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悪魔のような勇者の伝説  作者: 夜桜
第2章
16/26

平和(?)な旅路

総合評価が100を超えていてすごくうれしいです!

今後も頑張って投稿していきます!


 

 僕たちが王都『ユラシティ』を旅立ってから半日程時間が過ぎた。僕たちは、もうすでに王都から50キロほど南に進んだところにいる。


 僕とユラのステータスなら遅いぐらいのペースだが。


 まあ最初だからゆっくり行こうということなのだ。


 王都からすでにかなり離れ、このあたりにはすでに大きな街はない。あっても小さな村くらいなものだ。


「ところで、その『死霊の森』ってのはどんな場所なのかな?名前からしてホラーの予感がすごいするんだけど」


 ユラは僕に尋ねる。


 僕たちが今向かっているのは、『ユラシティ』から南に約500キロほど進んだ場所にある、『死霊の森』というダンジョンだ。


「んー、たしかに若干ホラーかもね。ルシフェルによると悪霊に取りつかた動物みたいなのが出てくるらしいからね」


「ゾンビとか、そういうのではないんだ?」


「うん。そういったのは出ないみたいだね」


 僕は昨日ルシフェルから聞いた内容をもう一度頭の中で整理しながら、ユラの質問に答えていく。


「その森の中に、『魔神の宝珠』があるんだよね?」


「うん。ただ、『魔神の宝珠』はそのダンジョンを治めている魔物に取り込まれていることが多いらしいんだ。だからその魔物を倒さないと手に入らないんだよね。『魔神の宝珠』を取り込んだ魔物は例外なく強い力を手に入れてるらしいから気を引き締めていかないとな」


 危険な戦いにはなるだろうが、かといって避けることはできない戦いだ。


「そうなんだ。ヨシトがそう言うくらいなんだから本当に危険な戦いになりそうね」


「まあ気をはりすぎても仕方ないし、今は旅を楽しもう」


 僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに頷く。


 ユラがついてきてくれてよかったなと思う。


 危険な旅のはずなのに、それをすごく楽しめている。


 一人ではこうはならなかっただろう。





 だけど、そんな楽しい旅の邪魔をしてくる者がいた。


 僕たちの進行方向に5人ほどのがらの悪い連中がいる。


「おい、お前ら死にたくなかったら金目のもの置いてどっか行きな。そしたら命だけは助けてやるよ」


 その集団の中の一番偉そうにしてるやつがそう言う。


 そう、彼らは俗に言う盗賊というやつだ。


 しかし、こいつらは馬鹿なのか。こんな人通りの少なそうなところで待ち伏せとか、何日たってもそう人来ないだろう。


「お頭!あの女、相当いい女でっせ。連れて帰りましょうよ」


「おお、そうだな。その女も置いていけ。死にたくなかったらな」


「「「「ぎゃははは」」」」


 盗賊たちはそう言って高笑いしている。


 はあ……。面倒だな。


「なあユラ、こいつらどうする?」


「まあ盗賊だから、死ぬ覚悟もできてるだろうし、殺してしまってもいいと思うけど」


「だよな」


 ユラもそう言う。いくら優しいユラでも盗賊や自分を殺そうとしてくる相手には容赦はしない。これはこの世界なら当然のことだ。


 そんなことを言い合っている僕たちに対して盗賊たちは、もはやキレ気味だ。


「あぁ!?何言ってんだこらぁ!」


 他の奴らも凄んでくるが威圧感の欠片もない。


 というわけで、僕は一瞬で盗賊たちの集団の中まで移動すると、まず見せしめとして素手で盗賊のリーダーっぽいやつの頭を胴体から引きちぎってやった。僕の敏捷値なら、奴らの目で追えない速度で近づくことができるし、そのまま筋力に任せて頭を引きちぎるのも簡単な事だった。魔法を使えばもっと楽かもしれないが、こんなやつらに魔法を使うのは魔力が勿体ない。


 その光景を近くで見た盗賊たちは、目の前で起こっていることが理解できず硬直している。ユラは「グロい……」とか言ってる。いくら僕でも若干傷つくんですけど。


 僕はそのまま固まっている盗賊たちをこれまた素手だけで瞬殺した。


「また血で汚れちまったな」


 自分の姿を見て僕はそう言う。


「まったくもうちょっと殺し方も考えてよね。いくらあんな奴らでもさ」


 ユラはそう言いつつ、僕に魔法を使った。


「『聖なる治癒の風シャイニングヒールウインド』」


 すると僕の浴びた返り血は、きれいさっぱり消え去った。


「うわ、すごいな。ユラってこんな魔法も使えたのか」


「これはヨシトがいっつも血まみれで帰ってくるから覚えたのよ」


 まあ確かに僕って血を浴びるような戦い方してるな。これからは少しは気を付けるか。


「べっ、別にヨシトのためなんかじゃないのよ!ただ血まみれでいられると心臓に悪いだけよ!」


 こ、これはリアルツンデレというやつですか……。まさかこんなところでお目にかかれるとは。なんて思ってることがばれたら引かれそうなので考えるのをやめた。


「そういえばこいつらの死体このままにしておいていいのか?」


「それなら問題ないと思うわ。盗賊たちの死体はその辺によく転がってるし」


 それは問題ないと言えるのだろうか……。


「ままここまでひどい殺され方してるのは滅多にないでしょうけど」


 彼女は少し呆れ気味に言う。


 まあそうだろうな。


 というわけで、僕たちは盗賊の死体をそのまま放置して先を目指すことにした。




 それから数時間が経ち、僕たちはとある小さな村に来ている。


 これ以上進むと野宿をすることになるだろうからな。二人での旅でそれはやめておいた方がいいだろうと判断し、この村で休むことにしたのだ。


 この村は『アデラントの村』と呼ばれる村で、村民はそれほど多くない。


 僕たちは村に入ると、さっそく宿屋を探す。


 村の住人に聞いてみると、村の中央のあたりに一軒宿屋があるらしい。外から人がやってくることもそれほど多くないらしく、宿屋はその一軒しかないようだ。


 というわけで僕たちは宿屋に向かう。


 その宿は割と小奇麗な感じがする建物だった。


 中に入り、受付の男性に声をかける。


「すみません、一泊したいんですけど大丈夫ですか?一人部屋を二部屋お願いしたいんですけど」


「大変申し訳ございません。ただいま一人部屋は満室でして……。二人部屋でしたら一部屋空いていますが、どうなさいますか?」


 受付の男性はものすごく丁寧な接客をしてくれた。だけどどうしようか。僕は隣のユラに視線を送る。


「えっと、私はそれでも大丈夫だよ?」


 ユラはすこし頬を染めながらそう言う。


 まあこの場合仕方ないよな。


「それじゃあ、二人部屋でお願いします」


「かしこまりました。一泊で朝食がついて6000セルになります」


 僕はお金を受付の男性に渡す。


「こちらが部屋の鍵になります。部屋はそちらの階段を上がっていただいて右手奥にございます203号室です。お出かけの際には受付で鍵をお預かりします。何かございましたら受付の方までいつでもお申し付けください」


 僕達は鍵を受け取り、部屋へ移動した。


 内装もきれいだし、なかなか期待できそうだな。





 だけど、鍵を開けて部屋に入った時、僕たちは固まった。


 そこには、僕たちの予想外の光景が広がっていたのだ。


 この部屋には……ベッドが一つしかなかったのでである。



 つまりツインではなくダブルだったということですね、はい。


 隣のユラは顔を真っ赤にしている。そんなユラに僕は声をかける。


「えっと……、まあ僕は床で寝るから安心して」


「そんなのダメだよ!」


 しかしそうは言っても一緒に寝るのはさすがにヤバい気が。色々と……。いや何かとは言わないが、まあ色々と……。


「仕方ないし、二人で寝よ?」


 ユラはそう言ってくる。ユラさんそれは男の理性を崩壊させますよ?勘違いしますよ?


 なんて馬鹿な考えは置いておき、とりあえずは話を逸らす。


「とりあえず、夕飯でも食べに行かない?」


「そ、そうだね。そうしよ」


 ユラはまだ顔が赤いけど、僕の提案に頷いた。かなり無理やり話をそらしたけどとりあえずはよしとしよう。



 僕たちは受付に鍵を預け、村に出て適当にその辺を散策する。


 そこで村の名物料理らしい、地球で言う北京ダックのような料理を振舞ってくれる店で夕飯をとることに決める。


 店の中に入ると、店員に席の案内をされた。ここの接客もしっかりしているようだ。


 店の中はなかなか賑わっていて、この村本当に外からの客多くないのか?と疑問に思ってしまう。宿にもかなり客が入ってたみたいだし。


 僕たちが頼んだ、名物料理のコースはかなり満足いく内容だった。どれもなかなかの絶品だ。ユラも美味しそうに食べている。


 こういうのもいいもんだな。


 地球にいたころは、誰かとご飯を食べに行くなんてこともなかった。学校の昼休みですら、僕は一人で屋上でご飯を食べていたし。思えば、僕は今まで人のことを本当の意味で信頼していたことなんてなかったな。まわりも僕のことはただの便利な奴としか見てなかったと思う。それは僕が「いい人間」を装ってた報いのようにも感じられるが。だけどあの頃の僕はそうするしかなかったんだよな。


 僕は、目の前で名物料理を頬張っているユラをもう一度見る。


 彼女は、こんな僕についていきたいと言ってくれた。彼女の立場ではそれはかなり無理な事だっただろう。だけど、それでも彼女はここにいてくれる。今も僕の目の前にいてくれる。


 なんだろうな、この気持ち。今までに味わったことがないこの気持ちは、僕の心を温かくしてくれる。


 僕の中で、着実に大きくなっている彼女の存在。


 まだ少し戸惑っている面もあるけど、彼女を絶対失いたくないって思う。


 僕はこれからも彼女の笑顔を見ていたい。


「どうしたの?手が止まってるよ?」


「ん、何でもないよ。美味しいな」


「うん!すごく美味しいね!」


 ユラに急に声をかけられて、ちょっと焦ったが、悟られないように僕は食事を再開した。




 ご飯を終えた僕たちは、宿の部屋に戻る。


 そこで僕は重要な事を思い出す。ベッドのこと忘れてた……。


「とりあえず、シャワー浴びるか?」


「え、いやえっと……ちょっと心の準備が……」


「変な意味で言ってないから!全く違うから!」


 まったく、ユラはなにを考えているんだか。また顔が真っ赤だし。まあ今のは僕もちょっと悪かったとは思うけど。


 僕たちは交互にシャワーを浴びて寝る準備をする。


 僕はやはり床で寝ようとしたのだが、ユラはそれを許してくれなかった。


 仕方なく僕とユラは同じベッドで寝ることになったが、できるだけ離れて寝るということにした。それでも僕はかなりの緊張するけど。


「それじゃあユラ、おやすみ」


「うん。ヨシト、おやすみなさい」


 そうして僕は目を閉じる。すると、それまでの緊張が嘘だったかのように一気に眠気が襲ってきた。思ったよりも疲れていたのかな。


 そのまま僕は意識を手放した。



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