「に……、逃げろ……グレン……。王妃を……リ、リーネ様のことを……たの…………」
リーネ、それは人間界にとって無くてはならない防衛力だった。
子孫のマールにも連なる特殊能力について、リーネは他者の気配を感知することができ、魔族が魔法で人に擬態していても、見破ることができた。
リーネが存在することで王家や議会が魔界の勢力に乗っ取られることを防ぐことができた訳だが、そんなリーネが失踪したり、誘拐されたらどうなるだろう。ガルディアは魔界に対しての脆弱が極まり、存亡の危機となるだろう。
リーネのその力については知ってる者は殆んどいない。サイラスとグレン、騎士長、王様、リーネに関わる一部の従者を除くと誰も知らない。もしその情報が魔界に伝わるようなことがあればリーネに身に大きな危険が及ぶからである。
カエルとなったグレンが長年リーネの護衛を務めていたのは、そういった理由からだが、しかしリーネは誘拐されてしまう。幸い、殺されることはなかったとはいえ、魔族はリーネの力を利用しようとした。
魔族同士の抗争、同族にいるスパイを見破る為にリーネの力を必要としていたヤクラについてだが、そのヤクラは死んではいなかった、戦況が不利だと理解したヤクラは死亡して消滅する映像に擬態し、風景に染まる擬態をして逃げ延び、現代にてヤクラ13世の名を冠して現れた。ヤクラはラヴォスから無意識にエネルギーを吸って生きている特殊な生物であり、寿命が1000年を越えていた。中世から400年かけて経験値を溜め込んだヤクラは当時よりも13倍も強くなっていたのだが、問題はそのヤクラも死を偽装して逃亡したことだけでなく、ヤクラがクロノ達の冒険を陰ながらサポートしていた事だった。
元々ヤクラは人に擬態して千年祭にてルッカのブースにいた。クロノ達が過去に介入してヤクラに出会ってたことで、ヤクラにクロノ達の記憶が残り、ヤクラの歴史が大きく変化した。マノリア修道院での敗北に導いたクロノ達を重要人物と位置付けたヤクラはコウモリを張り付かせていた。
トルースの山で青い穴に消えたクロノ達の不可解な状況をヤクラに伝えたコウモリ。それにより現代のヤクラは偶然にも千年祭でルッカのブースにいたことでゲートが過去と現在を繋ぐ可能性に気付いた。過去に出会ったクロノ達。もしそれ事実であるのならば、ヤクラは試しに大臣に成り済まして、クロノ達を騙してみることした。
それがヤクラのルートAな展開であるが、同じタイミングにてヤクラのルートBも成立する。
現代Bヤクラはマールがゲートに呑み込まれた時点で、過去と現在の結びつきを推理し、コウモリに擬態し、クロノに張り付き共に過去の時代へと移動した。
過去にクロノがどのように介入したのか興味があったヤクラ。クロノが王宮の寝室に自由に入り込もうとしてる非常識者だと気付きいたとき、クロノが従者や兵士に叱かられねない状況にハラハラしていたヤクラは、クロノが視認されないように風景に溶け込む擬態化魔法をクロノにかけたりした。
ヤクラにとってクロノは大切な存在であった。ヤクラにとってマノリア修道院で大敗北をしたことは教訓であり、人間と敵対せず、大人しく生きることで戦争に参加しなかったヤクラは命拾いした。
魔族が敗北する歴史になったものの、平和な世界が作られたことについて、長生きだっからこそ、平和な世界の有り難みを理解できたヤクラはクロノに敗北して良かったと思っていた。だがヤクラは後悔していた。クロノとの戦いではクロノに手加減をせずハードモードで痛め付けたからだ。その埋め合わせにと、今回、クロノがヤクラと戦う際には、ヤクラもこっそり加勢し、ヤクラを羽交い締めして動けなくさせた。
戦闘中のヤクラに【何もしない(何もできない)】をさせることでクロノに協力したヤクラBだったが、それだけでは恩を返せるとは思ってなかったヤクラは、テレパシーの魔法を使い、ボス戦で、ことごくアドバイスした。
例えばドラゴン戦車では【頭を倒さないと他が回復する】と伝えてしたり、ヘケラン戦では【反撃たいせい解除】と伝えてみたり
Bルートのヤクラはクロノに支援したりと優しい行動するが、Aルートのヤクラも決してクロノ達に優しくない訳ではない。大臣に成り済ましててテロリスト容疑で逮捕するものの、あれは遊びというか、お茶目な悪戯のつもりだった。
その証拠に武器を持たせて投獄させたし、看守達には手加減するように命令を出していていた。(逃げようとするなら簡単に逃げられる等)あくまでどっきり演出のつもりであり、森に追い詰めたら、そこでドッキリ暴露して遊びを終わらそうと思っていた。まさか森にゲートがあるものとは思わなかった。




