表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/126

09.狩り①


 死体の側にリュックがひとつあった。

 それから、右手に握られたままの剣。

 刃渡りは四十センチぐらいだろうか? あまり錆びてないと思うんだが、たいまつの明かり程度ではよく分からない。


 ゲームだと、これぐらいの長さの剣をショートソードって言うんだよな。

 普通の剣はもう少し長かったと思う。

 あんまりゲームは好きじゃなかったけど、でも時間つぶしに少しやったから一応は覚えてる。

 普通の鉄の剣だろうか。

 確か『鉄の剣』の上のクラスが『(はがね)の剣』だ。


 鋼の剣なんてものを扱えるレベルなら、ゲームだとあの程度の兎はやっつけられると思う。

 狼はどうだろうか?

 引きこもってる間、ネットで調べて「居合抜き」とか「八相の構え」も練習した事が有る。

 結局、ケンカに負けたくないって気持ちは無くして無かったんだな。

 自己流だけど練習だけはしたんだから、上手くやれば大丈夫とは思うんだけど……。


 でも片手剣は知らないんだよなぁ。どう使えば良いんだろう?


 う~ん。上手く使えても、狼が四頭もいたら、やっぱり無理かな?

 ゲームと現実は違う。

 マンガや本と現実が混じった事で酷い失敗をしたんだ。

 あの時は引きこもるくらいで済んだけど、今度は命が掛かってる。


 いい加減な考え方をするのはよそうと思う。


 まあ、真面目に考えても、俺にはこれが『鉄』か『鋼』かなんて分かるはずもない。

 大体、鉄と鋼って何が違うんだろう?

 日本刀は『鋼』って聞いた事があるなぁ。


 それはどうでも良いか……。

 とにかく、これを使わせてもらう事にする。


 男性の死体にしっかりお辞儀をして、「使わせて下さい」と断って入り口へと向かった。


 もう、あの死体を怖いとは思わなくなっていた。

 いつか、この世界の人と出会って、きちんと生活出来る様になったら、ここに戻ってこよう。

 そして、墓を作ってあげよう。



 入り口まで出て来る。

 やっとリュックを開けてみる事が出来る。

 ちょっと楽しみだ。


 金具やベルトは使われていないもので、(かぶ)せた(ふた)の部分を(ひも)で留めてある。

 まず、ナイフが一本。

 ミイラが出来るほどだから洞窟内は湿気が少なかったのだろう。

 ほとんど()びていない綺麗なままだ。

 次に紙に包まれた何かが出てきたが、これはボロボロになって崩れ落ちた。

 食糧だったのかな?

 

 それからビンが二つ。

 あまり出来は良くない。

 なんというか、古くさい感じだし、ガラス製の(ふた)も紙と布で留められている。

 中身は薄い水色とオレンジ色の液体。

 今は開けない方が良いだろう。

 どうせ中身は理解できないし、万一にも毒だったりしたら大変だ。


 最後に四冊の本と二冊のノートを見つけた。


「やった!」

 少しでもこの世界について知る事が出来るかもしれない!


 が、開いてみて分かった。

 俺は相変わらず馬鹿でマンガやゲームと現実の区別が付いていない。


『&%###I=¥‘!<+`*`&$Z/・・・・・・』


 何が何だかさっぱり分からない。

 ああ、そう言えば、“声”はこう言ってたっけ。


『言葉や文字が違うことも含めれば、生きることは更に難しいでしょう』


 がっくりとうなだれる。

 そう言えば『命の価値が安い』とも言ってたね。

 本当に人に会えるんだろうか?

 いや、会った途端に殺されたり、とか?

 怖っ!


 目が回ってきた。

 ショックが大きかったのかな?

 ……違うだろ!

 単に腹が減ってるんだよ!


 兎を狩りに行こう。


 崖を下って、それから沢に降り、いよいよ森に入る。

 少しだけ錆びたショートソードを抜いたまま、静かに進んでいった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ