の冒険者にはとっても重要なコトなのよ? こんな危険な仕事、いつまでも続けていけるものじゃないんだし、いつかは引退しなきゃならないわ。その時までにキッチリ相手を捕まえとかなきゃね」


「なるほど……確かにこういう仕事ですもの。先を見据えるなら、しっかりとしたお相手を見つけるのも必要なことかもしれませんわね」


「でしょ? といっても、二人くらい美人なら、こぉんな心配する必要は無いのかもねぇ。……二人とも、自分から行く必要なんてないくらい引く手あまたでしょ?」


「うふふ。そんなことはありませんわ」


「またまたぁ。あ、美人の余裕ってヤツ? 憎ったらしいわねぇ、このこのぉ」


 口元に手を添えて微笑む神官少女と、そんなカガミをうりうり肘で押すモネーである。一見すると乙女のじゃれあいに見えなくもないところが恐ろしい。

 一方のギョクは、清楚な乙女を装った仲間の正体を思い、乾ききった笑いをこぼしていた。


 ちなみにだが……ここまで三人とも、心持ち声量を抑えて話しており、前を行く三人の男達に会話の内容までは聞こえていないようだった。まぁ、もし聞こえていたとして、話のネタにされているアカザがどんな表情をしているのかは、後ろを行くコイツ等には決してわからないのだが。



「まぁあれだ、モネーさんとアカザの関係は良くわかったよ。イロイロ頑張ってるってコトもな。だがまぁ……少なくとも俺には、そういうのは必要ねぇな」


「あらそう? ま、ギョクちゃんにはちょっと早い話だったかもね。でも安心なさい。きっと貴女にも、いずれ素敵な男の子が見つかると思うわ」


「あら……。いつかカッコいい男の子が見つかるんですって、良かったわねぇ」


「だーかーらっ、俺はそういうのいらねぇんだってば。ってかカガミ、お前も一緒になってからかってんじゃねぇよ」


 思わず真剣に拒否ってしまうギョクであった。だがそんな必至の抵抗も、モネーには、まだ恋に目覚めていない女の子の強がりだとしか映っていない。


 確かに、十代中ごろの女子が色恋方面の話題を恥ずかしがってしまい、『自分には関係ない』と言い切ってしまうのは良くある話だ。しかも日頃から荒事に身をおく冒険者では、そう言った強がり半分、照れ隠し半分の発言をする女性が多いのも事実である。

 正式な冒険者である以上すでに成人はしているのであろうが、それでもまだ幼いように見えるギョク。そんな恥ずかしがり屋の強がりさんだと判断されてしまったのも、言ってしまえば道理なのであろう。


 もっとも、内情を全部わかっているハズのカガミがモネーと一緒になって笑っているのは、こんな風に女の子として弄られているギョクの心情を、わかった上での大笑いなのだが。



「でもギョクちゃん、男の子に興味がないってのはまだ良いとして、それでももう少し女の子らしくした方が良いわよ? せっかくそんな、お人形みたいな顔立ちしてるんだから、もっと活かしていかなきゃ」


「い、活かす?」


「そうよ! ギョクちゃんがお淑やかな感じでにっこり笑ったら、きっとどんな相手でも、イチコロで言うこと聞かせられちゃうわよ? だって、こぉんなに可愛いんですもの」


 と、モネーは後ろから両肩越しに抱きついて、わたわたするギョクを可愛がりはじめた。いきなり物理接触を行ってきた女性冒険者に、魔女っ子も思わず赤面してしまう。

 カワイイを連呼されたことで顔を真っ赤にしているように見えるギョクであるが、その理由が背中に当たる感触によるものだということを、肝心のモネーだけが知らないのであった。


 力の問題だけでいえばとっくに振りほどけているのであるが、何せ相手はまだ若い女性だ。いかに冒険者といえど、無理やり引き剥がして傷つけてしまっては良くないだろう。

 これが本音か建前なのかは定かでは無いが、それでもひとしきりモネーに弄くりまわされていたギョクは、ようやくといった体で彼女を振りほどいた。はぁはぁと荒い息を吐きつつも自分から距離を置く魔法少女の姿に、モネーは残念そうに首をすくめた。


「ありゃりゃ、逃げられちゃった。お姉さん悲しいなぁ。……でも、少なくとも言葉遣いはちゃんとした方が良いと思うな」


「べ、別に良いじゃねぇかよ。誰に迷惑かけてるってワケでもねぇんだしさ。それに、ツルギだって男言葉使ってんじゃねぇか。あっちは良いのかよ、あっちは」


「ツルギさんはあんまり気にならないのよねぇ。なんだろ、やっぱり騎士っぽいからかな? でもギョクちゃんは、カッコいい系目指してるわけじゃないんでしょ。そんな可愛い服装してるくらいなんだし」


「いや、この服はだな? ちょっと理由があってだ……」


「でもギョク先輩。そういう系統の服装しかしていませんわよねぇ」


「てめぇッ!」


「ほら、やっぱり好きで着てるんじゃない! だったらやっぱり女の子らしくしないとダメ。もうちょっと大人になったら、そこまでのフリフリは着られなくなっちゃうんだよ? せっかくなら可愛くしてなきゃ勿体無いわ」


 そして、モネーによる女子力向上トレーニングの一環として、先ずは一人称を『俺』から『私』に改めるよう特訓を施されるギョクであった。

 押しの強いモネーの迫力に負け、


「わ……わた。わた、し?」


「もっと可愛くよ! ちょっと語尾上げてっ!」


 何度も『私』を連呼させられるギョクの姿に、カガミが唇をプルプルさせていたのは言うまでもないことであった。




(あぁ、此処にデジカメが無いのが悔やまれる)


 もしも録画機器があれば、この場に居ないスズにもの様子を見せて一緒に大笑いしてやったのに。そんなことを考えていたカガミがふと前方に視線をやると、苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見つめるメイズの姿があった。


「テメェら……もうちっと緊張感持ちやがれ! 遊びに来てんじゃねぇんだぞ」


「っと、ゴメンなさい。少しふざけ過ぎてしまいましたわね」


 即座に頭を下げるカガミであったが、モネーは唇を尖らせて反論する。


「別にこれくらい良いじゃない、仲間同士で親睦を深めるのも大切よ。それに、何か居たってワケじゃないんでしょ? この場所って、遺跡の中以外での魔物の報告もないんだしさ」


「そりゃその通りだが……。っても、いつ何があるかわからねぇだろうが!」


「はいはい。ちゃんと遺跡についたらしっかりしますよーだ。ね、ギョクちゃん?」


 不機嫌を隠そうともしないメイズに、しぶしぶと返事を返すモネー。なおも女性陣にキツイ目線を向けてくる小男の隣では、ゴースとアカザが曖昧な苦笑いを浮かべていた。

お読み頂きありがとうございました。




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もし宜しければ、「モネー。そのバストは豊満であった」

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トイレでアレする花子さん

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