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イベント・チェンジャーズ   作者: ギリギリ男爵
33/39

シャングリ・ラ

 灰色の雲に、アボダの森がドーム状に被われた頃、地下施設の大型力場発生装置が起動した。

 電力を確保するため、結界・遮蔽装置や、村の生活用電源は切られ、全てこの大型力場発生装置試作一号機にまわされている。


「よっしゃあー!

 ようやく起動したぞい!

 だがしかし、こっからがワシらの腕の見せどころじゃぞ!」


 戸倉博士が、地下施設のエンジニア達にゲキを入れる。

 大型力場発生装置の起動で、ケーブルで繋がれたコメーティア隕石が反応し、発光を始める。だが、発光を始めたのはそれだけではなかった。

 日本のつくばから脱出するときに使われた、ティベルト地下施設の転移ゲートも、わずかに発光を始めていた。

 出入口のつくば側を破壊され、今はどこにも繋がっていない、機能を停止しているはずの転移ゲート。

 しかし、大型力場発生装置の出力調整作業に追われている戸倉博士達は、それに気付いてはいなかった。

 戸倉博士達は今それどころではない。

 ローグ共和国の未来は、戸倉博士達にかかっていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ティベルト地下施設のさらに、さらに地下。

 コラルン山脈の地下深くに広がる大空洞。

 ティベルト仏教に伝わるシャンバラ、あるいはシャングリ・ラと呼ばれる地底世界。

 魂の世界に有ると云われていたその場所は、実は現実世界に実在していた。

 ティベルト仏教の指導者は、ダイダ・バッタを襲名するときに、その広大な地底世界の正確な場所を代々秘かに伝え続けてきたのだ。

 しかし、そこは伝説のシャングリ・ラ。

 正確な場所を知ったとて、誰もがおいそれと行ける場所には無い。

 転移ゲートを使うにも、一度その場所に行って、ゲートの設置工事をしなければならない。

 そこで、ローグ共和国建国と同時に、イベント・チェンジャーズの調査隊が組織され、決死の探索が開始された。


 ――3ヶ月後、地下迷宮を走破して地底空洞を見つけ出した調査隊が、そこに転移ゲートを設置。

 地底空洞との転移ゲートの出入口は、アボダ遺跡の地下シェルターに設置された。

 しかし、地底世界でローグ共和国5千人が生活するには、環境を整えなければならず、メギストシィの魔者殲滅作戦が間近に迫っている今は、時間の猶予がない。

 そこで、ローグ共和国の生活空間を丸ごと、地底空洞に転移させる計画が立案される。

 そのような大規模空間転移は通常のイベント・チェンジでは不可能だが、大出力の大型力場発生装置試作一号機とコメーティア隕石を掛け合わせれば不可能ではない

 戸倉博士を中心に、前代未聞の計画は始まり、その過程で“タイガー&ドラゴン”といった新たな戦術も生み出される事になる……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 砂漠で演奏を続ける滝の背後で、雲ドームの表面に稲妻が走り出す。

 大型力場発生装置が生み出す強力なエネルギーが、雲ドームに注がれていく。

 ローグ共和国まるごとの地底世界シャングリ・ラへの大規模空間転移が始まろうとしていた。


 クンバカルナは、吾妻に両腕部を斬り落とされていたが、未だ健在。

 自己修復用の独立生体パーツが、内部をウネウネとうごきながら、胴体の損傷箇所を修復していくが、吾妻の攻撃に対応仕切れてはいない。

 吾妻の勝利はもはや確実と思われるが、クンバカルナはしぶとかった。

 縦横無尽に飛び回り攻撃を仕掛ける吾妻に、目からのビームで応戦。

 吾妻は、そのビームを回避、あるいは魔刀で斬り払いながら、負けじと口から火を吹いた。


 ヤトハとの模擬戦の時とは比較にならない.高威力の吾妻のの熱線が、腹部の駆動系制御中枢部に直撃し、クンバカルナが地面に両膝をつく。

 吾妻が、止めの脳天幹竹割りをぶち込もうと魔刀を上段に構え、威力を高めるための“タメ”を作った一瞬、クンバカルナの半壊していた頭部グラリと動いた。

 バカンと口を開け、かろうじて射出が可能にまで修復されていた重力砲の砲身がせり上がってきている。

 その先には、滝と雲ドームに被われたアボダの森。

 その時、塚元は吾妻の止めの一撃からマッド・スレイドを護るため、クンバカルナの胸部重力制御室に防御結界を張っており、星宮はヤトハを介抱しつつ悟とドーラを防御結界で護っていた。

 この局面で、重力砲の二撃目が有るなど、誰も予想してはいなかった。


「いかん!」

 吾妻と塚元が同時に叫ぶ。

 滝がそれに気付き、砂漠の砂を凝縮させて“岩の竜”を作り出しクンバカルナに放つ。


「イヤアァァァァ!!」


 吾妻の渾身の脳天幹竹割りが、クンバカルナの頭部をを真っ二つにするのと、重力砲の射出が同時だった。

 射出中の重力砲を真っ二つにされたクンバカルナは大爆発を起こし、吾妻が閃光に包まれる。

 射出された重力砲は、岩の竜を消滅させて、次元断裂を残す。

 次元断裂から凄まじい風が吹き出し、空が恐ろしい色彩に染まる。



 雲ドームの中では、大規模転移が始まり空間が不安定に揺らめいていた。

 そんな中、大型力場発生装置に付きっきりで出力の調整作業をしていた戸倉博士が「パリーン」という音を聞いた。

 何事かとそちらを見ると、神棚の中央に飾ってあったケースから【蛮殻】が青白く光りながら勢い良く飛び出し、あっという間に何処かに飛んでいってしまった。

 一瞬、呆然とそれを見送った戸倉博士は、すぐに気を取り直し作業に集中する。


「鉄君が助けにでも来てくれたのかの?」


 そんな事を呟きながら。

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