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123:包囲


(※シーアン周辺や山脈とベルン要塞を繋ぐ通路などは第75話の地図を参照)


 伯爵軍の包囲は大まかに二方向に分かれた。

 まず、北の山脈通路の入り口に当たる北門を塞ぐのに400~500人。

 山脈に向かう北門の外は大軍を展開する広さが無いので、あまりたくさんの兵隊はおけ

ない。

 それでも、ベルン要塞へ向かう道が援軍の通路になるかもしれないとか、俺たちが負け

た時には逃走路に使われるとか考えて兵を置いてあるんだろう。

 兵の数は少ないけど結構しっかりと守ってる様に感じる。


 それに対して、南側の主力軍2500は、何と言うか、だらけきっている雰囲気がぷんぷんする。

 こんなんで包囲戦ができるんだろうか?


 そう思ってると、俺を見たダイバーさんが俺の顔つきから何を考えているのか気づいたらしく、包囲戦についてと色々と教えてくれた。


 自由人ギルドの長であるダイバーさん。

 歳は50代くらいだろうか?

 頭は剃っているらしく、見事につるつるだけど、なんかカッコいい。

 迫力があるっていうのか、なんというのか顔に刻まれた皺や筋骨隆々の体つき。

 男の中の男って感じがする。

 普段は(ほとん)どしゃべらないのも、この人の場合は似合ってる。


 その喋らない人が、珍しくしゃべった長台詞は次の通りだ。


「だらけてるように見えるが、あれで良い。

 全体的に広がって鶴翼を保つことはできている。

 その上で常に緊張しろ、ってのは逆に兵を疲れさせるだけだ。

 必要な時に一気に締めることができれば、それでいいんだ。

 今回、伯爵自身が軍を率いてるって話は聞いてないから代理の将軍なんだろうけど、

 結構しっかりしてるな」


 へぇ~! 俺の心の中の“へぇボタン”が今、連打される。


 それだけ言ってまた黙り込んだダイバーさんに代わって今度はハルミさんが声をかけて来た。


「で、どうする?

 将軍は平均点以上、副官は屑野郎だ。

 面倒だから皆殺しにするか? あんたのファイヤボールが5発も撃てるなら

 今日だけで3割は確実に削れるだろ?

 竜甲兵相手には分が悪いと聞いてるが、俺が知ってる竜甲なら5発も当たれば十分倒せると思うぞ」


 そう、実は2500人ってのは結構狭い範囲に収まる。

 100m四方もあれば入っちゃうんじゃないかな?


 でも今回彼らは横に広く広がってしまっている。

 囲んでるぞ、って姿勢を見せて威圧するためだ。

 だから、もしレヴァの最強ファイヤボールを当てるにしても、5発ではそんなに削れない。

 それに、あいつのファイヤボールを人の集団に向けて放ったらどれだけの人間が死ぬかわかったもんじゃない。

 そんなこと、簡単にできる訳ないない!


 別に盗賊の集団って訳じゃ無いんだぜ。


 確かに竜甲もいる。

 ちょっと見ただけで12~13体はいるんじゃないだろうか?

 あんなのが一斉に襲ってきたら、手加減なんか無理!

 相手には悪いけど思いっきりぶちかまして、やろうと思う。


 レヴァのファイヤボールは物凄く威力が上がってる。

 多分だけど、前戦ったリンディウⅡとかいう奴は最大威力でなら1発で倒せる。

 でも、5~6発も撃てば打ち止めだし、次に打てるようになるまで3時間は休養が必要だ。

 もちろん、守る俺たちの側には城壁があって、200人の自由人たちの他に市民からの義勇兵(ボランティア)が200人がいる。

 これなら守備兵力としてはギリギリ行けるとダイバーさんは保証してくれた。


 3000人の兵隊が街を囲んでいられるのは頑張っても3か月が限界だ。

 いや、補給線が貧弱過ぎて2か月ぐらいしか持たない可能性が高い。

 それが攻城戦の常識なんだそうだ。

 その期間だけ守り切れば、この世界の常識として堂々と自治都市を名乗れる。


 さらに言うなら、あのブルドッグは俺たちを飢え死にさせるとか言ってたけど、実は下手に長引くと飢え死にするのは攻め手側になるのが普通なんだってさ。

 これにはちょっと笑った。


 いや笑ってる場合じゃないね。

 その前に絶対に負けないって保証は無いんだよね。

 つまり、俺がちゃんと仕事ができるかどうか、それにかかってるんだ。

 ……とは言っても、決して進んで人を殺したい訳じゃ無い。


 だから、ちょっとズルさせてもらうことにしたんだ。





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