表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/126

12.ローラの独り言

「ローラ、メリッサを外に出すんじゃないぞ」

 いつもと同じ言葉を残して出て行ったけど、自分の方こそ気を付けてよね。

 父さん、今回の“取引”では、ものすごくピリピリしてる。

 そんなに危ないなら、暫くは大人しくしていようよ。

 (たくわ)えだって、まるで無い訳じゃ無いんだし……


 私が代理で行っても良い、って言うんだけど妙なところで頑固だからなぁ。

 歳も考えて行動してよね!

 まあ、確かに今の時期、あたしが外を一人で動き回るのがヤバすぎるのは分かる。

 だからやっぱりお父さんが正しいんだけど、いつまで経っても一人で取引が出来る立場になれないのはやっぱり悔しいよ。

 

 それに五日前に丘の向こうから響いてきた音は普通じゃなかった。

 ものすごい爆発音。それが翌日も続いたのは怖かったよ。

 あれも気に掛かるんだ。


 領 境(りょうざかい)を超えた侯爵軍だけど、ベルン要塞からの追撃を警戒してるから、結局は領境を行ったり来たりしてるだけの筈だ。

 何より竜甲兵団や魔術師隊が移動する程の大軍なら、情報が入って来ないのはおかしい。

 先週出会ったキャラバンもそんな話はしてなかった。

 もしかして新しい魔獣が現れたとか?


 まさかね……。


 何が起きているのか知りたいのは私も同じだよ、父さん。

 丘の向こうには一角兎のジャッカとガルム狼ぐらいしかいなかった筈。

 他に大物が居るにしてもブラウンベアーが精々でしょうし……。


 とにかく、あんな大きな音を立てる魔獣なんて知らない。


 お父さんだけでも、町に引き上げた方が良いと思うんだけどなぁ。

 今のとこ、あの町まで侯爵軍が来るとは思えないから、安全な事には間違い無いと思うんだよ。


 父さんは、万一を考えて家族みんなで行動するのが良いと言う。

 でも、このままじゃ、お父さんまで酷い目に会っちゃうかもしれないんだよ。

 王宮の権威も段々と落ちてるんだからさ……。


 それにしても、本当に戦争はいつ終わるんだろうか?

 ここまで土地の力が落ちてるようじゃ、侯爵が辺境から王国内に向けて軍を動かすのも仕方ない。

 この内戦を止める力は今の王様には無いもんね。


 普通の人が入れない南の土地は、今でこそ砂漠化したり魔獣の住む森に覆われたりしてるけど、昔は大きな農地も広がっていたらしい。

 この伯爵領だって南半分が使えた頃は豊かだったって聞いてる。

 侯爵領への交易品が今の三倍、四倍の量でも問題は無かったそうだ。

 つまり、戦争の原因が無かった。


 土地に力があって魔獣も増えてなければ、今の戦争も飢えも無い筈なのにね。

 それにあたし達が住む事のできる森だって探せる可能性は増える。

 何より人間達が少しでも落ち着いてくれたなら、もしかして迫害も収まるかも知れない。

 こんな、こそこそとした暮らしはもう嫌だなぁ……。



 あれ、メリッサがいない?


 ちょ、どこ行っちゃったのよ!

 まさか、丘を越えたんじゃないでしょうね。

 南側は果実も多いから行きたがるのは分かるけど、魔獣の巣なのよ!


 あの子、自分の防御魔法に自信持ち過ぎなのよ。


 一回二回は使えても、群に囲まれたら逃げ切れない。

 もう!

 お父さんが甘い顔して褒めまくるから、自分の限界が分かってないのよ!


 どうしよう。


 ううん。まだ丘を越えて南に行ったと決まった訳じゃあない。

 とにかく近くから捜さなくっちゃ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ