一日目
今日、砂漠の真ん中の基地に降り立った。
今日も世界のどこかで戦争は果てなく続く。
我々、いや、生物がこの世に生を授けて貰ってからずっと…。
生物はそういうものなのもしれない。
戦争はいろいろな要素が組み合わさって出来ている。
例えば領土、イデオロギー、宗教、民族、資源、反政府、最近はテロリズムも出てきた。そしてこれらが重なり合う、またはそれ一本で争いは起こる。
俺は傭兵。傭兵がわからないなら一応説明する。簡潔に言えば俺の場合は金稼ぎの戦闘機乗りだ。金さえ払えば三日以内にそこに向かうよ。
そうそう、俺がどうして傭兵なんかしてるかって。
元々は俺の親父がやってたんだが、二年前に引退してね。今はJAS39Cグリペンって言う戦闘機を自家用機として購入して悠々自適に釣りだのエアーショウだのの充実した隠居生活してる。
そんな俺は親父が現役時代に愛用していたJ35ドラケンを譲り受けてもらい軍に入ったわけ。
あとうちの国の軍は傭兵登録さえすれば世界各地どこにでも行けるってことになってるんだ。
親父からの話だが、同じ出身の傭兵同士やり合ったこともあったらしい。
あと傭兵になりたかった本当の理由。
なぁ、戦争ってなんだ?平和ってなんだ?
俺はそれが知りたくてなったんだ。
さて余談はこの辺までにして、今回雇ってくれる国を軽く紹介する。
この国とその隣国は長い間骨肉の争いが絶えず続く地域なんだ。
元々は世界中から差別に迫害を受けてきたとある宗教民族、取りあえずA教と言おうか。そのA教がある大国、取りあえずB国とでも言おうか。その国の支援を受けて彼らの故郷であり聖地である土地に戻ることに成功、国を建設した。然し、そこには既に別の宗教民族、取りあえずC教と言おうか。そのC教の信者が暮らしていた。実はこの地は、そのC教の聖地でもあった。B国は分割案でA教とC教の土地を半々に分割し、聖地は国際保護区としてどこの領地にも属さないということにした。
初めは何ともなかった。だが一年後、聖地から突然B国が撤退するんだ。
そしてその間を埋めるべく、過去五回、聖地をめぐる争いが起きた訳だ。A教は幾度となくB国(実はC教が大嫌いだった。それとA教徒の一部はB国の懐を握っており、発言力もある)やその他の大国の支援で勝利を収めているんだが、C教だってそうはいかない。お互い気に入らないことが一つでもあれば戦争になるんだ。
更にはな、近年の第三国の調査で付近には大量の地下資源が眠っていることがわかたっんだ。
全く簡単に戦争が勃発する訳だ。
さて、もうすぐ雇ってくれる国の基地に着く。そろそろ着陸準備にかかるか。おや、激戦の痕だろうか。地上に墜ちた機体の残骸、車両の残骸、わかりにくいが兵士の死体等も見えた。古いものから新しいものまで様々ある。成る程、争いに争いを重ねた痕らしい。しかし、数が多い…。
そして俺は荒涼とした白い砂漠の中にある基地に降り立った。基地には大小問わず沢山の機体が翼を休めていた。
「待ってました。私が当トフレン基地司令テオダンタ・フウヘンツです。階級は少将です」
話し方、見た目共に素朴で温厚な方だ。
「谷川武です。コールサインは『Lantern』です。宜しくお願いします」
「君の事はよく存じているよ。ドラケンで戦場を縦横無尽駆け回っているそうじゃないか」
と彼は相棒を見て
「しかしドラケンは年式の古い機体だ。良かったらそこにいるF-15Cイーグルを君にあげよう」
そりゃ突然言われたので焦った。
「それは結構です。機体は最新の機材を入れたりやアムラームを発射できるように改造してますし…。それにこれは親父の機体ですので…」
司令は相棒(親父の相棒でもあったが)をさすりながら言った。
「そうだったな。お父さんの機体だもんな…。この機体のことも君の父の事も存じているよ。昔、私がまだ一人の戦闘機パイロットだった時に一緒に戦ったんだ。お父さんによく似てる。だから今回君を呼んだ」
どうやら彼は父の知人だった。俺はこの後もう少し司令と話した。内容は父に関して、かな。
司令と話し終えた後、用意された部屋に入った。砂漠の中の基地、外の温度は四十度あり暑くてたまらない。司令にしろ周りの兵士にしろよく平気でいられるなと思った。ただ、部屋の中はクーラーが効いているから涼しくてとても快適だった。
部屋に入って数分後。戦闘機、いやトーネード攻撃機六機にサンダーボルトⅡ攻撃機六機のエンジン音が基地に響きわたった。武装を満載し、これから任務に向かうらしい。このうち何機が帰ってくるか…、そんな事をつい考えていた。そして攻撃機達は飛び立っていった。
俺は暇だから自分の相棒を見に行った。静かにハンガーの中でそのダブルデルタの翼を休めて任務を待っていた。機体には意思なんて無いように思えるだろ?有るんだよ、此れが。今は多分馴れない土地に来てストレスを感じているだろう。
「大丈夫さ、直ぐに馴れる。暇さえあれば一緒に日焼けしようか」
こいつ、ニヤリと笑ったな。本当に相変わらず可愛い奴だ。
そんなことを言った後、ハンガーから部屋に戻った。
さて、ここにいる兵士の奴等はみんな何を思って戦っているのか、そんなことを考えてみようと思う。そんな時、部屋のアラームが鳴り響いた。
「敵爆撃機部隊の接近を確認。敵は二十以上!直ちに迎撃せよ!」
急ぎ足でハンガーに向かった。
「やれ、早速任務ですか」
俺は相棒のドラケンに飛び乗った。機体をハンガーから出したら直ぐに飛び立てと命令がでた。
「この基地は作戦上重要な基地だ。基地に被害を出させるな!」
基地管制官が声を張り上げた。
「了解」
俺はこう言って相棒のドラケン、友軍機と共に空に向かった。
飛び立って直ぐに早期警戒機(機体に全方向を監視できるレーダーを装備し空中から管制等を行う航空機)から情報が齎された。
「此方早期警戒機ガブリエル。敵爆撃機部隊は反応から十一機のTu-95ベアと十二機のM-4バイソンの編隊と思われる。護衛機には注意せよ」
因みにガブリエルの機種はE-2Cホークアイだそうだ。
数分後、敵の護衛機が此方でも目視出来るようになった。一人のF―5EタイガーⅡのパイロットが
「来たぞ…」
と静かに呟いた。
一機のSu-17フィッターCが落下タンクを投棄してドッグファイトを挑みに接近。立て続けに他の敵機も接近してきた。
「奴等がやってきたぞ!」
「しまった、拙い!フィッシュベッドの餌食になる!」
「おのれ!奴等は我々の聖地を闇に葬る為なら手段は選ばないつもりか?」
ん、今の通信…。でも質問なんかしてる場合ではない。後ろにフィッターCとMiG-23フロッガーが付いていて、フロッガーは赤外線追尾式ミサイルを放ったのだ。
此れをデコイを放ってこれを回避。
続くフィッターCが鉛玉攻撃。
これもギリギリだったが回避。
今度は俺が二機の背後に付く為にハイGターンの右旋回。フィッターCの背後に付く。
「畜生!付かれた!」
遅い。旋回様に此方がに鉛玉をプレゼント。フィッターCが翼をたたみ、高速飛行で逃げようとしたところだろう。
右水平安定板、エンジンに命中。撃墜。
フロッガーは此方の友軍のF-4EファントムⅡの目の前をすぎたところを鉛玉の餌食になった。
その時だ。右横をベアが通り過ぎて行った。奴ほど大きな機体だと鉛玉ではやられにくい。
相棒の体勢を立て直し、ベアの背後につく。
「敵機接近!応戦します!」
奴の後部機銃が唸り、鉛玉を飛ばす。それをかわし、ベアの左翼付け根目掛けてロケット弾をお見舞いした。左翼付け根に命中。爆発と共に左翼と胴体が離れ離れになって墜ちていった。
と此処で相手のパイロットが
「おい!あの真っ赤のドラケンって…、『赤龍』じゃないか?」
「あ?どれ…
本当だ!赤龍だ!」
「狼狽えるなよ!所詮は金目当ての野郎だ。信念の無い傭兵に我々の聖地奪還の意味をわからせてやれ!!」
どうやら相手に俺が誰だかわかっていたようだ。でも、赤龍?相棒が真っ赤だからこうなったのか…?
ん、拙いな。味方も爆撃機を潰してはいるが護衛にやられてる奴もいる。よし。
「此方Lantern!爆撃機を墜としにかかる!戦闘機を片付けてくれ!」
「了解、任せたぞLantern!野郎共、護衛を引き付けるぞ!」
「ラジャー!」
俺は爆撃機への攻撃を再開した。ロケット弾で一機、また一機と砂漠の鉄屑にした。
「此方ロック1!赤龍の攻撃を受けている!護衛機は一体何をしてるんだ!?部隊が全滅しちまうぞ!」
敵爆撃機編隊長だろう。必死になって味方に応援を要請している。だが
「Lantern。俺にも一機ぐらいは撃墜させてくれ」
途中味方も護衛機を撃墜しながら爆撃機も撃墜してくれた。
「助かる」
先程まで苦戦気味の味方はどうやら持ち直し始めたようだったようだ。
そんなこんなで爆撃機は残り五機となった。
「此方ロック1!奴を近付けるな!うちらがやられたら話にならないんだぞ!この役立たず!!」
爆撃機編隊長は護衛にご立腹といった様子だ。
「駄目元でも良い!機銃を奴に向けろ!護衛は無いと思え!!」
護衛が頼り無ければ自分等でやるしかない、そういったとこだろう。連中は後部機銃を振り回し激しく抵抗してくる。
相棒の体勢を立て直す為に俺は操縦桿を引きスロットル全開、アフターバーナー(ジェットエンジンの排気に対してもう一度燃料を吹きつけて燃焼させ、高推力を得る装置)を作動させ一気に上昇。その後、爆撃機と適度に距離を置き、相棒を水平にする。そのまま爆撃機編隊の前方に出て、爆撃機の方に機首を向ける。そして爆撃機目掛けてロケット弾とミサイルを一機に一発ずつ撃ち込んだ。
「来たぞ振り切れ!!」
爆撃機二機がミサイルの餌食になり空に四散したが三機はロケット弾を振り切った。
もう一度攻撃をしようと思った時だった。
「此方ロック1!こんな機数では話にならん!作戦失敗、帰投する!」
「此方護衛隊。了解、離脱する」
ベア一機、バイソン二機は機体を来た方向へと向けて撤収。護衛機達も爆撃機の後を追った。
「Lanternへ。何とか相手は引き揚げましたね」
と若いパイロットが安堵の溜め息混じりに言った。
此方側にも被害がある。ざっと見て、機体に傷だらけの奴もいる。
基地に帰投してからのこと。俺はパイロットに質問をした。
「聖地を闇に葬ると言ってたが、一体どういう意味だ?」
と。この質問に一人のパイロットがこう答えた。
「我々の聖地は地下にある。というよりは土に埋もれているんだ。その上にあのC教の連中は俺達の先祖がいない間に勝手に聖地と言ってる石を乗せた。というか、我々の聖地に土を盛り、今も踏み潰しているんだ」
更に別のパイロットは
「埋もれた聖地を掘り返そうとする度に戦争だ。たまったものじゃないよ」
とこりごりした様子で言った。
その時だ。先程飛び立ったサンダーボルトⅡ二機とトーネードが三機が穴だらけで帰ってきた。その内のトーネード一機、サンダーボルトⅡ一機が火をあげていた。
「火事だ火事だ!消火剤を早く撒くんだ!」
「怪我人もいあがる、手を貸せ!!」
トーネードのパイロット曰わく、敵の秘密基地攻撃を成功させたものの、砂漠に隠された対空砲と突然のSAM(地対空ミサイル)の攻撃に遭い、地獄を見た。と彼は言った。
その夜。今までに見たことがないくらい綺麗な月が基地から見えた。
「いつものことだ」
と笑ってここの兵士は言う。
だが此処まで綺麗な月は故郷でも見れない。
戦場に不釣り合いな程綺麗だ。
この小説を書き終えて早数年。知識の乏しさが目立つ。