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悪魔のような勇者の伝説  作者: 夜桜
第1章
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見極めるべきこと

 ありえない力で大蛇を蹴散らした僕は、ステータスを確認することにした。一体どんなステータスをしていればあんなことになるのだろうか。というわけでステータスは……



 桐生義人 17歳 男 Lv:18

 称号:『魔神』『真実の探究者』

 筋力:3650

 体力:8500

 耐性:3200

 敏捷:4350

 魔力:4000

 スキル:『詠唱短縮』・『闇属性魔法適性』・『並列思考』・『空間認識』・『強化』・『言語翻訳』



 いやはや、とんでもないな。てかもう『魔神』になってるし。ルシフェルと僕は同じ存在だって言ってたけど本当みたいだな。さすがに『勇者候補』ではなくなってるな。まあ()()()()の僕はもう死んでいるからな。新しい称号とスキルの確認もしておこうか。まずは称号。


『魔神』 宝珠数:0


『魔神』となった者に与えられる称号。闇属性魔法に高い適性を持つ。魔神の宝珠を集めることでさらなる力を得る。



『真実の探求者』


 世界の真実を追う者に与えられる称号。



 次にスキル。


『詠唱短縮』


 中級以下の魔法の詠唱を省略することができる。


『闇属性魔法適性』


 闇属性上級魔法まで使用可能。闇属性魔法を使う際、威力が1.2倍される。


『並列思考』


 いくつもの内容を同時に考えたり、実行することができる。


『空間認識』


 一定の空間の情報を得ることができる。


『強化』


 魔力を消費して肉体の強化をする。



 スキルは申し分ない。さらに言えば、これは感だけどこの先もスキルは増えていくと思う。『魔神』の称号も進化していくらしいし。


『真実の探求者』の称号を持っているということは、この世界の真実を見極めろということなのだろう。まあもともとそのつもりだ。何が正しく、何が間違いなのかを僕は見極めなくてはならない。そのためにも世界を回らなくては。


 まずはこの気分の悪い洞窟から出ることにしよう。きっと勇者候補の連中もすでに退避しているだろうから鉢合わせることもないだろうし。まあ会ったら殺すだけだが。俺は奴らを許す気は全くないからな。それ相応の報いを受けてもらう。


 そうして僕はスキル『空間認識』を発動し、このダンジョンの構造を把握した。僕がいるのはどうやら最下層みたいだ。あの穴最下層まで続いていたのかよ。幸いにして転移ゲートが存在するようで、これで苦労せずに地上に戻れる。僕はすぐに転移ゲートに入り、地上へ戻った。






 地上に戻った僕は近くの街に向かった。街の名は『ルクト』、僕たちが召喚された『王都』からは馬車で2日といったところだ。特に何があるわけでもない小さな街で、それなりに平和そうに見えたが居心地は全く良くなかった。僕がどうやら魔人族に見えるらしく、あたりの人間は僕を見てこそこそと話しているのだ。それだけこそこそと話していても、僕にはその内容が聞こえてしまう。このステータスになって聴力までも上がっているらしい。僕は必要なものを買うだけ買って、すぐにこの街を出ていくことにした。ちなみに、お金はダンジョンで魔物を狩って手に入れた素材を売ることで手に入れた。


 さあて、これからどうするか。世界を回ると言っても、どこから足を運んだものか。ただ、僕が助けることになっている存在、魔人族と亜人族には一度会ってみたいな。人間族は、ここまで出会った奴らにろくなのがいないからな。といっても、あの最低な勇者候補どもと、神殿の人間、そしてこの街の人間だけだが。勇者候補や神殿の人間は言うまでもないが、この街の人間も、俺を化け物を見るような目で見てくるのだ。


 これだけでも、僕の中での人間族の評価はガタ落ちだった。だって、僕を魔人族と認識しただけでこの反応なんだから。全くもって不愉快だよ。種族差別がここまで進んでいるとはね。これも神官どもの布教活動の成果といったところなのかな。まあ、人間族全体を見渡せたわけではないから、もしかしたらこれは一部の人間だけのことなのかもしれない。でも、一部の人間だけだとしても、この価値観はどうにかしなくてはならないと僕は思う。僕みたいな思いをする人を、もう作りたくないんだ。



 僕は、少し迷ったがまず魔人族の王都に向かうことにした。僕はすでに魔人のような雰囲気になっているから問題なく魔人族の中に入れるだろう。まあ、魔人のことも本で読んだ程度だから本当にそんな雰囲気なのかは微妙な気がするけど、すくなくともこの街の人間に魔人族だと思われる程度には魔人族らしくなっているのだ。まあなんとかなるだろう。


 そうして僕は魔人族の王都に向かい、出発した。


 ……徒歩で。


























 ――そして1週間後


 僕はようやく魔人族の領地へと入ることができた。相当頑張ったと思う。だって『ルクト』からここまで、馬車でも1か月はかかるんだから。まあそこは持ち前のステータスでさっさとここまで来たわけだ。結構大変でしたよ。うん。


 まずは魔人族の街『マルクレン』にやってきた。


 この街に入って感じたことは、皆すごく親しみやすいということだ。僕が想像していた魔人族とはかなり違い、道を通れば店のおばちゃんに声をかけられ、ご飯を食べに食堂のようなところに行けばサービスしてくれたり、本当にいい人達ばかりだと思った。彼らは、そうして色々な人と関わりながら、そして助け合いながら、懸命に生きているのだと思う。しかも、その中には人間族もちらほら混ざっていた。戦争をしているはずなのに人間族に対する扱いが変わったりはしないらしい。ここにいる人間族の人たちも、魔人族の人たちに対してすごくいい感情を持っているように見えた。


 宿に行くと、そこにも感じのいいおばちゃんが受付にいて、たわいもない世間話をしつつ、僕にちょうどいい部屋を勧めてくれた。


 僕は今日1日だけで、何度も大きな感動に出会ったように感じた。


 僕は今までの人生、こんなに人といい関わりをもった経験はなかったから。


 ここの人達は、相手のことを思いやる心を持っている。


 皆が皆そんなことはないとは思うが、本当にいい世界だと思う。


 僕はこれが正しい姿なんだと思った。


 種族とか関係なく、互いに協力しあい、生きていく。


 素晴らしい人達がいるんだな。


 僕はこの世界を絶対に守らなきゃいけない。


 そう確信することができた。



 こう思えたことが今日一番の成果だろう。僕はこうしてこの世界のことを少しずつ知っていく。これでいい。僕は見極める。戦うべき相手が何なのかを。



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