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18:ローラの不安と亮平の驚き

 あの部屋に閉じ込めたからにはまずは一安心だ。

 あいつがどれだけ強力な魔力を持っていても、お父さんの封印魔法を破れる奴なんていやしない。


 さて、それでは、ゆっくり考えるとしましょうか。


 何度聞いてもメリッサの言う事に変わりはない。

 つまり嘘を吐いている訳でも無いし、恐怖で幻覚を見た訳でもない。

 でもね……。


 だったら、なんであいつは大人しく縛られて、大人しく閉じ込められてるのよ!


「お姉ちゃん!」

 考え込むあたしにメリッサが不満げな口調を向ける。

 あれ、この子、怒ってるの?


「ねえ、お姉ちゃん! リョーヘイは悪い人じゃないのです!

 メリッサ、助けてもらったのです! 閉じ込めるのは止めてほしいのです!」


 大声出さないでよ!

 って、ヤバイ! 目が潤んでる。 ああ、あ~やっぱり!


「うぁ~ん! お姉ちゃんのバカー! バカッ、バカですぅ~!」


 泣き出しちゃった。

 こうなると、この子。止まんないのよね。

 どうしよう……。


 取り敢えず落ち着くのを待とう。


 ようやっと、しゃくり上げるぐらいになってきたので話しかける。

「あのね、メリッサ。 そりゃ、あんたの言う事は正しいわ」

「じゃあ、リョーヘイを部屋から出してあげて、です」

「今はダメ!」

「どうしてですか?」

「相手は人間(ヒュー)だからね。 お父さんが帰って来るまでは、いくら警戒しても、し過ぎるって事は無いのよ。

 多分、あんたの言う通り、あいつは良い奴かも知れない。でもね……」

 ここであたしの言葉は止まってしまう。


「でも、なんですか?」

 真っ直ぐにあたしを見てくるメリッサに、いつもの話をしなくてはならない。

 この子は人間(ヒュー)の本当の怖さを知らないのだ。


「あのね。あいつは人間(ヒュー)なの!」

「メリッサ、知ってるです。お姉ちゃん、いつも言ってるです。

 人間(ヒュー)は恐いのです!」

「そう! あいつ等は、あたし達みたいなデックアールヴや獣人(セリアン)を物だと思ってる。

“奴隷にしようが殺そうが人間の勝手だ”ってね」


「でも、お父さんも人間(ヒュー)です! あれ、変なのです?」

「お父さんは例外! お父さんの奴隷って事になってるから私たちも安全なの」

「じゃあ、どうして町に帰らないですか?」

「この戦争よ」


「?」


「侯爵が攻め込んできたんで、伯爵の代官領も危なくなって来たの。

 お父さんの話だと、領内に侯爵のスパイも大勢入り込んでる。

 奴らは傭兵として入り込んでるから、わざとトラブルを起こして奴隷を殺すかもしれない、って」

「リョーヘイはスパイですか?」

「分からない。だからお父さんを待ちたいのよ。 ね、分かった?」


 メリッサは渋々と頷いてくれた。

 お父さんは明日にも帰って来る。

 一日ぐらいならメリッサも我慢してくれるだろうし、間違っていたなら、あのリョーヘイって奴にも後で謝れば良い。

 あの甘さが本物なら、許してくれるだろう。 多分……。

 でもねメリッサ、本当はあたしも恐いだけなの。

 平原のガルムをひとりで十一頭も倒す力があるのに、デックアールヴに逆らいもせず、あれだけ大人しいのが逆に恐い。


 早く、早く明日になって欲しい。



  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「なあ、何なの? 今の会話?」


【うむ、我も意識を取り戻してから、さほど時間が経っておらぬゆえ、はっきりとした事は言えんのだが。

 どうやら、昔と今とでは世界が大きく変わってしまった様だな】


「昔? 今? ますます分からん?!」


【まあ、我の話はともかくだ。今の問題は人間よ】


「そう、“人間が恐ろしい”って、どういう事だよ!?」

 確か、お姉ちゃんは自分たちの事を“デックアールヴ”とか“セリアン”とか言ってたね。

 あれがこの世界での“ダークエルフ”と“獣人“の事かな?

 さっき、レヴァもお姉ちゃんの事をそう呼んでたし、確かゲームでも似たような呼び名だったと思う。

 とにかく、人間に敵視されている事は分かった。


 もっと情報が欲しい。レヴァに話を進めてもらった。



【あれからどれ程の時が過ぎたのかは知れぬが、人間は数を増やすのが早い。

 恐らくだが、人間は数の力を持って他の種族を隷属させつつあるのであろうな】


 白人が黒人や黄色人種を奴隷にしたみたいなもの、と理解すれば良いのだろうか。

 じゃあ、俺はこの後、どうすれば良いんだ?


「なあ、レヴァ、俺はこの世界で新しく生きるように言われた」


【うむ、それは知っておる。

 我も気付いた時にはお主の中に居た。また我が成すべき事も知らされていた。

 恐らくだが、神族である方の我の仕業であろう】


「神族である方の我? 何だ、それ?

 あれ? それにレヴァは俺みたいに天使には会ってないのか?」


【我は、もっと大きな存在の一部であり、凡百の精霊如きに令を受ける存在では無い。

 あの様な者を相手にせずとも、成すべき事は知っておる】


「レヴァの成すべきことって?」


【まあ、いずれ分かる。それより今はお主の話であろう?】


 おっと、そうだった。

「なあ、俺は出来るだけ多くの『人』に信頼されて生きていかなくちゃならないんだ。

 少なくとも千人にね!

 けど、どうも彼女達と人間は敵同士みたいだ。

 俺はいったいどうすれば良いんだ?」


【さて? その様な事、我にはわからぬよ。

 だが、ひとつ聞きたいのだが。亮平、お主、誰の為に生きるつもりなのだ?

 その、会った事もない千人とやらの為にお主の人としての生はあるのかな?】












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