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26:竜甲兵②

 化け物!


 そうとしか言いようが無い『モノ』が立っている。

 まるでアニメに出て来るロボットみたいだ。

 違いと言えば、表面が全て灰銀色の鱗に覆われていて、それが古代中国の鎧の様に見えることだろうか。

 けど、その身体の見た目と言えば、マンガにでも出て来る『竜』が立ち上がった様にしか思えない。

 ごつい指先には当然だが、鋭くて厚みのある爪まで付いている。

 それだけでも恐ろしいってのに、その上、剣まで握ってる。


 人間の身長なんか軽く超える巨大(でか)い剣だぞ!


「な、なんなの、あれ?」

 思わず呟く俺に、バロネットのリーダーが不思議そうな顔で教えてくれる。

「はぁ? 何って言われても? 見ての通りの『竜甲兵』だな。

 だから“引いとけ”って言ったんだよ」


 周りの下っ端達も彼と同じように頷く。

『竜』という言葉は、例の“天使の声”から与えられた試練に関係している。

 だから、もう少し聞きたかったんだけど、どうも、アレはこの世界では常識的に知っていなくてはいけないモノらしい。

 つまり、これ以上の質問は無理みたいだ。


「あ、ある程度の力を見せれば良いんだよね?」

 そう尋ねたが、リーダーは首を横に振る。

 それから、肝を冷やす様な言葉を口にした。


「悪いんだけど。あいつら、どうも様子がおかしいんだよな。

 もしかしての話だが、あんたを殺しに掛かってるのかもしれん。

 あんたを殺す事がはっきりしたら俺たちも逃げさせてもらうぜ」


「なんで?!」


「口封じだよ。

 意味もなくリバーワイズ卿の弟子を殺した、なんて事になったら大事(おおごと)だからな。

 俺たちがいなけりゃ、言い訳は幾らでもたつさ。

 その後で時間を掛けてでも、あの家を落とすんだろうな

 いくらリバーワイズ卿の魔法で守られてても、所詮は木造だ。

 本人がいないんだから、半日も有れば何とか突破できるだろ?」


 レヴァが言っていた通りだ。

 あの貴族のガキ、リバーワイズさんに何かの恨みが有るんだ。

 となれば、弟子という事になってる俺にも容赦しないって事だ。


「お弟子殿。前に!」

 中年騎士が俺を呼ぶ。

 偉そうな口ひげをむしり取ってやりたくなった。


 その後にいる大柄の騎士だけが木に持たれてやる気なさげだが、それ以外の十名以上は、やけにニヤついている。

 イジメの光景を思い出して、ムカムカしてきた。


 なあ、レヴァ、聞こえるか?


【……】


 おい、レヴァ!


【うむ、すまぬ! 何やら妙な感覚がしてな。それより、どうした?】


 妙な感覚、って何だ?


【いや、はっきりしてから伝えるのが良かろう】


 何だか気に掛かるが、今は時間が惜しい。質問が先だ。

 焦りのあまり、質問は小さな声になって出た。

「あの竜みたいな奴だけどさ、あれ、もしかして『三つめの試練』の対象かな?」


【うむ。 お主は“あれ”に属する物を潰さねばならぬ】


 やっぱり、そうか。

 例の天使が言っていた“最後の言葉”の意味が少し分かった気がした。

 おっと、細かい事は後だ。レヴァにはまだ聞きたいことがあるんだ。



 なあ、あれは結局、どういう存在なんだ?


小翼竜(ワイバーン)の死体から生み出されたモノの様だな。

 今のお主では、結構難儀する事になりそうだ】


 “難儀”って事は倒せない事はないんだ?


【無論よ! ただし、中に人が居る事が厄介だな】


 え、どうして?


【まず、野生のワイバーンと違い、人の戦闘はより高度に頭脳を使う。

 また剣技まであるなら、更に力は増す】


 なるほど。 


【それにな、】


 何?


【今言った通り、あの中身は“人”ぞ!

 今の我の力では手加減などして勝てる相手では無い。 

 お主、果たして人を殺せるのか?】


 言われて、やっと気付いた。

 確かに“あれ”は化け物かも知れないが、あの中には人が居たんだって。

 あれを倒す時、中の人間が死なないと云う保障は無い。

 ギリギリの闘いの中で俺に人が殺せるんだろうか?




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