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93:夜の昔話(後編)

『天降四魔竜』

 こいつについてはルルイエからある程度は聞いてる。

 ずっと前にリアムが話してくれたリバーワイズさんが初期に造ったっていう竜甲兵を指す言葉だって事もね。

 今ある竜甲は全てリバーワイズさんの弟子が造った竜甲からの派生品だ。

 リバーワイズ卿オリジナルのほとんどは、過去二百年間の間に全て使用不可能になって、今では四体しかない。


 その強さは、今の竜甲とは全く比較にならないので、まるで『天から降りてきた魔竜』の様だ、と云う意味で『天降魔竜』と呼ばれているんだって。

 因みに『四』って数が付いてるのは、現存する甲体の数からだそうだ。


 そこで俺からローラへの質問が、

「リバーワイズさんが造った『天降四魔竜』って、今、どこにあるか知ってる?」

 だ。


 これにはローラも妙な顔付きになる。

「なんでそんな事、聞くの?」


「いや、ローラが何を知ってるかって事を知りたいんだよ」


「そうねぇ。それについては、父さんと話をしたことなかったから良くわかんないなぁ。

 でも……」

「でも?」

「世間一般で居場所が知られてるのは、三体だけでしょ?」


「うん。それはピートから聞いた。

 まず、一体はこの国の首都にあるんだよね。

 王族のみが動かせる甲体『スコフニュング』

 次に西のエイダル王国の『ティソナ』

 それから、三体目が北のラゾーナ神聖国って国にあるって言われてる『ナズ』

 で、問題の最後の一体だけど、こいつは在処(ありか)どころか名前すら知られてない。

 唯、リバーワイズさんは存在を否定してないから、在るのは確実だって言われてるんだよね?」


 俺がここまで話したところで、ローラは大きく頷く。

「そう。その通りよ」


「その最後の一体ってのが不思議なんだよなぁ。

 何でリバーワイズさんは、そいつの在処(ありか)をはっきりさせないんだろう?」

 首をひねる俺に向けてローラは事も無げに、おそらくは正解と言える答を教えてくれた。


「多分だけど、戦争を未然に防ぎたいんでしょうね」

「?」

「どの国が持ってるか分からないから、小さな国が『うちが持ってるぞ』って言い張る事も出来るわ。

 ラゾーナ神聖国の『ナズ』だって、あの国がホントに持ってるかどうかなんて知れたもんじゃないのよ。

 あくまで自称してるだけで、見た人間なんて居ないわ」

「な~るほど! 最後の一体がどの国に在るのか分からない状態で適当な国に迂闊に攻め込んだら、本当に『魔竜』が出てくる。

 こりゃ、確かにシャレにならないよなぁ」

「でも、反面、それを狙って戦を仕掛けられる可能性だってあるわ」

「うん。極端に小さい国なら、持ってる方が逆にヤバイかもね。

 そうかと言って手放すには惜し過ぎる切り札だし……」

「だから、今あんたが上げた三カ国以外の国は、“持ってる”とも“持って無い”とも言わない」

「駆け引きだなぁ」


 ふむ、つまり四体の『魔竜』は各国に分散してて、リバーワイズさんのみが唯一整備や修理が可能な人物って事だ。

 だから、『魔竜』を持ってる国は彼を国賓として遇するし、持ってない国は影からだけど暗殺を企む。

 勿論、新しい魔竜を造らせる方法を必死で考える奴らだって少なく無いだろう。


 段々、この世界での竜甲とリバーワイズさんの関係や、卿の敵対者がローラ達を人質に取りたがる意味が分かってきた。


 しっかし、知れば知るほど……、やばくないか、これ?


「で、訊きたいことはそれだけ?」

 ローラの声で我に返った。

「あ、ああ」

「じゃあ、お父さんに関わる事で話したい事って?」

 そう言って急かされると、逆に話しづらいなぁ。

 でも、話さないって訳にはいかないし……。


 前置きをして話し始める。

「あのさ、まだ証拠は無いんだ。ピートが言ってるだけだからね」

「なに?」

「ダニクス侯とリバーワイズさんは、どうやら『魔竜』に係わる何かの秘密を共有してるらしい」

「は? 何、それ?」

「いや、そいつが今回の内乱騒ぎの原因かもしれないって話なんだ」


 ピートとルルイエは今回の内乱騒ぎにダニクス領と東側で年中国境争いを続けてる『スルガ連邦』って国が係わっているんじゃないかって言う。

 つまり、スルガ連邦はダニクス候と普通に戦ったんじゃあ勝てそうにないので、内部から崩そうって腹らしい。

 辺境伯のダニクス候は、その罠に掛かった可能性が高い。


 となるとダニクス候と秘密の繋がりを持つリバーワイズさんまでもが、いずれは王宮から疑いの目で見られる事になってしまうだろう。

 下手すりゃ、その連邦とやらのスパイ扱いにだってされかねない。


 これがピートの出した結論って訳だ。


 ここまで話し終えると、ローラの顔色が真っ青になってるのが分かる。

「もしかして父さん、無事に帰ってこれても、今度は王国そのものから狙われる事になるのかしら……」


 あっ、ヤバイ! やっぱ、この話するの少し早かったかも。

 慌てて取り繕う。

「いや、まだホントかどうかなんて分かんないよ。だから、今度の旅ではそいつを確かめたいんだ」


 小さく頷いたローラの肩にシーツを掛けて少しでも眠る様に勧めると素直に横たわる。

 それから、ゆっくりと目を閉じたけど、今、本当に眠っているんだろうか?


 大きく息を吐いた俺も、コートのフードを被って横になる。

 ピートとの交代まで少しの眠りに入った。





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