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87:水と精霊③


『主様を許して差し上げて下さいませ。力在る御方』

 再び聞こえた声に問い掛けてみる。

「誰だ?」


 まあ、多分、目の前の妙な光の粒のどれかなんだろうけど。

 姿がはっきり見えてる訳じゃ無い。

 この声が何者なのか、確かめなくっちゃならない。


 綺麗な声だ。


 でも、油断は禁物だね。

 だってレヴァに関わりがある“何か”なんだぜ。

 どう考えたって、まともな存在の筈が無いよな。


 そんな俺の考えを見透かすように声は語りかけてくる。

私たち(・・・)にも、あまり良い感情をお持ちで無い事は分かります。

 ですが、決してあなた様に対して“害成す者”ではありません』


 ここまでストレートに言われると、こっちもストレートに返すしかない。


「あのね。君が誰だか知らないけど、名前も名乗らない上に姿も見せない様な相手に良い感情が在る訳無いだろ!」

 強めに発した俺の言葉に周りの空気が震える。

 でも、これは怒りや不快感じゃない。

 何って言うのか、そう、子どもが大人の説教を怖がるような空気だ。

 なんか、俺が悪いみたいで嫌な感じ……。


 それから数秒後、ようやっと“気まずい空気”ってやつがゆるんだ。


『あの……』


「なに?」


『ご無礼は失礼いたしました。でも、姿は既に見せております』


「はぁ? ……!」


 も、もしかして、この光の粒が本体なのか?

 とにかく確かめてみる。

「あのさ、今、俺の目には、小さな光の粒が沢山見えるだけなんだけど」


『はい……。それが私どもです』


 ってことは……。

「もしかして、水の精霊って奴か?」


『はい』


 なるほど、“当たり”か。

 とにかく質問を続ける。

「ふ~ん。それは分かったよ。

 ところでさぁ。

 さっきから“私ども”とか“私たち”とか言ってるけど、君たちって全部で何人くらい居るの?」


『えっ?』


「えっ?」


 精霊との会話に『天使が通り過ぎる』って、どんな状況だよ。

 そう思って溜息を吐いた俺の耳元にようやく返事が返ってくる。


『え~、っと? あの……。実は、よく分かりません……』


「は?」


『あっ! 怒らないで下さい。

 私たちは、その、『個』とか『全』とか、そういう概念が無いんです。

 つまり、何と言いますか。

 常に近くの水や大気と繋がったり離れたりして居ますので……。

 結局、自分が何者か、は周りが決めて下さるんです』


「じゃあ、君は今、何者なの?」


『今の私たちは、先程からレヴァ様を主と仰ぐ存在です』


「なんだ、そりゃ?」


 意識の向きをレヴァに変える。


 おい、レヴァ。

 お前、怪しげな新興宗教でも始めたのか?


【おお、亮平! もしや許してくれるのか!?】


「な、訳きゃねーだろ。単に今の状況に興味が在るだけだよ」


【くぅ~っ!! なあ……。先程のことならば、我も大いに反省しておるのだ。

 こやつらの事を教える代わりに、今度ばかりは見逃してくれぬかのぉ?】


「アホか! テメェ、もしかして自分が取引できる立場だとでも思ってんのか!?

 いいか? 今はこいつらが“お前を見逃せ”って言ってるから、一応は話を聞く。

 但し、“こいつら”が信用出来る存在かどうかは、分からねぇ。

 だからテメェは生きる確率を上げるために無条件で話すしか無いんだよ。

 嫌ならさっさと死ね!」


【わ、分かった。は、話す。話すから、待ってくれ!】



  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おかえりなのです。リョーヘイ!」


「はい。ただいま!」

 客屋に帰るとメリッサちゃんが跳び付いてくる。

 抱き上げて頭を撫でると、猫みたいに眼を細めた。


 と、ローラに睨まれてる気がする。

 別に邪な考えなんか無いけど、慌ててメリッサちゃんを降ろして作り笑いを返す。

 エエ、ヤマシクナイデスヨ……。


「案外、時間が掛かったのね。水場って結構遠かったの?」


「いや、そんな事ないよ。それより、ちょっといいかな?」


「何?」


「リアムのことだけど……」


 俺の言葉にローラの顔が青くなる。

 目だけで、『メリッサちゃんが側に居る時に、その話をするな』って言ってる。

 でも、それを受け流して俺は話を進めた。

「今日中には、事態が動くみたいだ」


「どういう事?」


 首を傾げるローラに、どう説明して良いのか。

 まずはそこから悩んだ。





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