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悪魔のような勇者の伝説  作者: 夜桜
第2章
12/26

戦場へ

第2章突入です。

 

 勇者候補、富田慶介による『魔王』ユラ襲撃事件が起こってからはや1ヶ月。ユラも力を取り戻し、『魔王城』にも平穏な日々が戻っていた。



 コンコンッ


「どうぞ」


 僕はノックの音に答える。


「失礼いたします。ヨシト様、ユラ様がお呼びですので、謁見の間までご足労お願いしてもよろしいでしょうか」


「ああ、今行くよ。シルフィアさんもいつも大変だね」


 僕は苦笑いしながら、シルフィアさんに答える。



 今僕は、『魔王城』で生活している。


 あの事件の後、僕がユラを救ったことからか、様々な事で城に呼ばれるようになった。


 あまりにも城に呼ばれることが多いので、ユラが『魔王城』に住んだ方が何かと都合がいいだろうと言ってくれて、3週間ほど前から『魔王城』の部屋を一部屋借りて住んでいるのだ。


 僕は今日もいつもと同じようにユラに呼ばれて謁見の間に向かう。


 今日はなんだろうな。




 謁見の間に入ると、王座に座るユラとすぐに目が合う。


 すると彼女はいつものように僕に笑顔を向けてくれる。


 彼女の笑顔はいつも僕を優しい気持ちにしてくれる。


 今では彼女の存在が僕の中で大きなものとなってしまっている。


 そのことが僕は怖いとも思ってしまう。


 僕は、またなにかを失うのが怖いのかもしれない。


 もしもユラが僕のことを裏切ったら。もしもユラが僕のことを見捨てたら。


 そんなことを心のどこかで思ってしまう。


 僕はそんな自分が許せない。


 そんなことを思ってしまう自分のことが、僕は……。



「ヨシト、大丈夫?」


 そんな僕の様子を見て、ユラは心配そうな顔をして声をかけてくれる。


「ああ、すまない。大丈夫だよ。それで今日は何だったかな?」


「そう。ならいいんだけど。少し手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」


 ユラはまだ少し心配そうにしているが、いつものように頼みごとをしてくる。ユラにあまり心配をかけないようにしないとな……。


「内容によるけど、できる限りのことはするよ」


「ありがとう!今回はいつもとはちょっと違って、少し危険かもしれないんだけど……」


 そう言ってユラは話し出した。


 今回は、人間族が攻撃を仕掛けてきて、それを『魔王』直々に止めに行くことになったらしい。僕はそれに同行し、『魔王』であるユラの護衛をしてほしいのだそうだ。まあこの世界でユラの護衛をできるのなんて僕くらいしかいないだろうからな。


 だが、人間族との戦争か。


 本格的に人間族と敵対することになりそうだな。


 もう覚悟はできているが。



 この一か月間、色々なことを調べ、僕の中で神官たち率いる人間族を倒すしかこの世界をどうにかする方法がないという結論を導き出している。人間族と魔人族、どちらも救うなんてのは夢物語だろう。現実を見なくてはならない。


 正確には、倒すのは人間族を率いているトップ連中、神官たちだけでいいのだが、そう上手くもいかないだろう。人間族たちは、神官たちを守ろうと必死になっているからな。


 それに、ここまでくると勇者候補たちも黙ってはいないだろう。


 恐らく本命である佐藤香織など一部の優れたものはまだ出てこないだろうが、この前の富田慶介のように使い捨ての駒として送られてくる者は少なくないはずだ。彼らは一般兵に比べてかなりの力を持っているからな。


 そんなわけで、総合してみると僕はユラについていくべきだろうと思う。


 万が一、ユラの身に何かあれば魔人族は統率が取れなくなり、すぐに侵略されてしまうだろうからな。


 念のためルシフェルにも確認するか。


『ルシフェル、これは行っても問題ないというか、行った方がいいよね?』


『ああ、問題ない。我も少し気になることがあるしな。しっかり魔王の娘を守ってやれ』


 ちなみに、この会話は周りには聞こえていません。


 そんなわけで、僕はユラの護衛を引き受けることに決めた。


「わかった。ユラの護衛、引き受けるよ」


「ありがとう!本当はヨシトを戦場には出したくないんだけど、今回はそうも言ってられなそうだから」


 今回の戦場は、西の方にある魔人族と人間族の領地の境界にあたる、『ソルマニク平野』が舞台となっている。そして人間族側の指揮をとるのが、王都の騎士団、副団長であるクリス・ルナハルド。そして勇者候補と思われる人物も確認されているらしい。


 この状況では、魔人族側もかなり苦戦するどころか敗北しかねないだろうということで、ユラや僕が出ていくしかない状況になったというわけだ。


「出発は急なんだけど明日明朝。大丈夫かな」


「問題ない。それじゃすぐ準備に取り掛かるね」


「うん。よろしくね」


 僕は謁見の間を出て、街で必要物資をそろえてすぐに自室に戻り今日はもう休むことにした。明日から忙しくなりそうだ。






 翌日。


 僕とユラは馬車に揺られて『ソルマニク平野』に向かっている。


 目立たないように馬車は一台だけにしたらしい。


 御者はシルフィアさんだ。


 シルフィアさんは本当に何でもこなすな。


 というわけでいつもの3人で戦場まで行く。



 馬車の中で今回の戦闘についての相談をすることにした。作戦会議というやつだ。


「今回の戦闘の配置について教えてもらってもいいかな?」


「え、んとね……。私が一番前で魔法を思いっきりぶちかまして、そのあと騎馬の人たちに頑張ってもらう?感じかな」


 なんとも大雑把な。これでよく今まで何とかなっていたな。


 まあユラの魔法がとんでもないせいだろう。


「はあ……戦略はこのあと練るとして、ユラのステータスを確認させてもらってもいいかな?」


 ついため息をついてしまう。


「うん。これが私のステータスよ。ヨシトほどじゃないからあんまり期待しないでほしいんだけど」


 そう言って彼女はステータスプレートを僕に渡した。



 ユラ・ベッケンクルス 16歳 女 Lv:58

 称号:『魔王』

 筋力:2800

 体力:7000

 耐性:1800

 敏捷:2350

 魔力:4800

 スキル:『詠唱短縮』・『火属性魔法適性』・『風属性魔法適性』・『闇属性魔法適性』・『強化』・『破壊の光』



 僕ほどじゃないと言ったが、これはかなりヤバい能力値だぞ。


 今の勇者候補なんか目じゃないな。これは能力を奪われたりもするわ。これじゃ向こうは戦いようがないからな。


 しかもスキル『破壊の光』がうわさに聞く指一本で地形を変化させたという力の正体だろう。指先から超高密度のレーザーのようなものを照射する能力のようだ。


 これだけのステータスがあればしばらくは、人間族に負けることはないと思う。


 問題はやはり勇者候補たちと、神級魔法を使ってくるかどうかだろう。


 念のために僕のステータスも確認しておくか。



 桐生義人 17歳 男 Lv:28

 称号:『魔神』『真実の探究者』『冷酷な殺戮者』

 筋力:4200

 体力:11000

 耐性:3800

 敏捷:5100

 魔力:4800

 スキル:『詠唱破棄』・『詠唱短縮・改』・『闇属性魔法適性』・『並列思考』・『空間認識』・『強化』・『真実の眼』・『称号・スキル獲得通知』・『言語翻訳』



 富田を殺したときにステータスがかなり上昇し、称号やスキルも増えていた。変化した称号とスキルを見ていこう。



 称号


『冷酷な殺戮者』


 冷酷、かつ残忍に人を殺すことで発現したスキル。すべての攻撃の殺傷能力が上がる。



 スキル


『詠唱破棄』


 中級以下の魔法の詠唱を完全に破棄することができる。



『詠唱短縮・改』


 上級以下の魔法の詠唱を省略することができる。



『真実の眼』


 話している相手が、真実を言っているか嘘を言っているかを判断することができる。ただし、一日に3分しか使うことができない。



『称号・スキル獲得通知』


 称号やスキルを獲得した時に、その情報が頭に流れる。ただし、戦闘中などは通知が流れないように設定されている。



 というような感じだ。自分で言うのもなんだがチートだな。


 隣に来てちゃっかり覗いているユラも、規格外だな、とか言ってる。


 だけど、これから先勇者候補たちがどれだけ強くなるかわからないし、油断はできないだろう。


 しばらくしたら『魔神の宝珠』も探しに行かなきゃな。




 その後は、戦略面の相談をしながら、『ソルマニク平野』に向けて一直線で進んでいった。



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