76:敵地へ①
「そりゃ、どういう事です。イブンさん?!」
思わず声も高くなる。
だってそうだろ?
敵に向かって、
『あなた攻めてきますか? 来るとしたらいつ頃ですか?』
なんて訊く馬鹿がどこの世界にいるんだよ!
「まあ、落ち着けリョウヘイ」
「落ち着いてますよ」
少し嫌味っぽく言葉を返すけど、イブンさんは気にせずに話を続ける。
「何も直接聞こうって訳じゃ無い」
「はぁ?」
「あのな。こいつらだよ」
そう言ってイブンさんは、ドノヴァンさんを指した。
そこまで言われてやっと気づく。
「あっ! つまり……、スパイ?」
「そう云う事だ」
な~るほど。確かに戦争ではスパイを放つなんて事は、基本中の基本だ。
俺はそれを無視して突っ走ろうとしてた。
ちょっと恥ずかしくなる。
流石はイブンさん。
と言いたかったけど、なんと当のドノヴァンさんが首を横に振ってしまった。
「ダメ! 俺たちバロネットギルドの決定では、内戦に対しては基本的に中立なんだよ」
「おい、今回の防衛戦には参加してくれただろ!」
「イブンさん。今回の相手は“山賊”だったんでしょ? 内戦に何の関係があるんですか?」
「うっ!」
ドノヴァンさんの言葉に一言うめくと、イブンさんは俯いてしまった。
でも、イブンさんの言葉は正しいんだよなぁ。
情報はどうしても欲しい。
良し、決めた!
「こうなりゃ……」
「こうなりゃ、何だ? リョウヘイ?」
「俺が行きます」
「はぁ! な、何、言ってんだ。お前は!」
「だって、急がないと対応策も練られないでしょ?」
「まあ、そうなんだけどな……。本当に大丈夫か?」
「出たとこ勝負です」
「なら、道案内が必要ですね」
リアムが直ぐさま声を上げる。
「メリッサも行くのです! あとローラお姉ちゃんも一緒に行くです」
「そりゃ、メリッサだけを付いて行かせる訳にはいかないしねぇ……」
どうやら、敵地潜入のメンバーは決定したみたいだ。
短いですが、出来るだけ間隔を空けない様にしたいと思ってこうなりました。




