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39:リバーワイズさん帰らず②

『ローラ、今すぐそこを離れて逃げろ!

 メリッサが怖がるから、あんまり驚かせたくないんだが、どうにも男爵か、そうでなければ息子の方が良くない事を企んでるらしい』


 水晶球の中のリバーワイズさんの声は焦りきったものだが、ローラは落ち着いて答える。

「うん、来てたよ」

『来てた? おい! どういう事だ!?』

「追っ払ったわ」

『追っ払った! って、本当か!? 一体どうやって!?』


 そこで、ローラが俺の行動を全て話す。

 水晶球の向こうから、リバーワイズさんがホッと息を吐いたのが聞こえた。

『よく、そんな人物が助けてくれたもんだ。いや、運が良かった!』

「うん。ホント。メリッサのお陰ね」

 そこでメリッサちゃんが声を上げた。

「リョーヘイは、お父さんにすご~く似てるですよ!」


『俺に似てる? メリッサ、どういう事なのか、お父さんに分かり易く話せるかな?』

 とても優しい声かけだ。どうやらリバーワイズさんも俺と同じでメリッサちゃんの云う事なら何でも聞いちゃうタイプみたいだ。


 そのメリッサちゃんも“お父さん大好き”って感じで、あせって話しかけていく。

「ん~、髪と目の色がお父さんと同じなのです!」

『はぁ? いや、それより名前だね。そっちが知りたいな。今、何って言ったっけ?』

「リョーヘイです」

『リョウヘイ……、ね。ふむ……』

 暫く声が途絶え、再び響く。

『そのリョウヘイ君と話せるかな?』


 メリッサちゃんが俺に近付いて、すぐに手を取った。

 その間にローラが水晶球に応える。

「ちょっと待って」

 それから俺の方を向くと、視線だけで“いいか?”と尋ねて来る。


 俺は黙って頷くと、そのままリバーワイズさんと話す事になった。


『初めましてリョウヘイ君。私はショーン・リバーワイズ。

 どうやら娘達を救ってもらった様だね。礼を言うよ』

「あ、いえ。俺もメリッサちゃんに助けてもらったから、おあいこです」

『ふ~む。……なあ、リョウヘイ君。ちょっと聞きたいんだが、君、国はどちらかね?』

「言っても分かってもらえないと思います。唯、もう帰る事も出来ない遠いところから来た、とだけしか言えません」


 俺の言葉にリバーワイズさんはまたも黙り込む。

 相変わらず水晶球の中は透き通ったままで、卿の姿は見えないけど何か考え込んでいる様子だ。


 ようやく声が聞こえたが、とても不安そうな声だった。

「奴らを追い払った時に竜甲兵を倒したと云う事だが、装着者は死んだかな?

 それとも未だ生きていると思うかね?」


 リバーワイズさんが自分を心配している事を知ったリアムが両手で顔を覆う。

 声を押さえていても泣き出したのが分かった。嗚咽(おえつ)と言って良い。

 そうして泣きながらも前に出てくると、テーブルの水晶球を手の平で包み込むようにして、しゃべり出す。

「リバーワイズ様! リアムでございます。この度の事、本当に申し訳ありませんでした。

 大恩有るリバーワイズ様のお嬢様方を危険に晒した事。死んでお詫びをするしか有りません。

 おかげさまで今、(ワタクシ)の所有者は変わりました。

 すぐにでも許可を頂いて、お詫びをさせて頂きます」


 その言葉にビックリして俺は叫ぶ

「ば、馬鹿! 何言ってんだよリアム!」


「だって、ワタクシ、もうどうすれば良いのか分かりませんわ。

 御主人様が盟約もしておりませんでしたので、それなら生き恥をさらす前に、もう死んでしまおう、とも思っていたんです。

 でも、ローラさん、それに気付いてワタクシを縛り上げちゃったんですの……」

 それだけ言い切ると、また泣き出してしまった。


「あっ!」

 思わず俺は声を出していた。

 ローラがリアムを縛り上げたのは、本当はメリッサちゃんの為じゃなかったんだ。

 ローラを見たけど、彼女は困った様な、それでいて泣き出しそうな顔をしただけだった。

 この子、本当に優しい子なんだって、今更だけど思う。


 それに、この世界って本当に悲しい、とも……。





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