2.そして言い訳は続くよ(年寄りの話は長い) その2
唱えた途端、首にかかっていた環の一つがパチッと切れ、玉がパッと散ったかと思ったら、わたしの周囲を二つの輪を描くように、分かれた玉が交差するようにクルクルと取り巻くと、体がフワッと浮かび上がった。
「どうやら成功したようじゃの。なじむにつれて、軽い技ならば唱えずとも展開して、終われば勝手に首に戻るように組み込んだから楽ちんじゃろ。それから玉数が多ければ多いほど、大技の行使や同時に使える技も増えるが、体にかかる負担も相当なものになろうて。気を付けるんじゃよ。では行くぞ」
「はい、はい」
最初はコントロールが上手くいかず、フラフラしたり、木に激突して枝葉を折ったりしたけれど(わたしには傷一つなし。巨木さん、ごめん)、採取回収し終わるころには危なげなく使うことができるようになった。
こうして砂時計もどきの前に戻ると、ガーランは容器を反転させ、採取した樹液を容器ごとグイッと下の容器に押し付けた。容器は割れることもなく内部に樹液を取り込み、満たしていく。
わたしにも手伝わせて三個の準備が整うと、ガーランはシャラと軽く飾りを鳴らした。
するとフワンフワンと力なく飛んでくる物体が三つ、指輪二つに腕輪一つだ。
「紹介は後じゃ。ほれ、リンジュ、同朋を手に“リンク”と唱えよ」
飛んできたアイテムたちを両手に持ち、言われるまま、
「リンク」
と言うがはやいか、それぞれに繋がっている玉が環から外れ、わたしの全身を螺旋を描きながら回る。それと同時に鈍く光っていたのが徐々に輝きを増していく。手を見ると、アイテムたちは逆にキラキラしさが減っていき、ついには鈍い金属特有の輝きしかなくなった。玉も発光を弱め、首の環に戻っていく。
「終わったの」
「なんだか、こう、命が消えたみたいになってるけど、平気なの、これ?」
「心配せずともよい。リンジュに力を移し替えて、今は己が核を保つだけで一杯なだけじゃ」
「えっ、今やったのが、そうなの? でもわたし何にも感じなかったけど。だって知識の詰め込みのときは気分悪くなったじゃない。魔力も入ったら変化を感じて体が反応するでしょ」
「やれやれ…。リンジュよ、さきほど魔力を使って飛行したとき不快になったか? われらとリンクした時点でおぬしの体内に魔力が入っておる。何らかの反応を起こすならば、そこで出ておるよ。――さて、容器を元に戻すからその中に同朋たちを入れてくれんか」
「どうやって?」
容器に出し入れ口などない。
「樹液を入れたときのように押し付けるようにすれば、取り込まれるようにできておる」
ガーランはカシャンと正位置に戻しながら答えた。
わたしは上の容器にアイテムを一つずつそっと押し付けた。すると、アイテムはスウッと中に取り込まれ、中心部まで浮かび上がるとそこに止まった。
下の容器から樹液がゆっくり上部に移動し内部の魔力と混じり合う。
やがて中が白濁し始め、アイテムは見えなくなった。
「とりあえず、これで完了じゃ。ご苦労さん。下の樹液が空になって、濁りが消えたら中の同朋から知らせが入る。それまで休憩するかの。リンジュにはいろいろここの説明もせんとな。ほれ、こっちじゃ」
ここに来てからの目まぐるしさから解放されることと、長期戦の予感に、深くため息をつくと、重い足取りでガーランについて行った。
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