巡査・頭山怛朗の活躍(第六話 巡査・頭山怛朗、いい警官を演じる?!)
「同僚の杉下香里さんの死体が発見されました」と、警部補が言った。「それにしても、杉下さんは凄い美人だった。それで、殺人と思われます。事件解決のためご協力をお願いします」
「勿論」と、私は答えた。
「失礼な質問をするかも知れませんがご勘弁願います}
「分かりました」
「昨日の夜十一時ごろ何処に居られましたか? 」
「ベッドに入ったころです。独り暮らし! アリバイはなし。逮捕しますか? 」私は少しおどけて言った。
「まさか! 平日の夜の十一時。家族がいても有効な証言にはならない。アリバイがない人間を一々逮捕していたら留置場はすぐに一杯になってしまう。失礼ですがあなたと杉下さんの関係は? 」
「男と女の関係だったか? 答えは“No! ”。残業して帰る時間が一緒になって二・三回ファミレスに行ったことはあります。他に映画とドライブに一・二度。それだけです」
「あなたと私には共通点があります」と、巡査が言った。どこかで見たことがある。バナナマンの日村だ!
バナナマンの日村似の巡査が続けて言った。「イケメン同士です」
“この野郎、私をからかっているのか? ”と思った 警部補が申し訳なさそうにした。
「それに背は高く、学歴も高く仕事もできる。それにお父さんはQ県の県議会議長。完璧!!」
「親父は関係ない。だから私はこの県に来て、I社に入った」
「でも、あなたはサラブレッド。いやでも、女の方から言い寄ってくる? 」
「そうとは限らないし、私は向こうから寄ってくる女には関心ない」
「ガードが固い女ほど燃える。分かります」と、バナナマンの日村似の巡査。
私は真剣に思った。“この男、間違いなくわたしをからかっている! ”巡査の横で警部補が申し訳なさそうにした。
「私にも経験がありますから分かりますが……」と、日村似巡査が同じ台詞を繰り返した。「あなたが杉下さんに声をかけて断られているのを見たのを目撃されています。何度も……。単に美人だけの普通の女がサラブレッドの自分に関心を示さないのは面白くない。サラブレッドとしてのプライドを傷つけられ面白くない」
目が宙を舞ったのが分かった。でも、それは一瞬のことだ。
私は平然と言った。……つもりだった。「そうんんですか? 同じイケメンでもそれぞれ違うものだ。私はそれくらいで傷つかない、決して!! 」
「私の父は普通のサラリーマン、御崎馬(※)のイケメンですが、あなたはイケメンのサラブレッド」と、日村似巡査。「御崎馬は頑丈ですが、サラブレッドは傷つきやすい。女が何かを言う」
……。沈黙の間が流れた。
「気がついたら、足元に女の死体!? 」
「“消えて! ”だ」私は思わず叫んだ。
サラブレッドが御崎馬に負けた。御崎馬の名は「頭山怛朗」と警察手帳とあった。“ずさんだつろう?”
こうして、私は終わった。でも、楽になった。サラブレッドを続けなくてよくなった。
※御崎馬(みさきうま、岬馬)は、宮崎県串間市のつい都井岬に生息する日本在来馬の一種。国の天然記念物に指定されている。(Wikipediaより)