115:告白
この話も、ようやく再開できましたが、まだペースは遅いです。(週一回ぐらいです)
自分の他の小説を読んでも良いと思われた方は、「宇宙船AIが友達を欲しがってます。地方領主の姫騎士様なら友達になってもらえますか?」 https://ncode.syosetu.com/n9137gx/をお先にどうでしょうか?
そちらは今のところは2日ごと、もしくは毎日一本のペースで進めたいと思っています。
おれがレヴァの事を使える、って思った理由はこう云う事だ。
驚いた事にレヴァの炎で見えた映像は、レヴァの記憶として残り、そのままいつでも引き出せる。
早い話が、VTRみたいに何度でも再生可能って訳だ。
だから、罠を掛けて上手く行けば悪事は晴天の下に曝されるって訳だ。
俺は自分の魔法でそう云う事が可能だって話してハルミさんに話を持ちかける。
でも、当のハルミさんの反応は思ったのとは違って、あまり気が乗らないって感じだった。
「まあ、不正を暴いてくれるって気持ちは嬉しいんだけど……」
「どうしたの?」
「いや、お弟子さんの国じゃどうか知らんが、この国じゃあ、そう云う事にあまり意味は無いんだ。
どっちかって言うと、事態はより悪くなる」
「どうして?」
「あのな、幾ら問題があろうが庶民の言葉で代官の首がすげ変るなんて事は在りえないんだよ」
「え、でも……」
俺の言葉を遮って、ハルミさんの言葉は続く。
「納税額が落ち込んでいない以上、別に御領主を裏切ってるって訳でも無い。
そりゃ私腹を肥やしているのは問題かも知れんが、それは御領主と代官の問題であって、俺たちは何の関係も無い。
御領主様は『上手いことやってるな』って笑って済ませるだけかも知れない」
言い切ったかと思うと、一息吐いて言い直した。
「いや、今んとこ街がきちんと回ってるんだから、そう言うだけだろうなぁ……」
「じゃあ、それを暴いた人間は?」
「それが“より悪くなる”って言った理由さ」
「どういう扱いになるの?」
「嫌がらせを受けるぐらいなら良い方で、時期を見つけて反逆者として逮捕されるのは間違い無いだろうな。
それがイヤなら、領地から逃げ出すしかない。
暗黙の了解って事で、それぐらいの時間は与えてくれるだろう。
だが、マイエル伯爵の領内ではシーアン処かどの土地にも住めなくなる事は確実だ。
何と言っても貴族の面目に泥を塗った様なもんだからな」
「なら、正体がばれないように工夫すれば……」
そこで、また俺の言葉を遮るように首を振って俯くハルミさん。
やっても意味がない、と繰り返すだけで、この話を打ち切りたいって気持ちがはっきりわかる。
どうも、この方向から彼らを味方に付けるのは難しいっぽい。
諦めるしかないみたいだ。
レヴァ、お前のアイディア駄目だったぞ!
【むぅ、長らく権力者とは接しておらんかったが、まさか、ここまで腐っておったとはな……】
言うなよ。
でも、この後どっかで使わせてもらう事もあるだろうから、その能力、しっかり覚えとくよ。
【うむ、他に何事か手立てはあるだろうし、な】
うん。
さて、気を取り直したところでハルミさんに謝らないといけない。だから、
『何も知らない余所者がゴメンよ』
って言いかけた。
けど、その時、不意にハルミさんが思い立った様に俯いていた顔を上げる。
「なあ、御弟子さん。今の話で思ったんだが、あんたの国は俺たちの国とはかなり違うみたいだな?」
「あっ? あ、うん、凄く違うね」
「そんなに庶民に力があるのか?」
「そりゃね」
「凄いな……」
そう云って、また少し考え込む。
やっと口を開いたかと思うと、いきなり、さっきとは関係ない話を始めた。
「あの、な、奴隷は……、どんな扱いを受けてる?」
「へっ? 奴隷なんていないよ!」
「奴隷が、……いない!?」
「うん、いない」
「じゃあ、獣人の扱いはどうなってる?」
「いや、獣人そのものがいなかったから知らないけど、いたとしても奴隷になんて出来ないだろうね。
外見が違うってだけで他人を迫害する事は厳しく禁止されてるから、暴言だけでも、相手に訴えられれば、かなりきつい処罰を受けると思うよ。
それどころか、世間からもはじき出されるのは間違い無いだろうねぇ」
俺の言葉に驚いて目を見開くハルミさん。
まあ、この世界とは何もかも価値観が違うからなぁ。かなり驚かせちゃったみたいだ。
しばらく呆けてたけど、ショックから立ち直ったらしいハルミさんは質問を続けてくる。
「御弟子さんのとこに獣人の嬢ちゃんがいるよな?」
「あ、メリッサちゃんね」
「あの子が大きくなった時、あんた、あの娘と寝ることが出来るか?」
「ね、寝るぅ?!」
思わず、あの滑らかな肌を思い出して、ちょっとドギマギする。
「睡眠の話じゃねぇぞ」
「そりゃ、分かるよ!」
「で、どうなんだ?」
「はあ、まあ、そのぉ~、そりゃあ彼女が嫌じゃなきゃ、喜んで……、って何でこんな事言わせるんだよ!」
真っ赤になってしまう。
でも、そう怒鳴った俺以上に顔を朱に染めて言葉を濁すハルミさん。
「俺は……」
それから一息置いてから出た彼の言葉に、やけに重いものを感じる事になる。
「俺は、この世の中を変えたい!」
「変えたい?」
「そうだ。俺には解決したい問題がある」
「問題?」
「御弟子さんになら話しても大丈夫だろうけど、実は俺たちのチームの他に百を超える自由人達が森に住む獣人と交流を持ってる」
「えっ!」
「魔獣と戦う時、彼らほど頼りになる助っ人はいない。
それに彼らも俺たちを頼って、工作物や技術を手に入れる事で森の奥に留まって村を維持できてる。
つまり、それぞれが必要な力とモノを交換する事で互いに利益を得てるんだ。
だから、持ちつ持たれつの関係だな」
「へぇ、獣人の隠れ里が在るんだ」
「それも結構な数だぜ。この国はまだまだ未開の土地が多い。
そう云った森や山奥には、昔ながらの暮らしを守って生活してる獣人やエルフは少なく無いのさ」
「つまり、解決したい問題ってのは?」
「ああ、彼らが自由に生きられる様にしてやりたいんだ」
「でも、そんなこと言ってもさぁ。
いざとなりゃハルミさん達も奴隷を狩る立場じゃないか!」
あんた達はローラとメリッサちゃんを狩りに来た男爵の馬鹿息子の手下になってただろ、と云う意味を込めて過去の事件についての非難をぶつける。
俺の口調からハルミさんは言葉の意味を理解したんだろう。
表情が暗くなった。
「すまん……」
「スマンで済む問題かなぁ?」
「……言い訳だと思われても仕方無いんだが、あれは狩られる獣人を助ける為だったんだよ!」
「へっ? それ、どういう事?」
「俺たちの目の届かない処でエルフや獣人が狩られりゃ、こっちもどうしようも無い。
先だって俺があんた達を狩るのに参加したのも、先に獣人を見つけられりゃ、上手く逃がせるかも知れないって思ったからだ。
唯、あの時は男爵の狙いがはっきりし過ぎてて、どうしようもなくなってた。
挙げ句に、何故かパーティに新入りまで混ぜられちまって、どうにも誤魔化しも効かねぇ。
こりゃ参加するんじゃなかった、って後悔したぜ。
結果として、あんたのお陰で気持ちよく終われたんで助かっただけだ
確かに信用が無くなっても仕方無い話だよなぁ……」
一気に言い切ると大きく息を吐いて、斜めに俺を見て来る。
信じてもらえないだろうなぁ、って感じの表情は酒場で周囲を纏め上げてた人と同じ人物とは思えない程、しょげかえってる。
でも、……信じても良いと思う。
だって、この国で『奴隷狩りを邪魔しようとしてた』なんて冗談でも口にしちゃいけない筈だ。
きっと本気なんだ。だから……、
「分かった。信じるよ」
そう言った俺の顔を見てハルミさんの表情がぱっと明るくなった。
う~ん、イケメンが喜ぶ姿って絵になるなぁ……。
ブサメンとまでは思わないけど、並み以下の顔面偏差値の俺としてはちょっと悔しい。
もう少しイジメるんだったぜ……。
少し後悔する。
俺の黒い表情を読んだのか、ハルミさんが疑わしげに問いかけて来た。
「なあ、御弟子さん。ホントに信用してくれてるんだろうな?」
「も、勿論だけど?」
「じゃあ、何でそんなに恐い顔してるんだよ?」
「や、やっぱり顔に出てた?」
「おい、何だ? あんた何企んでる?」
慌てて問いつめてくるハルミさん。
どうやら、俺が山小屋の事を根に持ってるって思い込んでるみたいだ。
「いや、気にしないで、単なる僻みだから……」
「は? いや、怒ってるんじゃないのか?」
「怒って無いすよぉ。俺を怒らせられたら大したもんッスよ!」
「なんだ、そりゃ……」
それから、吹き出した。
読んで下さり、ありがとうございました。
ようやく再開できましたが、まだペースは遅いです。(週一回ぐらいです)
自分の他の小説を読んでも良いと思われた方は、「宇宙船AIが友達を欲しがってます。地方領主の姫騎士様なら友達になってもらえますか?」 https://ncode.syosetu.com/n9137gx/をお先にどうでしょうか?
こちらは今のところは2日ごと、もしくは毎日一本のペースで進めたいと思っています。




