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悪魔のような勇者の伝説  作者: 夜桜
第1章
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魔法

 ここ、魔人族の王都である『ユラシティ』の図書館は、魔人族の領域の中で最大級の蔵書量を誇っている。特に魔法に関する資料の質と量は世界でもトップクラスだ。各方面の論文も収容されている。


 僕は魔法に関する知識を改めて補うためにここに来ている。


 基本的な知識さえ、神殿にいたころの図書の情報なのであまり信用できない。


 ルシフェルももうすぐ目覚めるはずだから、それまでに基礎知識から、能力封印系の魔法の研究あたりまでは情報を集めたいな。




 まずは、魔法の基礎知識ついて。


 魔法は、自分の中にある魔力を消費することで使用することができる。その属性として火、水、風、土、雷、光、闇の7属性がる。すべての魔法はこの7属性にそれぞれ分類されている。


 逆に言えば、これらの属性以外の魔法はないとされているのだ。


 また、2種類の属性の魔力を同時に扱って新たな魔法を生み出すという研究もされているようだが、今のところ成功例はないという。まず複数の属性に適性がでている人自体がほとんどいないようだしな。今後もしも他の属性の適性が現れたら、試す価値がありそうだ。


 魔法の発動のためには、その魔法のイメージを頭に思い浮かべる必要がある。例えば、火属性であれば火を放つようなイメージ、風属性であれば嵐を巻き起こすイメージなどのことだろう。もしかしたらこの世界の人の中は、固定観念のようなものに縛られてこのイメージが足りていないのでは。僕たちの世界の科学のイメージをここに応用すれば新たな魔法も開発できそうに思う。



 僕が適性の出ている魔法は闇属性魔法なので、これに関する資料を重点的に読んでみよう。


 闇属性魔法の特徴としては、幻覚や状態異常などで相手の動きを鈍らせるような魔法が中心となっているようだ。そして、攻撃能力は低い。これが世界における闇属性魔法の位置づけらしい。


 しかし、僕の扱った闇属性魔法は、あの大蛇も一撃で沈めた。例外もあるということか。


 とりあえず、あの時使った『血の刃(ブラッディエッジ)』について調べてみるか。


 そう思ったのだが、どの資料にもそのような魔法の存在は記載されていなかった。


 ……もしや『魔神』専用の魔法なのか?



 そもそも知識のない僕がなぜあのような魔法を使えたかというと、ただ頭に流れてきた魔法を叫んでみたら、発動してしまっただけだからである。あの時はなぜか、魔法名や、その効果、イメージまでもが自然と思いついた。『魔神』であることが影響しているようにしか思えなくなってきたな。


『血の刃』以外にも僕だけが使える魔法があるかもしれないな。それはルシフェルに聞くことにしよう。



 能力封印系の魔法についても調べてみた。これは最近の研究成果らしいのだが闇属性魔法で、相手の魔力を一時的に下げることのできる魔法が開発されたというものがあった。しかし、ユラのようにほぼすべての能力を奪われるような魔法はやはり見つからない。


 魔法陣についても調べてみたが、今現在この世界の魔法には魔法陣を必要とするものが今のところないらしい。いや、正確にいえば、ほぼ文献も残っていないような古代魔法に魔法陣を用いる物があったようだ。これがもしかしたら関係しているかもしれない。


 そういえばルシフェルと最初に出会った時のあの扉、魔法陣が浮かび上がったよな。あれも古代魔法かなにかなのだろうか。



 そこまで調べたところで、日が沈みかけていることに気付きひとまず図書館を後にした。




 ♢ ♢ ♢


 まだ宿を確保していなかった僕は、城の近くで宿がないか探した。城に近い方が何かと都合がいいだろう。


 城から数十メートルほどのところに『桜と月』という宿を見つけた。とりあえず中に入って受付に足を進める。すると、受付にはどこかで見た少女がいた。短い茶髪で、おっとりしたような顔をしている。身長は150くらいかな。はて、だれだったか。


「いらっしゃいませ……あ、昼間の。覚えていますか?広場で助けていただいたんですけど」


 ああ、広場でユラにかばわれていた女の子だ。


「ああ。あの時は災難だったね」


「はい。あの時はろくにお礼も言わずに行ってしまってすみませんでした。助けていただきありがとうございました」


 彼女は深く頭を下げ、お礼を言う。


「いや、気にしなくていいよ。そんな大したことはしてない。それより、宿泊したいんだけど大丈夫かな?」


「あ、はい!大丈夫です。おひとり様でしたら、一泊で夕食と朝食がついて4000セルになりますが、何泊なさいますか?」


 セルというのはこの世界の通貨単位で、銅貨一枚で100セルだ。


 通貨には、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類がある。


 銀貨は銅貨100枚分、金貨は銀貨100枚分、白金貨は金貨100枚分というようになっている。


「じゃあとりあえず5泊頼むよ」


 僕はそう言って銀貨を2枚渡した。


「ありがとうございます。お部屋の方は2階の4号室になります。こちらがお部屋の鍵になります。お食事は、夕食の方が夕方6時から8時の間、朝食が朝6時から9時の間に一階食堂に来てください。なにか困ったことがありましたら私、セイラが受付におりますのでいつでもいらしてくださいね!」


 彼女、セイラは笑顔でそう言った。


「うん。ありがとう」


 僕は鍵を受け取って部屋に向かった。


 部屋は10畳くらいはありそうな感じがしてなかなか広く感じる。木の匂いも心地いい。


 僕は疲れていたのですぐにベッド倒れ込んだ。久々のベッドは気持ちいい。


 そうしてしばらく横になっていると




 ドクン




 体に鼓動が走る。これはもしかして……


「ルシフェル、なのか?」


『ああ、思ったより時間がかかってしまったが目覚めたようだ。待たせてしまったな』


 自分の中に声が響く。ああ、ルシフェルだ。僕の分身。僕自身。なにか安心感があるな。


『それより、声を出さなくても頭の中で話しかけてくれれば我と話はできるぞ。普通にしゃべっては危ないやつに見えるだろう』


『ああ、そうなのね』


『うむ。それでここはどこかな。あれからのことを少し話してほしいのだが』


 そうだな、早くユラのことも解決しないといけないし。


『うん。まずここは魔人族の王都「ユラシティ」だよ』


 そう言ってここまであったことをルシフェルに話した。


『風の洞窟』、人間族の街『ルクト』、魔人族の街『マルクレン』、そしてここ『ユラシティ』。出会った人達のことや、ユラのこと、そして今の自分の気持ちも話した。


『そうか、我が眠っている間にここまで進んでくれるとは。ヨシトは少しずつだがこの世界を救う道を進んでいるよ。お前自身もそれを望み始めているみたいだしな』


 ルシフェルは僕自身。だから誰よりも僕のことを理解してくれる。彼の存在は僕の存在をより強くしてくれるように感じる。


『それよりも、魔王のことは急いで対処した方がいいな』


 やはりお前もそう思うか。ルシフェルは思い当たることがあるのか少し考えをまとめているようでしばらく静かになる。


 かなり大変なことになりそうなのかな。




 そしてしばらくしてルシフェルは話し始めた。



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